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相談援助の理論と方法 前期第11回講義レジュメ3 介入、アプローチ、ヤングハズバンド、基本的コンピテンシーモデルとは

相談援助の理論と方法 前期第11回講義レジュメ<3> 2011/06/23 5・6時限
社会福祉士養成科(夜間部トワイライトコース)

10章 相談援助のための介入の技術
3 介入の戦略 テキストP209
*多様な戦

・介入の戦略は多様である。
・効果的な介入のために、人的ネットワークの強化が重要である。
専門職、地域におけるネットワーク構築への参画が必要となる。
クライエント支援における、サポートネットワークの構築が重要である。
・既存資源の活用に限らず、資源の開発が必要な場合もある。
・各組織の機能を促進し、問題解決を図る戦略の立案が求められる。
・集団、コミュニティのエンパワメントを図る戦略により、状況の好転を図る。

*問題節決のための多様な実践アプローチ
・従来、ソーシャルワークは「過程」が重視されたが、今日的には「結果」も重視される。
・問題解決を促進するため、介入の方法、実践モデル・アプローチから適切なものを選択し、働きかける必要がある。
効果的な介入は、有効なアプローチを適切に用いることにより可能になる。
・複数のアプローチが同時平行して用いられる場合もある。
・効果の有無は、効果測定によって確認出来る場合もある。

<アプローチの例>
*診断主義アプローチ
 (詳細は後述)

*機能主義アプローチ
 (詳細は後述)

*危機介入アプローチ
 (詳細は後述)

*問題解決アプローチ
 (詳細は後述)

*課題中心アプローチ
 (詳細は後述)

*家族療法アプローチ
 (詳細は後述


*グループワーク
・グループのもつ特性、プログラム、相互作用を活用する援助方法である。G.コノプカによる、集団援助技術(グループワーク)の定義とは、「ソーシャル・グループワークとは、ソーシャルワークの一つの方法であり、意図的なグループ経験を通じて、個人の社会的に機能する力を高め、また個人・集団・地域社会の諸問題に、より効果的に対処しうるよう、人々を援助するものである」。

4 介入の技術 テキストP211
*多様な介入技

・介入に用いる技術は、人間・環境・時間・空間に適切に介入する技術、実践モデル・アプローチを適切に用いる技術、協働の技術、クライエントを参加させる技術、スーパービジョン等を活用する技術などがある。
・ガービン(C.D.Garvin)らのソーシャルワーク介入の技術の提示。
「価値の明確化を図る」「コーチングを活用する」「行動変容を図る」「役割達成に留意する」などをあげている。
・平山らは、「課題中心システム介入方法を試みる」「認知再構成技法を活用する」「クライエントの問題解決能力を促進する」「環境改善と社会資源を発展させる」「環境改善の介入方法を図る」「エンパワメントの方法」をあげている。
・ドルフマンは、臨床ソーシャルワークの16の介入技術「関係構築、イメージ、指示的な影響(アドバイスと教育)、隠喩(比喩)・逸話(エピソード)・寓話(例えば話)、自己開示、調査分析、解釈、契約、ロールプレイング、明確化、モデリング、支持療法、受容、感情の解放、ケース情報の図表による表現、読書療法」を挙げている。

*基本的コンピテンシー・モデル(アンダーソン
・アンダーソンの基本的コンピテンシー・モデルは、ソーシャルワーク過程展開に必要な前提条件となる実践能力と、基本的実践能力から構成される。
・これらのコンピテンシーは、介入の各段階で活用される。
<前提となる実践能力>
「人と環境の相互作用の生態学的視座をすべての直接サービスの実践状況に適用する能力」、「自己覚知をすべての対人サービスの状況において専門職として自己を用いるべく利用する能力」。
<基本的実践能力>
・生活状況と援助状況の波長合わせ能力
・クライエント主体の援助関係確立能力
・ソーシャルワーク過程開始能力
・ソーシャルワーク過程持続能力:以下の七つの技能
①セッションの波長合わせと契約:クライエントと解決すべき事柄について意見の一致を生み出す。
②精査と明確化:クライエントの現実を理解して、評価を続け、サービス計画を立てるために明確化する
③共感:クライエントの感情の分別し、感情がクライエントにとってもつ意味に積極的に反応する。
④自分の感情を共有すること:介入に関連づけて自分自身の感情を純粋に表現する。
⑤積極性を要望すること:過程の目的がクライエントの活動であることを確認する。
⑥情報の提供:関連するデータをはっきりと示す。
⑦実践理論の活用
・クライエント・システムと資源システムとの権利擁護・調整活動能力:二つの技能
①連携:クライエントとフォーマル資源、インフォーマル資源の人々とを連携する。
②権利擁護:クライエントのニーズや権利を積極的に守る。

5 介入の技法 テキストP213
・コンプトン(B.R.Compton)らの介入技法の提示
1)資源を確保する(資源の提供、直接介入を図る、組織化が含まれる)
2)自己覚知を高める
3)社会的技能を強化する
4)情報にアクセスする
5)意思決定を促進する
6)意味を探索すること

・ミルンの「社会的支援介入」
1)ネットワークの分析
2)支援観察システムを作動させる
3)社会的支援の相互作用分析を行うこと
4)関係質問紙を作成する
5)社会的支援のクラスターに留意する
6)日常会話の機能を果たす
7)社会階級と交互作用ストレスモデルのパス解析を試みる
8)ソーシャルワーカーを援助する介入を行う
9)遠隔的介入の役割を果たす
10)当事者との協働フローチャートを作成する
11)専門的活動の変化促進を図る
12)ワークシステム開発の支援システムを作動させる
13)EBP促進のガイドラインを提示する などをあげている。

6 介入の留意点 テキストP213
①ガンブリルの「クリティカル・シンカー」でなければならない。
 柔軟に対応する許容力と、常に根拠を求める姿勢の保持。
 根拠を重視する姿勢は、今日のソーシャルワークの介入に必要なものである。

②根拠に基づく実践=EBP エビデンス・ベースド・プラクティス
・全米ソーシャルワーク教育協議会(CSWE)の2004年10月改正「教育方針と資格基準」(EPAS)の「カリキュラム内容の基本」。
「価値と倫理」「多様性」「リスクを被る集団と社会的・経済的正義」「人間行動と社会環境」「社会福祉政策とサービス」「ソーシャルワーク実践」「調査研究」「現場教育」を把握していること。
「調査研究」において、「量的・質的研究の内容は、実践のための知識を構築するための科学的、分析的、倫理的アプローチの理解を提供する。この内容は、エビデンス・ベースド・インターベンションを含む経験上の基礎を置く知識の開発、利用、効果的なコミュニケーションを行う準備を学生に与える。調査研究の知識は、学生によって高品質のサービスを提供するために利用され、、実践、政策、社会サービスを提供するために利用され、自分自身の実践を評価するために利用される」。

・エビデンス・ベースド・インターベンションは、「根拠に基づく」介入を意味する。効果が実証されている方法・技術を選択し、用いるべきという考え方である。
ソーシャルワーカーは、調査研究の成果を活用し、効果が実証されているものにより、高品質の介入、サービスを試みることが望ましい。

7 計画されたソーシャルアクションとしての実践介入 テキストP214
・ヤングハズバンドは、1973年「ソーシャル・ワークの未来」(講演)において、シーボーム報告を高く評価している。シーボーム報告は、社会的介入の方法を考察している。
・社会的状況のアセスメントとサービス評価の機能、社会計画と社会開発に貢献するソーシャルワークの意義:「未来のソーシャル・サービス部局では、ソーシャル・ワーカーの基本的業務の1つは広範な社会的状況の評定、つまり、危機に直面している特定の階層が、危機的状況に放置されているのか、長期にわたる援助を必要としているのか、それに対応するコミュニティの資質などを評価することになるだろう。あるいは、社会全体の対策が変化すべき傾向、つまり、片親の家庭、病弱老人、移民、青少年に必要な多様なサービスを評価することになるだろう。」
・未来の専門性には、効果的な介入手法とターゲットとなる層に関する知識と技法が必要となる:「未来の専門性は、効果的なソーシャル・ワーク介入手法と、特定の階層や境遇に関連した多様な知識と技法、この両方が必要になると思う。この専門性とは社会科学と行動科学に関する知識の増加に補強され、ソーシャル・ワーカーの研究、記録、実践から示唆されながら自己の技法を発展させる諸条件の整備と相まって、サービスを提供する体験から派生してくる」
・「未来のソーシャル・ワークは、内面的世界の体験から大規模な社会評定、社会計画、社会変動をもたらし、それらを制御できるように計画されたソーシャル・アクションに到達できるような調整機能をもたねばならないように思われる」。
・「ソーシャル・サービス部局にクライエントやクライエントだった人をワーカーとして活用する新しい実験」。


社会福祉士受験支援講座・教員日記 : 相談援助の理論と方法 前期第8回講義レジュメ前半6/2 資源開発・ソーシャルアクション 社会福祉士養成科
6章4節 予防的対応とサービス開発
1 個別援助から地域支援へ テキストP143から
社会福祉士受験支援講座・教員日記 : 相談援助の理論と方法 前期第8回講義レジュメ後半6/2 アウトリーチとは 社会福祉士養成科
1 アウトリーチの必要性 テキストP151


日本福祉教育専門学校 社会福祉士養成学科・養成科
社会福祉士及び介護福祉士法


*続き・用語解説は下記をクリック



<アプローチの例>
*診断主義アプローチ
 1920年代,特にフロイトの精神分析の影響を受けて発展したケースワークの体系。心理社会的アプローチとして継承されている。
*心理社会的アプローチ
クライエントの環境面と内面・心理面の相互作用を認識すること,さらにクライエントに対する直接的な働きかけと同じく,環境への間接的な働きかけや調整の重要性も強調した。
クライエントの心理面と状況の理解が重視される。

*機能主義アプローチ
・1930年代に登場した、O.ランクの流れをくむケースワークであり、機関・施設の機能を重視した。ケースワークの役割は,クライエントの成長しようとする自由な意思を邪魔する障害を取り除くことであるとした。援助のプロセスは,初期・中期・終期という捉え方をし,クライエントとの出会いの瞬間から治療的関わりが始まっていると考えた。援助関係は,ワーカーが勤務する機関の機能によって影響されるとし,機関の機能を重んじたところから,機能主義アプローチとよばれた。

*危機介入アプローチ。
・危機状況の打開に特化したアプローチ。危機状態にある対象者(個人, 集団, 組織, 地域など)に対して,その状態からできるだけ早く脱出することを目的に迅速かつ直接的に行われる援助。危機介入の適応範囲は非常に広く,災害から死別にいたるまで,あらゆる危機的事態に直面する人々の支援に用いられている。

*問題解決アプローチ
・パールマンは,クライエントの問題解決能力を重視し、問題解決を志向したプロセスを「専門的ヘルパー」としてのケースワーカーとクライエントがともに行う一連の問題解決作業であるとした。パールマンは,こうしたプロセスにおけるケースワーカーの役割は,クライエントへの問題解決の動機づけと,問題解決するための技術を身につけるようにすること,そして,身につけた技術を実際に使う機会を提供することであるとしている。

*課題中心アプローチ:介入期間を区切り、当面の課題を解決する
・利用者の問題を、利用者が解決しなければならない課題として取り上げ、いかにその課題を解決するかについて、利用者と援助者が協力して解決しやすい方法を検討し、計画を立て、実行していく方法。具体的な作業計画の策定、実行、評価を通じて、短期間内で問題の解決を図る。課題の達成状況に焦点が当てられ、ワーカーはクライエントが実行可能な課題の設定やその達成に向けての作業に対して援助を行う。

*家族療法アプローチ
・家族内に問題があると利用者が意識するか,援助者が家族で問題を解決するのが効果的であると判断した場合に開始される、家族に介入する援助方法。

<用語解説>
*読書療法 Bibliotherapy
・治療として、書籍や詩等に書かれた内容と、個人との関係を扱う治療法である。また、読書療法は、治療法を記述することとも兼ねられている。

*問題解決アプローチ problem-solving approach
 問題解決を提唱したパールマンは,人が生きることあるいは社会的に機能すること(social functioning)は問題解決のプロセスであると考え,自我機能としての問題解決能力を重視した。ケースワークとは,問題(problem)をもつ人(person)がある場所(place)すなわち福祉機関を訪れ,その場所において,そこを代表する専門職(ケースワーカー)が一定のプロセス(process)を通して問題を抱える人を援助することであるとした。このようにケースワークの核となる要素としての「四つのP」を明らかにした。なかでも4番目のPであるプロセスを重視した。それは,専門的ヘルパーとしてのケースワーカーとクライエントとがやりとりしながら前進するプロセスであり,ワーカーとクライエントがともに行う一連の問題解決作業であるとした。パールマンは,こうしたプロセスにおけるケースワーカーの役割は,クライエントが問題解決をしてみようと思えるように動機づけること,問題解決するための技術を身につけるようにすること,そして,身につけた技術を実際に使う機会を提供することであるとしている。自我の問題解決能力を高めることを重視するところは,今日のエンパワーメントの理念に通じるところがある。

*認知行動療法 cognitive behavior therapy
 クライエントの不適応の問題には,個人の予測や判断といった考え方(認知)の問題が関連していることが多い。そこで,この治療方法は,問題となる認知的要因を積極的に治療目標として取り上げ,それらを適切な認知へと変容させ,同時に適切な行動を学習させていくのである。対人恐怖症のクライエントは,相手が自分を嫌っていると思い込んでいるときがある。この場合,このクライエントの「相手が自分を嫌がっているに違いない」といった認知を修正することにより,対人恐怖の行動変容を目標とするのである。

*シーボーム報告 
Report of the Committee on Local Authority and Allied Personal Social Services
 1968年にイギリス政府に提出された公式報告書。フレデリック・シーボーム(Seebohm, F.)を委員長とする10名の委員によって委員会が構成され,地方自治体の対人福祉サービスの組織と責任についての再検討,および家族サービス活動の効果的な実施を保障する改革案の考察を目的とした。地方自治体において別々に運営されていた対人福祉サービス部門を単一の部局に統合し,ニーズに総合的に対応するソーシャルワーカーを配置することなどを提言している。


*配布資料関連
<精神科デイケアの課題

・生活支援・健康管理 -孤独死問題、単身であること-
・居場所・繋がり-孤立、メンバーの差異、若年利用者の将来-
反面、利用者のストレングス -自立生活-
・仕事の創出
・高齢化と介護  ・看取りと供養

1 ことぶき共同診療所・精神科デイケアの概要
 医療法人・ことぶき共同診療所は、横浜市の簡易宿泊所街「寿町」の、精神科・内科・整形外科等の医療機関である。ことぶき共同診療所に通院する殆どの人々が地域内の簡易宿泊所に居住し生活保護を受給している。通院患者の疾患はアルコール依存症が最多であり、次いで統合失調症、気分障害、薬物精神病が多い(田中 2004)。
 1999年、診療所に精神科デイケアを併設し、現在に至っている。利用者のほぼ全員が、寿町地域内の簡易宿泊所にて生活保護を受給する、単身の精神疾患・障害をもつ人々である。
 オープンから今日に至るまで、デイケアでは、共同調理と会食、各種の創作・レクリエーション・園芸作業等のプログラムを行なっている。他、利用者の仕事づくり等のために、簡易宿泊所の引越し等の請負作業を行なっていたが、この事業はNPO・寿クリーンセンターとして独立した。
 これまでのデイケアにおける実践の成果としては、統合失調症で簡易宿泊所に閉じこもっていた利用者が、デイケアに欠かさず通所し生活も安定した事例や、アルコール依存症から回復した事例等が挙げられる。反面、毎日通所していたが自室で孤独死を迎えた利用者も少なくない。

2 精神科デイケア開設時からの課題
 精神科デイケアの開設時からの課題とは、精神障害者の環境が、簡易宿泊所の3畳程の居室で、睡眠、食事も含めた生活のほぼ全ての時間を過ごし、就労の機会や趣味もほとんど無く、親密な関係性・つながりも希薄であるという現状である。生活保護によって、生活の経済・物質的側面は保障されてはいるが、それのみでは生活の質(QOL)を保つことが難しいと考えられる。
 これらを踏まえつつ、精神科デイケアが開設された。デイケアは精神疾患・障害の精神科リハビリテーションの一環であり、また障害により食生活や入浴等がままならぬ利用者の生活支援でもある。加えて、生きがい、居場所、繋がりといったものを、利用者たちと共につくり出していくこと等を目指している。現在も、継続中の課題である。

3 精神科デイケアの経緯
*第一期 開始期 1999年5月~2002年7月
デイケアはその試行期間から、利用者5人程と、常勤職員とアルバイトの計2名という時期が続いた。当初は、メンバーと共に備品の整備、近隣の吉浜町公園の緑化(園芸)などを行った。季節ごとの稲子での農業(田植え、稲刈り等)、99年12月には造形と書道の定例プログラムが開始された。以降、基盤が形成、定着した時期と言えよう。
その基盤とは、午前の共同調理と会食、午後の各種の創作・レクリエーション・園芸作業等のプログラムという、現在に引き継がれているデイケアの日課である。

*第二期 発展期 2002年8月~2006年2月
02年8月以降、音楽など、外部からの講師によるプログラムも充実した。他、エアロビクス、ヨガ、茶道、プレイバック・シアターである。また、02年9月に、現在の開設時間に移行している。

*第三期 考察期 2006年3月~現在
メンバー有志による地域内の引越し、清掃などの請負作業の開始、これらの事業化=クリーンセンターの独立が特徴である。地域内で利用者の仕事、働く場を創ることができるのかも、不変のテーマの一つである。

 この10年間、寿町においては、高齢者のためのデイサービス等の、居場所としての取り組みが、当院デイケアの他にも、開始されている。今後、粘り強くデイケアを続けつつ、新たなものを取り入れ、他の取り組みとも経験を共有していくことが求められているのかもしれない。未だ、他の簡易宿泊所街においても、精神科デイケアの実践例は、多くはない。課題は山積しているが、人々の支え合い、繋がり、生き易さをつくっていくためにも、必要ではないかと考えている。
by yrx04167 | 2011-06-24 15:47 | Comments(0)