相談援助の理論と方法 第41回講義レジュメ<前半>11/01*機能的アプローチ*社会福祉士養成科・夜間部

相談援助の理論と方法 第41回講義レジュメ<前半>2010/11/01
*社会福祉士養成科・夜間部にて講義

2節 機能的アプローチ
<概要>

 1930年代になるとO.ランクの流れをくむ機能主義(機能派)ケースワークが登場する。機能主義におけるケースワークの役割は,クライエントの成長しようとする自由な意思を邪魔する障害を取り除くことであるとした。機能派の登場により、主流である診断派との論争が始まった。
<解説>
 大恐慌(1929年)後、ソーシャルワークが再び大量の貧困問題への対応を迫られる中で,それまでの診断主義のケースワークへの批判的立場として,新たに新フロイト派のO.ランク(0.Rank)の意志心理学を基礎とする、Ⅴ.ロビンソン(Ⅴ.Robinson)やJ.タフト(J.Taft)らの「機能主義のケースワーク」が登場した。初期の理論はロビンソンの『ケースワーク心理学の変遷』(1930年)に代表される。

・機能派の特徴とは、①「疾病の心理学」より「成長の心理学」、②「治療」よりも「援助」、③機関の機能の枠に沿った援助、④利用者中心、④開始→中間→終結の時間的展開の重視 といった点が挙げられる。
・機能主義ケースワークとは,クライエントの自由な意志を尊重し,利用者による主体的な問題解決を援助者がそれぞれの「機関の機能」を代表して援助する点を明らかにした。それは、パーソナリティの健康的側面に焦点を当て、クライエントの持つ意志(will)の力の発揮を促進させようというものである。
・援助の過程については,診断主義のような専門職中心の調査→診断→治療の過程を廃し、「初期の局面→中間の局面→終結の局面」と時間的な経過の中での相互的なケースワーク関係によって展開していくものとみている。つまり機能派は、意志の力によって人は自分自身で問題を解決していけるという仮説に立って、利用者に潜在している力を引き出すために、援助者は側面から援助する役割を重視していた。問題の背景はクライエントの現在の生活状況にあり、援助者は自分の属する機関の機能をクライエントに提供するという考えであった。

・機能派は、ケースワークの構成される場面の現実的な枠組みを、援助者の属する横関に求めて、機関の機能を重視していた。
 また、診断派と機能派の論争の歴史的意義とは、「医学モデル」から「生活モデル」へと、社会福祉援助技術の視点の転換の発端であった点が挙げられる。

<テキスト解説>
1 起源と基盤理論 テキストP147

・1930年代、タフトとロビンソンによって確立され、その後、スモーリーにより継承され、1960年代に再構築された。診断主義派への批判(フロイト主義への傾注、診断的査定の強調生育歴聴取偏重など)として誕生した。
・ランクの自我心理学・意思心理学、教育哲学者デューイ、社会人類学者ミードの影響を受けた。アメリカのプラグマティズムが背景にある。

2 機能的アプローチを理解するためのキーワード
*ランク

・精神分析学者。出産外傷説=神経症原因の不安は、出産時の母親からの分離が原形となり、その後も繰り返される不安であると捉えた。ソーシャルワーカー教育に貢献した。「クライエント中心療法」のロジャース(C.R.Rogers)に影響を与えた。

*意思
 人間が本来もつ創造的な力をコントロールするものを意思と呼んだ。

*フォーム
・支援期間等の取決めなど、サービスプログラムの運営方法。

3 適用対象・適用課題 テキストP148
・ほぼ全ての対象のサイズ、状況・課題に対応できる。クライエントが機関の機能を活用できるように、機能に応じた「フォーム」の形成内容が重要となる。

4 支援焦点
・クライエントは潜在的可能性をもち、ニーズを機関の機能との関係で明確化し、社会的機能を高める力の解放が焦点となる。

5 支援展開
・クライエントの自らの意思による決定を支え、問題やニーズの明確化、ニーズに適合した利用のため、機関の機能を具体化・個別化し提供する。
・P148表 機能的アプローチの5原則(効果的な診断の活用等)
スモーリーが機能的アプローチの介入原則として明示した。開始期・中間期・終結期の過程のなかで、原則に沿って、問題解決が図られる。


*補足:世界恐慌のソーシャルワークへの影響
*1929年、世界恐慌。ニューヨーク証券取引所で株価が大暴落したことを端緒として世界的な規模で、各国の経済に波及した金融恐慌、および経済後退である。1929年10月24日は「暗黒の木曜日」として知られる。大恐慌等とも言われる。
 →多くの失業者の救済が課題となるが、民間施設では対応できず。
*ニューディール政策とは、アメリカ合衆国大統領フランクリン・ルーズベルトが世界恐慌を克服するために行った一連の経済政策である。それまでの歴代政権が取っていた古典的な自由主義的経済政策(政府は市場には介入せず、経済政策も最低限なものにとどめる)から、政府がある程度経済へ関与する社会民主主義的な政策へと転換したものであり、第二次世界大戦後の資本主義国の経済政策等に大きな影響を与えた。
→公的機関にケースワーカーが雇用される。
 青少年の民主主義思想や健全性の育成のため、グループ活動(グループワーク)が活用される。

*1935年、アメリカ社会保障法Social Security Act の成立。
 アメリカ合衆国は,大恐慌の後,経済の立て直しのため,有効需要を刺激する目的から,社会保障法を成立させた。
 →公立のソーシャルワーク施設・機関の増加。

<後半に続く>


日本福祉教育専門学校 社会福祉士養成学科
社会福祉士及び介護福祉士法


*用語解説は下記をクリック



<用語解説・機能主義学派>
■用語解説:スモーリー Smalley, Ruth Elizabeth (1903-79)
・ランク(Rank, O.)の影響を受け,タフト(Taft, J.),ロビンソン(Robinson, V.)らとともにペンシルベニア大学で機能主義学派を率いた。ソーシャルワークの伝統的な考え方にとらわれず,クライエントの潜在的に備わった創造力を重視し,クライエントが主体的にワーカーやワーカーの所属する機関の機能を活用できるよう支援することを実践家に説いた。CSWE(Council on Social Work Education)や NASWの設立に貢献したことでも知られる。[主著] Theory for Social Work Practice, 1967.

■参考用語 新フロイト派
 新フロイト派は、精神分析学において、フロイトの欲動論を批判し、文化的・社会的要因を重視した学派。フロイト左派とも呼ばれる。政治学や社会学に影響を与えた。 代表的な研究者に、サリヴァン、カレン・ホーナイ、エーリッヒ・フロム、クララ・トンプソンがいる。

■参考用語 来談者中心療法 client-centered therapy
 クライエント中心療法。ロジャーズによって発展させられた非指示的カウンセリング。ロジャーズは,人間は自分の心理的不適応の諸要因を意識のうえで経験する能力をもっていること,自己の概念を全経験と一致させる指向性をもつこと,さらに治療的な援助関係がそれらの隠された力を解放する,という基本的な考え方から,治療過程を定式化した。そのために,カウンセラーには三つの態度条件(表裏のない純粋さ,無条件の肯定的配慮,共感的理解)が要請される。


*前回講義のレジュメ 下記をクリック
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by yrx04167 | 2010-11-02 05:26 | Comments(0)