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相談援助の基盤と専門職 後期第4回 講義レジュメ<前半>10/18*コミュニティオーガニゼーション

相談援助の基盤と専門職 後期第4回 講義レジュメ<前半> 2010/10/18
*社会福祉士養成学科
4章1節 ソーシャルワークの発展期・続き
○前回レジュメ:治療分野におけるグループワークの補足
<ソーシャルワークと戦時体制>

・米国における、グループワーク領域の、第二次世界大戦への協力。
 米国国内での協力と、兵士に対する治療的グループワークの実践。
 退役軍人病院における社会復帰を目指したグループワーク実践。

・1946年、グループワークがソーシャルワークの一方法であると公式に定義づけられる(先述)。同年、グループワーカーの専門職団体(AAGW=アメリカグループワーカー協会)が結成。

3 コミュニティオーガニゼーション テキストP66
<ポイント>

 コミュニティ・オーガニゼーション(組織化)は、COSやセツルメントにおいて重要な援助技術であった。1920年前後から公的福祉機関の設置が始まり、地域援助技術は新たな段階を迎えていた。
ニューディール政策と社会保障法制定といった背景から、1939年の「レイン報告書」による「ニーズ・資源調整説」は地域援助技術の理論体系化に大きな影響を与えた。
 1947年には、W.ニューステッターが「インターグループワーク論」を提示した。
<解説>
(1)公的福祉機関の発達

 1929年からの大恐慌とニューディール政策、1935年の社会保障法は公的社会福祉機関の発達をもたらし、またマクロレベルでのソーシャルワーカーの介入を求めた。そのため失業対策などを中心にソーシャルワーカーが関わり、地域政策の立案や、社会計画の作成・開発活動に参加した。これらの状況から、1939年に「レイン報告書」がまとめられた。

(2)レイン報告書-ニーズ・資源調整説-
◎レイン委員会報告とは、コミュニティ・オーガニゼーション(CO)の方法論を初めて体系化した報告書である。レイン(Lane,R. P.)を委員長とする全米社会事業会議第三部会が1939年にまとめた。ニーズをもつ住民の参加を明示し,COの対象領域を,それまでの私的な救貧事業の組織化から,大恐慌時代の地域社会における多様なニーズへと拡大。COの概念と名称,方法と活動,分野,従事者の資格と訓練等を総合的に整理し,ニーズ・資源調整説をCOの主軸に位置づけた。
 この報告では、地域援助技術の主な機能を「ニーズと資源調整」と規定し、①ソーシャルワークとしての地域援助技術の位置付けと体系化、②地域社会のニーズの発見に努め、ニーズと社会資源を絶えず効果的に調整する活動「ニーズ・資源調整説」を示した、③住民参加概念の普及、④ニーズ調査の発達、これら地域組織化活動を総合的・科学な概念にまで高めた。
 なお、「レイン報告書」の提出は1939年であって、全米社会事業会議が地域援助技術を社会福祉援助技術の一つとして位置づけたのは、集団援助技術(1946年)より早い。

(3)インターグループワーク論
 1947年の全米社会事業会議において、W.ニューステッターは、地域内の各種組織・団体・機関の代表者の討議の場を設定し、グループ間の関係調整によって選択された社会目標を中心に、各グループの協働を促進する「インターグループワーク論」を提示した。これは、地域社会は様々なグループの相互作用、グループとコミュニティの相互作用によって発展するとしている。
・1946年、「コミュニティ・オーガニゼーション研究協会」の発足
・1950年までに、アメリカの16のソーシャルワーク大学院、コミュニティ・オーガニゼーションコースが設置。
・1950年代以降、都市計画理論の影響から「計画立案」が問題解決に不可欠とされた。

(4)コミュニティ・オーガニゼーション(ロス)
 1955年、M.ロスは「コミュニティ・オーガニゼーション」を著し、「組織化説」を唱えた。これは、コミュニティ自らによるニーズ発見、コミュニティから生まれた計画、コミュニティの能力増強、改革への意欲、計画立案へのコミュニティの参加を重視するものであった。この理論は、必要な資源を内部外部に求めて実際行動を起こすにあたり、共同社会が団結協力することを重視している。また、M.ロスは、ニーズの解決のプロセスにおける民主的な手続きを重視している。 
◎COは,ケースワークやグループワークといった要援護者に対する直接的なアプローチの手法では解決しえない,地域社会のもつ社会的な諸課題に着目し,当事者を含む地域住民が組織的に課題解決を図れるよう,専門家であるコミュニティワーカーが側面的に地域住民を援助する技術体系である。その基本的なプロセスは,①地域における福祉課題,ニーズの把握と顕在化,②住民の組織化と課題解決に向けた共同計画や対策の策定,③計画や対策の実施,④実施結果の評価とモニタリング(必要に応じて再計画)の4段階である。
 さらに,これらの過程において,調査,広報,ソーシャル・アクション,連絡・調整等のサブメソッドの援用が必要となる。



*用語解説は下記をクリック



○用語解説:ニーズ・資源調整説
 コミュニティ・オーガニゼーション(CO)の有力な概念として,1939年,レイン委員会が提起。多様化する地域社会問題の解決と予防のために,ニーズに対する社会資源の発見や適合など,両者の効果的な調整活動を重視。住民参加やニーズ・資源の調査活動などを強調し,社会事業組織化から地域組織化へのCOの発展と体系化を誘導した。

○用語解説:インターグループワーク
ニューステッターが提起したコミュニティ・オーガニゼーション(CO)の主要技術の一つ。「集団間調整事業」「集団関係の指導技術」と訳される。地域社会の多様な問題を解決するためには,地域社会を構成する下位集団の協力と協働の関係を調整・促進して,地域社会の問題発見とその解決のための協働を実現するという過程を重視した。具体的には,①各集団の協力関係の保持とその代表者組織(協議会)の形成,②代表者組織と各集団との円滑な結合,③各集団の機能強化,④代表者組織による共同計画の策定と協働実施,のアプローチを提示した。しかし,地域集団の弱体化や形骸化は,この限界をも示し,地域組織化による住民の直接的参加を重視するマレー・ロスの統合論に発展。

○解説:コミュニティ・ディベロップメント
・不利益な状態にある地域住民の生活の改善や事業計画への参加を重視した地域社会の開発をいう。イギリスを中心に,旧植民地や発展途上国において用いられてきた用語で,福祉事業・活動を中心として構成されている日本の「地域福祉」より広い概念といえる。ただし,地域社会のなかに地元の活動主体となる人的な資源を開発することが重要という点は同じである。国連の提唱を経て、現在はアメリカなどの先進国でも採用されている。



*前回の講義レジュメ
社会福祉士受験支援講座・教員日記 : 相談援助の基盤と専門職 後期第3回 講義レジュメ<前半>10/11*ソーシャルワークの基礎確立期・続き・世界恐慌・大不況とソーシャルワーク*社会福祉士養成学科

社会福祉士受験支援講座・教員日記 : 相談援助の基盤と専門職 後期第3回 講義レジュメ<後半>10/11*グループワークの形成*社会福祉士養成学科
by yrx04167 | 2010-10-18 08:55 | Comments(0)