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相談援助の基盤と専門職 後期11回 講義レジュメ 前半 12月6日*社会福祉士養成学科

相談援助の基盤と専門職 後期11回 講義レジュメ 前半 12月6日
*社会福祉士養成学科
8章 総合的かつ包括的な相談援助の全体像 
2節 地域を基盤としたソーシャルワークの基本的視座
1 本人の生活の場で展開する援助 テキストP148
①クライエントの生活全体への視点

・生活の全体性-前回のレジュメを参照。

*「生活」とは何か-生活構造とは-
 用語解説を参照。

②環境とクライエントへの一体的支援

③クライエントのライフステージへの継続的に働きかけ
・ライフステージ life stage とは、個人の一生の発達過程にみられる諸段階のことである。人間の発達には生物的・生理的側面,心理的側面とともに社会的側面があり,これらの相互作用を重視しつつも,とりわけ社会的側面の発達段階に焦点が当てられる。具体的には,個人の地位・役割の大きな変化と段階移行に着目して段階設定がなされることが多い。

2 援助対象の拡大 テキストP150
・社会構造の変化は、社会問題の変化をもたらす。ソーシャルワークの使命には、既存の問題、対象のみならず、新たな問題への対応も含まれる。

*「社会的な援護を要する人々に対する社会福祉のあり方に関する検討会」報告書 平成12年12月8日 厚生労働省。抜粋。
・・・近年、社会福祉の制度が充実してきたにもかかわらず、社会や社会福祉の手が社会的援護を要する人々に届いていない事例が散見されるようになっている。(略)
先の通常国会で成立した「社会福祉事業法等の一部を改正する法律」は、豊かな社会における社会福祉制度として、救済的な措置制度から利用者の選択を尊重する利用制度へと転換を図ろうとする「社会福祉の基礎構造改革」である。それとともに社会福祉サービスが人間による人間のためのサービスであるという原点に立ち返った制度改革であり、「地域福祉の推進」という章を新たに設けたことからも明らかなように、地域社会における「つながり」を再構築するための改正であるともいえよう。
 イギリスやフランスでも、「ソーシャル・インクルージョン」が一つの政策目標とされるに至っているが、これらは「つながり」の再構築に向けての歩みと理解することも可能であろう。
 諸外国におけるこのような試みに鑑みると、「社会的援護を必要とする人々に社会福祉の手が届いていない」事例は、それがたとえ小さな事例であったとしても、その集積と総合化の中から「つながり」の再構築への道筋が浮かび上がってくるものと思う。(略)
「対象となる問題とその構造」
 従来の社会福祉は主たる対象を「貧困」としてきたが、現代においては、
・「心身の障害・不安」(社会的ストレス問題、アルコール依存、等)
・「社会的排除や摩擦」(路上死、中国残留孤児、外国人の排除や摩擦、等)
・「社会的孤立や孤独」(孤独死、自殺、家庭内の虐待・暴力、等)
といった問題が重複・複合化しており、こうした新しい座標軸をあわせて検討する必要がある。
 このうち、社会による排除・摩擦や社会からの孤立の現象は、いわば今日の社会が直面している社会の支え合う力の欠如や対立・摩擦、あるいは無関心といったものを示唆しているともいえる。
 具体的な諸問題の関連を列記すると、以下の通りである。
・ 急激な経済社会の変化に伴って、社会不安やストレス、ひきこもりや虐待など社会関係上の障害、あるいは虚無感などが増大する。
・ 貧困や低所得など最低生活をめぐる問題が、リストラによる失業、倒産、多重債務などとかかわりながら再び出現している。
・ 貧困や失業問題は外国人労働者やホームレス、中国残留孤児などのように、社会的排除や文化的摩擦を伴う問題としても現れている。
・ 上記のいくつかの問題を抱えた人々が社会から孤立し、自殺や孤独死に至るケースもある。
・ 低所得の単身世帯、ひとり親世帯、障害者世帯の孤立や、わずかに残されたスラム地区が、地区ごと孤立化することもある。
・ 若年層などでも、困窮しているのにその意識すらなく社会からの孤立化を深めている場合もある。これらは通常「見えにくい」問題であることが少なくない。
 以上の整理は、あくまで例示であって、これらの問題が社会的孤立や排除のなかで「見えない」形をとり、問題の把握を一層困難にしている。孤独死や路上死、自殺といった極端な形態で現れた時にこのような問題が顕在化することも少なくない。
 そのため、「見えない」問題を見えるようにするための、複眼的取り組みが必要である。
<以上、抜粋>

3 予防的かつ積極的アプローチ テキストP151

4 ネットワークによる連携と協働
・個人が取り結ぶ人間関係は,構造面と機能面に分けることができ,規模・接触頻度などの構造的側面をソーシャルネットワークとよび,機能的側面の援助機能に注目したものをソーシャルサポートとよぶ。サポートネットワークは,このソーシャルネットワークのうち援助的機能を果たす部分をさす。
インフォーマル・サポートネットワークとは,サポートネットワークのうち個人を取り巻く家族・友人・隣人・地区の世話人などの専門家でない援助者によって構成されるインフォーマルな援助ネットワークをさす。インフォーマル・サポートネットワークは,個々の環境やニーズを踏まえ機動性・弾力性があり,ネットワーク自体発展していく動態的性格をもつ。 このネットワークの自主性を見落とすと,たんに制度の代用や不十分な政策の補充となる危険性がある。インフォーマル・サポートネットワークはケアマネジメントの発展とともに関心を集めている。

<後半に続く>


<前回の講義レジュメ・練習問題 下記をクリック>
社会福祉士受験支援講座・教員日記 : 相談援助の基盤と専門職 後期第10回講義 練習問題 11/29*社会福祉士養成学科
社会福祉士受験支援講座・教員日記 : 相談援助の基盤と専門職 後期第10回 講義レジュメ・前半 11/29*社会福祉士養成学科
社会福祉士受験支援講座・教員日記 : 相談援助の基盤と専門職 後期第10回 講義レジュメ後半*総合的かつ包括的な相談援助*社会福祉士養成学科


*用語解説は下記をクリック




○解説:生活
 人間が生きていくうえで行う諸活動の総体のことであるが,広義には,生物としての生命の維持,文化的な日常生活,その連鎖としての一生・生涯という三層構造を含んで,「生」の再生産の過程を示すこともあれば,狭義には,相対的に独自な領域として二番目の日常の営みや暮らし向きをさすこともある。
そのような生活への着目がなされるのは,生活が個々人の24時間の時間配分や活動空間に規定された一つのまとまりとしての全体性と,日々の習慣的な行動パターンにおいて成立する恒常性をもちつつ,個々人が意味づけし,行動を改変できる主体性・自律性の側面を有しているという特徴によるものである。

○解説:生活構造
 人々が生活を営むうえで自ら作り出しつつ,逆に生活のあり方を規定される生活諸要素の間の関係構造。具体的には,生活水準(貨幣指標・非貨幣指標),生活関係(家族関係・他者関係),生活時間(生活周期・日常時間配分),生活空間(活動空間・資源空間・意識空間)などの要素から構成される。社会構造と個人の間に独自に存在し,生活の多様化のもと,階層や地域,性・世代,ライフスタイルの違いを反映したものとなることが多い。

○解説:生活者
 生産者・消費者あるいは労働者・勤労者,扶養者・被扶養者などの特定の属性として人間を捉えるのではなく,日々の24時間という時間枠のなかを総体として統合しながら,生活優先などの独自の行動原理にたって生きようとしている人たちとして捉えるとき,生活者の概念が使われる。

○解説:ライフスタイル
 特定の個人や集団に特徴的な生活習慣や価値観の選好パターンであり,社会構造と生活構造の両者の規定力を超えた選択性が強調されることが多い。人々の消費・余暇・政治など生活にかかわる行動や意識が社会経済的地位によって充分には説明されなくなった現代社会を背景に,物質的豊かさとは異なる象徴的差異の希求(環境・福祉などへの理解)や,アイデンティティの解放の模索(自己表現へのこだわりやネットワーク的関係の重視など)がめざされている。

*接近困難なクライエント hard-to-reach client
 重篤な生活問題があり,周囲の通報や来所の促しがあるにもかかわらず,社会機関などへの援助は求めず,ワーカーなどの訪問に対しても拒否的,攻撃的であることから,問題解決が困難となる援助対象者のこと。多問題家族ケースで知られてきたが,近年では児童虐待への対応としても,アウトリーチやネットワークなどの新たな課題となっている。

*多問題家族 multiproblem family
 貧困・傷病・心身障害・問題行動など複数の問題群をかかえた家族をいう。このような家族においては,自らの問題解決能力が低く社会資源の活用が望まれるが,社会資源の活用にも一定の能力が必要とされるため,そのような状況から脱却することは容易ではない。多様な職能によるネットワーキングや当事者の自尊感情を低下させずに問題解決を行うための技術の開発が必要である。今日では,ハイリスク家族と表現される場合もある。

*アウトリーチ
・予防的な援助活動として,申請を待つばかりではなく,援助者が地域や家庭に出向くというアウトリーチの活動の重要性も広がっている。
・アウトリーチoutrearch とは、クライエントの日常生活の場(自宅など)において必要な情報やサービスを提供する活動であり,特に,行政機関や地域福祉関連の機関において求められるソーシャルワーカーの機能である。また,地域のなかで生活困難に直面している人々を見つけだすことも意味し,その場合はケース発見と同義に使われる。いずれも,利用者の来訪をただ待つのではなく,ソーシャルワーカーが積極的に地域に出ていくという側面が強調されている。

*ネットワーキング
 ネットワーキングは,ネットワークが連携や網状組織など静態的な状況を示すのに対して,形成過程や活動方法を意味する動態的な概念として用いられることが多い。
もともとリップナック(Lipnack, J.)とスタンプス(Stamps, J.)らが市民活動の手法として提唱し,「ある目標あるいは価値を共有している人々のあいだで,既存の組織への所属とか,居住する地域とか差異や制約をはるかに越えて,人間的な連繋をつくりあげていく活動」を意味するとされている。
ネットワーキングは,個人と個人,集団と集団が共存・共生していくためのインフォーマルな結びつき,つながりを再組織化していく運動プロセスということができる。社会福祉の領域では,ケース(ケア)マネジメントにおけるサービス・ネットワークの形成から,サポート・ネットワークづくり,地域福祉活動としての住民交流活動や福祉的支援を要する当事者組織づくり,さらには保健・福祉機関や団体間の連携システム化,専門職と当事者および住民の協働など広く応用されている。

*フォーマル・セクター formal sector
 通常,福祉ミックスにおける政府をさす。政府といっても中央政府,地方政府,国のさまざまな機関と多様であるが,福祉供給における政府は,少なくとも,①政策の決定,②直接供給,③計画・指導,④規制,⑤助成・補助などの役割を果たす。民営化によってフォーマル・セクターの役割縮小がいわれるが,こうしたさまざまな側面での政府の役割を考える必要があろう。
by yrx04167 | 2010-12-06 12:15 | Comments(0)