相談援助の基盤と専門職 後期第5回 講義レジュメ<後半>エコシステム、ストレングス

相談援助の基盤と専門職 後期第5回 
講義レジュメ<後半>

社会福祉士養成学科1クラスにて、10月28日(水)、講義

相談援助の基盤と専門職 後期第5回 講義レジュメ<後半>
9章 総合的かつ包括的な相談援助を支える理論 テキストP144~

2節 ジェネラリスト・ソーシャルワークの特質 テキストP146~
*ジェネラル・ソーシャルワークとは、家庭、児童、障害者などの各分野に共通な概念、知識、方法、社会資源など、基本となる原理、過程、技術を示す総合的ソーシャルワークを指す。

1 点と面の融合
・ソーシャルワークの三大援助技術・方法の融合と、統合した活用が必要である。

*統合化に影響を与えた理論的動向として、ソーシャルワークにシステム理論、生態学等が導入されたことがあげられる。
 その影響の一つは、ケースワーク、グループワーク、コミュニティワークがそれぞれ対象とする個人、グループ、コミュニティは本来分断されたものでなく、最小のシステムである個人を内包したシステムとしてとらえられたことである。
 そしてもう一つの影響は、ソーシャルワークにおいて重視されてきた「状況の中の人」を「システム」としてとらえ、そこへの介入という視点が明確化されたことであった。


2 システム思考とエコシステム テキストP148~
*エコシステム的視座
◎生活問題とは個人や家族と,彼らを取り巻く環境間とその接触面(インターフェイス)における不適切な相互作用の結果として発生するとみなす。また、人間のプラスの側面に目を向け,適応(コーピング)能力を高め,環境の応答性(レスポンス)を増してストレスを軽減し,新しい適応のバランスを得ることをめざして援助を行うという方向性である。人間:環境:時間:空間を全体的に把握することが必要とされる。

*機関=「場所」とは、ソーシャルワーカーの所属組織であり、社会福祉機関、福祉施設、医療機関などである。
 ソーシャルワーカーが所属機関の期待・制約・要求を受け入れつつ,利用者の権利などを守る立場をいかに保つかは大きな課題である。


3 本人主体
*エンパワメント

 エンパワメントとは、主体的な生活を諦めた無力状態(パワーレス)に陥った人々が、再び、本来持っている力・パワーを取り戻し、自分たちの問題を自分たちで解決していけるよう、その能力を強めていこうとする援助である。

■エンパワーメント empowerment
・ソーシャルワークにおいて一致した定義はいまだないが,おおむね,個人,家族,集団あるいはコミュニティが,その個人的,対人関係的,社会経済的および政治的な影響力(パワー)を強め,それによってその取り巻く環境の改善を実現させていくこと,あるいはそれらが実現された状態を意味している。
 パワーの脆弱化,無力化をディスエンパワーメント(disempowerment),パワーの欠如状態をパワーレスネス(powerlessness)とそれぞれよんでいる。この概念に基づくソーシャルワーク実践は,すべての人間はどのような悪い状況にあってもそれを改善していける能力とパワーを有しているという基本的人間観にたち,クライエントとワーカーとのパートナーシップを通して,クライエント自身がエンパワーメントしていくことが目標になる。
 加えて,以下のような特徴があることが指摘されている。
 ①制度や社会構造との関係において人はパワーが欠如した状態におかれ,その結果,社会資源をコントロールしたり,獲得することが困難になる,
 ②クライエント= ワーカー関係におけるパワーの不平等性はクライエントのエンパワーメントを阻害する恐れがあるために,両者がパワーを共有しあえる協働関係の樹立が望まれる,
 ③クライエントとそれを取り巻く環境の強さ(strength)が強調される,
 ④ワーカーの介入は,ミクロからマクロにまたがるジェネリックなアプローチが基本とされる,
 ⑤パワーの欠如状態を発生せしめた原因は主にマクロ的なものであるという認識から,特に資源配置上の公平性確保といった政治的パワー回復が重視される,
 ⑥問題解決の前提として,クライエントが変化に向けての責任をもつべきであるという視点にたつ。


4 ストレングス・パースペクティブ(視点) strengths perspective
・アメリカのソーシャルワーク実践理論において,1980年代以降提唱されている視点。それまで支配的であった病理・欠陥視点を批判する立場をとる。ストレングスとは,人が上手だと思うもの,生得的な才能,獲得した能力,スキルなど,潜在的能力のようなものを意味する。ストレングス視点とは,援助者がクライエントの病理・欠陥に焦点を当てるのではなく,上手さ,豊かさ,強さ,たくましさ,資源などのストレングスに焦点を当てることを強調する視点であり,援助観である。従来のソーシャルワークの実践は利用者の「弱さ」に焦点を当てていたことへの批判から、人や家族、グループ、コミュニティが潜在的にもつ力や能力に視点を置いたソーシャルワーク援助である。

■用語解説:ソーシャルワーク統合化理論  
 ソーシャルワークが専門職として社会的な認知を得る過程で,精神分析との同一化や心理主義といった個人への焦点化が強調されたり,逆に,環境の重要性が強調され社会的改革(social reform)へのシフトがみられた時期もあった。また,短期処遇が注目され,新たなソーシャルワーク実践理論が加わった。ある意味で,ソーシャルワークの理論は社会的要請に応えつつ進化し,多様化してきたといえる。こうした発展あるいは複雑化のプロセスにおいて,人と環境,そしてその交互作用を包括的に捉えることが,本来のソーシャルワークであることが再認識され始め,統合化の動きがでてきたといえる。
 バートレット(Bartlett, H.)は,ソーシャルワークの専門職性(プロフェッション)を全体として捉え,ソーシャルワーク実践に共通する拠り所を求めて理論的な整理を行い,ソーシャルワーク実践の共通基盤(common base)としてまとめている。ピンカス(Pincus, A.)とミナハン(Minahan, A.)も,実践の構成要素をクライエント・システム,ワーカー・システム,ターゲット・システム,アクション・システムとして整理し,クライエントの生活と問題を包括的に捉え,社会資源の活用を通して,計画的に働きかける手順を示しているが,それは従来のケースワークの枠を越えた統合的な理論であった。その後もソーシャルワーク理論の統合化は,一般システム理論やエコロジーの概念を枠組としながら発展している。ジャーメインとギッターマン(Gitterman, A.)のエコロジカル・パースペクティブやライフ・モデルは,ソーシャルワークの統合理論として広く受け入れられるようになっている。
 今日ではこうしたエコシステムの理論がソーシャルワーク統合化理論として不動の位置を占めているが,人と環境を一体とみなし,そのダイナミックな関係を包括的な視点で捉え,計画的に援助をしようとする姿勢はソーシャルワークの伝統的な視点をより明確,かつ具体化したものであるともいえ,ソーシャルワークの基本には一貫したものがあるといえよう。

■ジェネラル・ソーシャルワーク教育
・アメリカなどではソーシャルワーカーの専門的教育は大学院レベルで行うと考えられている場合が多く,ジェネラリストの教育は,そうした大学院レベルの教育訓練の前段階として行う,全般的,入門的なものとして捉えられることもある。しかし,ジェネラリスト・ソーシャルワーカーには高度なマネジメント機能などが求められ,アメリカでは,上級(advanced)ジェネラリスト教育の必要性が唱えられるようになっている。
 miseki.exblog.jp

*システム論に基づくソーシャルワーク
* A.ピンカスとA.ミナハンは、1973年、ソーシャルワークを一つのシステムと捉え、システム理論に基づくソーシャルワーク実践では,ソーシャルワーカーは以下の四つのサブシステムの相互作用に関心をもたねばならないとしている。
①クライエント・システム
・個人,家族,グループ,組織など,ソーシャルワーカーが援助の対象とするシステムである。
 クライエント・システムとは、社会福祉サービスを既に利用しているか、サービスを必要としている、援助活動を通して問題解決に取り組もうとしている個人や家族などから構成されている小集団を指す。
②ワーカー・システム=チェンジ・エージェント・システム(ワーカーとその所属機関)
 ワーカー・システムとは、援助活動を担当するソーシャルワーカーとそのワーカーが所属する機関や施設とそれを構成している職員全体を指す。
③ターゲット・システム(目標達成のために変革しなければならない人や組織)
 ターゲット・システムとは、クライエントとワーカーが問題解決のために変革あるいは影響を与えていく標的とした人々や組織体を指す。
 標的は、クライエントが選択される場合や、クライエント以外のワーカーやワーカーが所属している機関や施設も含む人々や組織体が選択される場合もある。
④アクション・システム(目標達成のためにターゲットに働きかける媒体)
 アクション・システムとは、変革に影響を与えていく実行活動に参加する人々や資源のすべてを指し、実行活動のチームワークを構成する人々をいう。
*援助者は必然的に四つのシステムと重層的に関係し、発展させていく。
*システム理論は、現在のソーシャルワークの基本的視点と枠組みを支える理論の1つとして機能している。
 社会福祉士受験支援講座・教員日記


<お知らせ:09年10月31日(土)10:30~、ソーシャルワーク実践研究会。下記をクリック>
 今回は、敬心祭(本校の文化祭)の企画の一つとして、シンポジウム形式で、一般公開で開催します。テーマ「地域福祉の展開と社会福祉士」、シンポジストは、①埼玉県内のホームレス支援NPO(生活困窮者の地域生活等の総合相談支援活動など。社会福祉士事務所を併設)や、②社会福祉協議会に勤務する当学科卒業生を予定。
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by yrx04167 | 2009-10-26 20:56 | Trackback | Comments(0)
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社会福祉士養成校教員の個人ブログ。福祉施設職員ストレスケア研修、福祉士試験の重要事項や練習問題を掲載。福祉用語の検索も可能。筆者の担当講義の記録、研修のお知らせ、貧困とソーシャルワーク実践、倫理を発信


by yrx04167

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筆者 関屋光泰 プロフィール

日本福祉教育専門学校 専任教員。 大学講師。
 社会福祉士、精神保健福祉士。
 福祉施設職員研修講師
(職員のストレスケア、倫理等の講座)
 本校社会福祉士養成学科(大卒者等対象の1年制通学課程
)や大学福祉系学部等で、講義を行なっています。

 ブログ筆者 関屋光泰 の担当講義は、
・相談援助の理論と方法
・相談援助の基盤と専門職
・相談援助実習指導

・社会調査の基礎 等。
・社会福祉士受験対策講義等も担当しています

認定社会福祉士研修 講師
ソーシャルワーク機能別科目群(障害者の地域生活支援)


大学ではソーシャルワーク演習等を担当(兼任講師)。
日本福祉大学等の社会福祉士試験受験対策講座の講師を担当。


福祉施設職員研修の講師を務めています(東京都による委託研修・講師派遣事業)。
福祉職員や介護職員のストレスケア等の研修プログラムを開発、実施しています


*専門分野 関屋光泰
<業績一覧はこちらをクリック>

 貧困領域のソーシャルワーク実践及び調査、
 生活困窮者、生活保護受給者のグループワーク、精神科デイケア
 ソーシャルワーク実践と直結した専門職教育、福祉専門職養成におけるアクティブ・ラーニング
 福祉・介護職員の燃えつき・ストレスケア・メンタルヘルス


 横浜市の簡易宿泊所(ドヤ)街・寿町の医療機関(精神科・心療内科・内科等)に1999年から勤務。現役の社会福祉士・精神保健福祉士として実践も続けています。
 また、ホームレス・日雇労働者・ドヤ住民等の困窮者への支援や調査は、1993年から22年間、続けています。

・1970年代生まれ、長野県出身。


当ブログ筆者の講演が試聴できます。
貧困問題と相談援助
講演の一部を公開
(2013年9月5日)


<動画:当ブログ筆者の講義風景 社会福祉士養成学科にて
公式チャンネル >


当ブログ筆者の論文
『福祉施設職員のストレスケア サポーティブ研修プログラムの開発』
日本福祉教育専門学校 研究紀要第23巻1号
37頁から55頁 平成27年4月
ISSN 0919-2034


当ブログ筆者の論文「生活保護受給者を対象としたグループワーク ドヤ街「寿町」における実践報告と考察」 概要と筆者による関連する論文一覧

筆者の論文
「福祉専門職への転職と実践を支えるアクティブ・ラーニング」 『研究紀要』第22巻第1号,2014年
ISSN 0919-2034


同『研究紀要』』第22巻第1号 全頁 2014年 日本福祉教育専門学校

『職業訓練生たち-1年目職員が感じた介護&ストレス』

「介護人材Q&A 2015年2月号」,産労総合研究所


*筆者の論文要約
『簡易宿泊所街における民間支援活動と支援者のあり方について』


当ブログ筆者が執筆 新刊
精神保健福祉援助演習(専門)第2版
精神保健福祉士シリーズ 10
福祉臨床シリーズ編集委員会 編
ISBN 978-4-335-61117-9
発行日 2016/02/22 弘文堂
第8章 地域における精神保健問題(依存症と生活困窮)


2017社会福祉士国家試験過去問解説集 第26回-第28回全問完全解説 日本社会福祉士養成校協会編集 中央法規出版
ISBN978-4-8058-5338-2

450問を選択肢ごとに詳しく解説、科目別ポイント。過去3年分の国家試験全問題を掲載。最新の制度や数値にアップデート。

「2016精神保健福祉士国家試験過去問解説集」
 ISBN 978-4-8058-5162-3 中央法規出版

第28回社会福祉士国家試験合格発表2016年 正答と合格基準 合格体験報告会 日本福祉教育専門学校 社会福祉士養成学科合格率84.9%62人合格 一般養成施設ルート(通学)合格者数全国第1位。

社会福祉士 国家試験受験対策コース 当ブログ筆者の受験対策講義

お問い合わせ 日本福祉教育専門学校 電話:0120-166-255
日本福祉教育専門学校本校舎は高田馬場駅から徒歩1分
新宿区高田馬場2-16-3



当ブログ筆者の出張講義 福祉施設職員研修 無料>
東京都の登録講師派遣事業
「福祉施設職員のストレスケア サポーティブ研修」講座番号85

内容 介護、福祉職員のストレスへの対処や燃えつきの予防、心身の健康のセルフケアを支援する研修

「生活困窮者、生活保護受給者対象のグループワーク」講座番号79
内容 貧困、生活保護受給者対象のグループワークプログラムと留意点等を、ブログ筆者の実践や事例に基づき解説

「障害者福祉施設におけるグループワークの基礎」講座番号52
内容 福祉施設におけるグループワークのプロセス、方法、プログラム等の援助技術の基礎を解説。

「福祉施設職員の職業倫理、ハラスメント予防」講座番号86
内容 福祉施設職員に求められるモラルや福祉マインドの基礎と、ハラスメントの予防を含めて解説。

 上記はブログ筆者 関屋光泰が担当する研修です。
この講座は、東京都福祉保健局の委託による、福祉・介護・保育事業所対象の職場研修です。ブログ筆者が講師として出向きます。
詳しくは下記をクリック
東京都社会福祉協議会登録講師派遣事業


ソーシャルワーク実践研究会 ご案内 無料
ソーシャルワーク実践研究会
2016年11月5日(土)
14:30から16:00
会場 日本福祉教育専門学校 高田校舎

社会福祉士養成学科卒業生等の実践報告。
今回のテーマ「地域を基盤としたソーシャルワーク実践 社会福祉士の役割の真価を問う」
毎回、医療福祉や障害者福祉、貧困等の実践報告を行っています。

ご予約不要でどなたでも参加いただけます!

リンク:医療法人 ことぶき共同診療所

国立武蔵野学院 附属児童自立支援専門員養成所

*筆者宛てのメールはこちら*
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