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講義:相談援助の基盤と専門職 前期13回レジュメ後半 7/9*社会福祉士養成学科

相談援助の基盤と専門職 前期13回 講義レジュメ 後半
<続き>
 
3節 ソーシャルワーク実践における倫理的ジレンマ
2 倫理的ジレンマにおける倫理的判断過程
・倫理的ジレンマが生じても、専門職としての選択を迫られる。最も倫理的かつ適切な判断のため、社会資源を活用し、多様な視点から検討を行う必要がある。

*1 倫理的課題を把握する
・倫理的ジレンマへの気づきが必要である。倫理綱領の理解を深め、実践において常に倫理的視点を持ち続けることが求められる。
・ジレンマに気づき、価値や義務の対立について明確にする。

2 倫理的判断で影響を受ける個人、集団、組織を把握する
・倫理的判断により影響を受けると考えられる全ての個人、集団、組織を確認する。

3 すべての選択肢を考え、関連する全ての対象に対するプラスとマイナスの影響を考える

4 各選択肢に対する賛成と反対の理由を検討する
・倫理綱領や社会資源を活用し、各選択肢に対する賛成・反対を根拠を挙げて検討する。
この社会資源とは、倫理綱領、行動規範、法的原則、ソーシャルワークの価値や理念、関連専門職の倫理的ガイドラインなどである。また次のようなリスト等も示されている。

*倫理原則選別リスト(ドルゴフによる)
七つの倫理原則リストであり、1が最も重視・優先すべき原則である。
原則1:生命の保護の原則
原則2:平等と不平等の原則
原則3:自己決定と自由の原則
原則4:危害最小の原則
原則5:生活の質の原則
原則6:個人情報と守秘義務の原則
原則7:誠実と開示の原則

*守秘義務違反が正当化される場合
・医療倫理学者ビューチャンプとチャイルドレスによるリストであり、これらの状況では、個人情報を開示してもよいと考えられている。
・第三者に及ぶ危害が極めて重大だと予測される
・危害を起こす可能性が高い
・リスクのある人への警告や保護以外に選択肢がない
・守秘義務を破ることによって危害を予防できる
・患者に対する危害が最小限で許容範囲内である

*判例:タラソフ事件(アメリカ)
・判決「自分の患者が他者に暴力を及ぼす重大な危険性を呈しているとセラピストが判断する場合、あるいは、セラピストが自分の職業規準に則ってそのように判断すべき場合、セラピストは、予定被害者をそのような危険から保護するために適切なケアを講じる義務を負う」としている。

5 同僚や専門家のコンサルテーションを得る
・所属組織の上司・同僚に相談するのが最適であり、組織内の倫理委員会の活用もあり得る。また、外部の専門家のコンサルテーションを受けることも適切である。

6 判断を行ない、その過程を記録に残す
 総合的に検討し、選択肢を選ぶ。判断と判断過程を記録に残す。

7 倫理的判断を実践、モニタリング、評価し、記録に残す


<参考>
 社会福祉士の行動規範 日本社会福祉士会

<下記をクリック>



<参考>
社会福祉士の行動規範 日本社会福祉士会
この「社会福祉士の行動規範」は、「社会福祉士の倫理綱領」に基づき、社会福祉士が社会福祉実践において従うべき行動を示したものである。
Ⅰ.利用者に対する倫理責任
1.利用者との関係
社会福祉士は、利用者との専門的援助関係についてあらかじめ利用者に説明しなければならない。
社会福祉士は、利用者と私的な関係になってはならない。
社会福祉士は、いかなる理由があっても利用者およびその関係者との性的接触・行動をしてはならない。
社会福祉士は、自分の個人的・宗教的・政治的理由のため、または個人の利益のために、不当に専門的援助関係を利用してはならない。
社会福祉士は、過去または現在の利用者に対して利益の相反する関係になることが避けられないときは、利用者を守る手段を講じ、それを利用者に明らかにしなければならない。
社会福祉士は、利用者との専門的援助関係とともにパートナーシップを尊重しなければならない。

2.利用者の利益の最優先
社会福祉士は、専門職の立場を私的なことに使用してはならない。
社会福祉士は、利用者から専門職サービスの代償として、正規の報酬以外に物品や金銭を受けとってはならない。
社会福祉士は、援助を継続できない何らかの理由がある場合、援助を継続できるように最大限の努力をしなければならない。

3.受 容
社会福祉士は、利用者に暖かい関心を寄せ、利用者の立場を認め、利用者の情緒の安定を図らなければならない。
社会福祉士は、利用者を非難し、審判することがあってはならない。
社会福祉士は、利用者の意思表出をはげまし支えなければならない。

4.説明責任
社会福祉士は、利用者の側に立ったサービスを行う立場にあることを伝えなければならない。
社会福祉士は、専門職上の義務と利用者の権利を説明し明らかにした上で援助をしなければならない。
社会福祉士は、利用者が必要な情報を十分に理解し、納得していることを確認しなければならない。

5.利用者の自己決定の尊重
社会福祉士は、利用者が自分の目標を定めることを支援しなければならない。
社会福祉士は、利用者が選択の幅を広げるために、十分な情報を提供しなければならない。
社会福祉士は、利用者の自己決定が重大な危険を伴う場合、あらかじめその行動を制限することがあることを伝え、そのような制限をした

6.利用者の意思決定能力への対応
社会福祉士は、利用者の意思決定能力の状態に応じ、利用者のアドボカシーに努め、エンパワメントを支援しなければならない。
社会福祉士は、自分の価値観や援助観を利用者に押しつけてはならない。
社会福祉士は、常に自らの業務がパターナリズムに陥らないように、自己の点検に務めなければならない。
社会福祉士は、利用者のエンパワメントに必要な社会資源を適切に活用しなければならない。

7.プライバシーの尊重
社会福祉士は、利用者が自らのプライバシー権を自覚するように働きかけなければならない。
社会福祉士は、利用者の個人情報を収集する場合、その都度利用者の了解を得なければならない。
社会福祉士は、問題解決を支援する目的であっても、利用者が了解しない場合は、個人情報を使用してはならない。

8.秘密の保持
社会福祉士は、業務の遂行にあたり、必要以上の情報収集をしてはならない。
社会福祉士は、利用者の秘密に関して、敏感かつ慎重でなければならない。
社会福祉士は、業務を離れた日常生活においても、利用者の秘密を保持しなければならない。
社会福祉士は、記録の保持と廃棄について、利用者の秘密が漏れないように慎重に対応しなければならない。

9.記録の開示
社会福祉士は、利用者の記録を開示する場合、かならず本人の了解を得なければならない。
社会福祉士は、利用者の支援の目的のためにのみ、個人情報を使用しなければならない。
社会福祉士は、利用者が記録の閲覧を希望した場合、特別な理由なくそれを拒んではならない。

10.情報の共有
社会福祉士は、利用者の情報を電子媒体等により取り扱う場合、厳重な管理体制と最新のセキュリティに配慮しなければならない。
社会福祉士は、利用者の個人情報の乱用・紛失その他あらゆる危険に対し、安全保護に関する措置を講じなければならない。
社会福祉士は、電子情報通信等に関する原則やリスクなどの最新情報について学ばなければならない。

11.性的差別、虐待の禁止
社会福祉士は、利用者に対して性的差別やセクシュアル・ハラスメント、虐待を行ってはならない。
社会福祉士は、利用者に対して肉体的・精神的損害または苦痛を与えてはならない。
社会福祉士は、利用者が暴力や性的搾取・虐待の対象となっている場合、すみやかに発見できるよう心掛けなければならない。
社会福祉士は、性的差別やセクシュアル・ハラスメント、虐待に対する正しい知識を得るよう学ばなければならない。

12.権利侵害の防止
社会福祉士は、利用者の権利について十分に認識し、敏感かつ積極的に対応しなければならない。
社会福祉士は、利用者の権利侵害を防止する環境を整え、そのシステムの構築に努めなければならない。
社会福祉士は、利用者の権利侵害の防止についての啓発活動を積極的に行わなければならない。

Ⅱ.実践現場における倫理責任
1.最良の実践を行う責務
社会福祉士は、専門職としての使命と職責の重要性を自覚し、常に専門知識を深め、理論と実務に精通するように努めなければならない。
社会福祉士は、専門職としての自律性と責任性が完遂できるよう、自らの専門的力量の向上をはからなければならない。
社会福祉士は、福祉を取り巻く分野の法律や制度等関連知識の集積に努め、その力量を発揮しなければならない。

2.他の専門職等との連携・協働
社会福祉士は、所属する機関内部での意思疎通が円滑になされるように積極的に働きかけなければならない。
社会福祉士は、他の専門職と連携し、所属する機関の機構やサービス提供の変更や開発について提案しなければならない。
社会福祉士は、他機関の専門職と連携し協働するために、連絡・調整の役割を果たさなければならない。

3.実践現場と綱領の遵守
社会福祉士は、社会福祉士の倫理綱領を実践現場が熟知するように働きかけなければならない。
社会福祉士は、実践現場で倫理上のジレンマが生じた場合、倫理綱領に照らして公正性と一貫性をもってサービス提供を行うように努めなければならない。
社会福祉士は、実践現場の方針・規則・手続き等、倫理綱領に反する実践を許してはならない。

4.業務改善の推進
社会福祉士は、利用者の声に耳を傾け苦情の対応にあたり、業務の改善を通して再発防止に努めなければならない。
社会福祉士は、実践現場が常に自己点検と評価を行い、他者からの評価を受けるように働きかけなければならない。

Ⅲ.社会に対する倫理責任
1.ソーシャル・インクルージョン
社会福祉士は、特に不利益な立場にあり、抑圧されている利用者が、選択と決定の機会を行使できるように働きかけなければならない。
社会福祉士は、利用者や住民が社会の政策・制度の形成に参加することを積極的に支援しなければならない。
社会福祉士は、専門的な視点と方法により、利用者のニーズを社会全体と地域社会に伝達しなければならない。

2.社会への働きかけ
社会福祉士は、利用者が望む福祉サービスを適切に受けられるように権利を擁護し、代弁活動を行わなければならない。
社会福祉士は、社会福祉実践に及ぼす社会政策や福祉計画の影響を認識し、地域福祉の増進に積極的に参加しなければならない。
社会福祉士は、社会における意思決定に際して、利用者の意思と参加が促進されるよう支えなければならない。
社会福祉士は、公共の緊急事態に対して可能な限り専門職のサービスを提供できるよう、臨機応変な活動への貢献ができなければならない。

3.国際社会への働きかけ
社会福祉士は、国際社会において、文化的社会的差異を尊重しなければならない
社会福祉士は、民族、人種、国籍、宗教、性別、障がい等による差別と支配をなくすための国際的な活動をささえなければならない。
社会福祉士は、国際社会情勢に関心をもち、精通するよう努めなければならない。

Ⅳ.専門職としての倫理責任
1.専門職の啓発
社会福祉士は、対外的に社会福祉士であることを名乗り、専門職としての自覚を高めなければならない。
社会福祉士は、自己が獲得し保持している専門的力量を利用者・市民・他の専門職に知らせるように努めなければならない
社会福祉士は、個人としてだけでなく専門職集団としても、責任ある行動をとり、その専門職の啓発を高めなければならない。

2.信用失墜行為の禁止
社会福祉士は、社会福祉士としての自覚と誇りを持ち、社会的信用を高めるよう行動しなければならない
社会福祉士は、あらゆる社会的不正行為に関わってはならない。

3.社会的信用の保持
社会福祉士は、専門職業の社会的信用をそこなうような行為があった場合、行為の内容やその原因を明らかにし、その対策を講じるように努めなければならない。
社会福祉士は、他の社会福祉士が非倫理的な行動をとった場合、必要に応じて関係機関や日本社会福祉士会に対し適切な行動を取るよう働きかけなければならない。
社会福祉士は、信用失墜行為がないように互いに協力し、チェック機能を果たせるよう連携を進めなければならない。

4.専門職の擁護
社会福祉士は、社会福祉士に対する不当な批判や扱いに対し、その不当性を明らかにし、社会にアピールするなど、仲間を支えなければならない。
社会福祉士は、不当な扱いや批判を受けている他の社会福祉士を発見したときは、一致してその立場を擁護しなければならない。
社会福祉士は、社会福祉士として不当な批判や扱いを受けぬよう日頃から自律性と倫理性を高めるために密に連携しなければならない。

5.専門性の向上
社会福祉士は、研修・情報交換・自主勉強会等の機会を活かして、常に自己研鑽に努めなければならない。
社会福祉士は、常に自己の専門分野や関連する領域に関する情報を収集するよう努めなければならない。
社会福祉士は、社会的に有用な情報を共有し合い、互いの専門性向上に努めなければならない。

6.教育・訓練・管理における責務
スーパービジョンを担う社会福祉士は、その機能を積極的に活用し、公正で誠実な態度で後進の育成に努め社会的要請に応えなければならない。
コンサルテーションを担う社会福祉士は、研修会や事例検討会等を企画し、効果的に実施するように努めなければならない。
職場のマネジメントを担う社会福祉士は、サービスの質・利用者の満足・職員の働きがいの向上に努めなければならない。
業務アセスメントや評価を担う社会福祉士は、明確な基準に基づき評価の判断をいつでも説明できるようにしなければならない。
社会福祉教育を担う社会福祉士は、次世代を担う人材養成のために、知識と情熱を惜しみなく注がなければならない。

7.調査・研究
社会福祉士は、社会福祉に関する調査研究を行い、結果を公表する場合、その目的を明らかにし、利用者等の不利益にならないよう最大限の配慮をしなければならない。
社会福祉士は、事例研究にケースを提供する場合、人物を特定できないように配慮し、その関係者に対し事前に承認を得なければならない。
by yrx04167 | 2010-07-09 12:44 | Comments(0)