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社会調査の基礎 第10回講義レジュメ前半 社会福祉調査の倫理、バンドワゴン効果、アンダードッグ効果とは

社会調査の基礎 第10回講義レジュメ<前半> 2011/07/01 3時限
ソーシャルケア学科 にて講義


3 社会調査の倫理 テキストP18
A 学問としての倫理
・ショアーによる、研究における七つの不正 P18
①盗用
②捏造
③データの非公開
④データ収集時の非倫理行為
⑤データ管理の倫理的配慮
⑥研究の公表に関する倫理的配慮
⑦著作権に関する倫理的問題

B 社会調査に特有な倫理 P20
①被調査者への配慮

②調査に関するインフォームドコンセント・コンセントとその手順

③調査における秘密保持とその手順


*解説:社会調査における倫理事項
①調査参加者の自発的参加

・対象者・参加者の自由意志による参加、拒否の自由、調査拒否による不利益を蒙らないことを保障する。
・調査は、人びとに負担、面倒をかけ、時間を取るものである。だからこそ、調査への参加協力は自発的なものであるべき。また、調査する側は、調査に協力してくれた人びとに、常に感謝の気持ちを持つべきである。また、調査結果から対象者に何を反映・返すことができるかを考える。
・調査する人と調査をされる人は、対等な関係でなければならない。

②インフォームド・コンセント
・調査においても、対象者・参加者に対する、インフォームド・コンセント=説明のうえでの同意が必要である。
具体的には、調査の目的、期間、参加の拒否・キャンセル可能がであり、不利益を蒙らないことを明記、秘密保持とその手段、調査の有益性、調査実施者等を、文書(可能な場合は加えて口頭で)説明し、同意・署名を得る。

③匿名と秘密保持
 社会問題や、社会福祉の課題について調査を行なうが、実際は、個人を対象に調査を実施する。
 調査は、常に個人のプライバシーや人権の侵害の危険性を内包している。
 調査で調べたい内容には、収入や(場合によっては)犯罪歴等を含む生活史等、守秘を必要とする事柄を含むことも多い。スティグマの問題がある場合もみられる。
・調査員・スタッフの守秘義務の徹底、②重要情報へのアクセス制限、③個人情報の保管体制、④記入済みの調査票の対象者氏名をID番号に置き換え、⑤対象者名簿の保管、
⑥調査報告書の匿名性。
・参考として、ソーシャルワーカーの倫理綱領の秘密保持等。

④結果分析と報告

 分析した結果により、現実を誤認する危険性がある。また、結果とその報告の一人歩きの危険性もある。具体的には、偏ったデータばかり集めた。質問の仕方が不適切だった。都合の良いデータの解釈をしてしまった。
 社会調査で明らかになった事実が、現実そのものとはかぎらない。現実の一側面にすぎない。

C 社会福祉の調査に特有の倫理 P23
*前提となるソーシャルワークの倫理・日本ソーシャルワーカー協会倫理綱領

・日本においては「ソーシャルワーカーの倫理綱領」が1986年に日本ソーシャルワーカー協会が宣言した。段階的な改訂の後、2005年に最終案が取りまとめられ、国内の各専門職団体が承認し採択している。
 倫理綱領はソーシャルワーク専門職として、望ましい価値態度,日常行動における倫理的行動規範、義務の指針を明文化したものである。行動の指針であるが、個別的・具体的場面でとるべき行動を詳細に規定した「マニュアル」ではない。その基準は,平和擁護,個人の尊厳,民主主義にあり,ソーシャルワーカーの行動が基準から逸脱しないよう,倫理上の諸問題に対し,専門職団体が定めた行動の準則である。
・専門職は、クライエントがもたない高度な知識や技術をもっていることや、クライエントの個人情報を知り得る立場にあることなどから、クライエントより有利な立場に立ちやすい。こうした立場を利用した権利侵害を自己規制することが、専門職団体の倫理綱領の存在理由の一つである。また倫理綱領は、福祉専門職としての行動について、クライエントに対してはもちろん、他の専門職や一般社会に対しても誓約したものである。

*ソーシャルワーカーの倫理綱領(抜粋)価値と原則 
・人間の尊厳:ソーシャルワーカーは、すべての人間を、出自、人種、性別、年齢、身体的精神的状況、宗教的文化的背景、社会的地位、経済状況等の違いにかかわらず、かけがえのない存在として尊重する。
・社会正義の実現:ソーシャルワーカーは、差別、貧困、抑圧、排除、暴力、環境破壊などの無い、自由、平等、共生に基づく社会正義の実現をめざす。
ソーシャルワーカーは、人間の尊厳の尊重と社会正義の実現に貢献する。

倫理基準 利用者に対する倫理責任
・利用者の利益の最優先:ソーシャルワーカーは、業務の遂行に際して、利用者の利益を最優先に考える。
・説明責任:ソーシャルワーカーは、利用者に必要な情報を適切な方法・わかりやすい表現を用いて提供し、利用者の意思を確認する。
・利用者の自己決定の尊重:ソーシャルワーカーは、利用者の自己決定を尊重し、利用者がその権利を十分に理解し、活用していけるように援助する。
・プライバシーの尊重:ソーシャルワーカーは、利用者のプライバシーを最大限に尊重し、関係者から情報を得る場合、その利用者から同意を得る。
・秘密の保持ソーシャルワーカーは、利用者や関係者から情報を得る場合、業務上必要な範囲にとどめ、その秘密を保持する。秘密の保持は、業務を退いた後も同様とする。
・情報の共有:ソーシャルワーカーは、利用者の援助のために利用者に関する情報を関係機関・関係職員と共有する場合、その秘密を保持するよう最善の方策を用いる。
・権利侵害の防止:ソーシャルワーカーは、利用者を擁護し、あらゆる権利侵害の発生を防止する。
社会に対する倫理責任
・ソーシャル・インクルージョン:ソーシャルワーカーは、人々をあらゆる差別、貧困、抑圧、排除、暴力、環境破壊などから守り、包含的な社会を目指すよう努める。
・社会への働きかけ:ソーシャルワーカーは、社会に見られる不正義の改善と利用者の問題解決のため、利用者や他の専門職等と連帯し、効果的な方法により社会に働きかける。


*補足:社会調査の利点と欠点
<社会調査を実施することによる利点

・結果を活用し、効果的な意思決定、方針や計画の立案ができる。
・現在や将来の状況を把握し、それを望ましい方向へコントロールできる
・国家や自治体の政策と計画の立案・決定や、法人・組織・施設の方針・計画の作成など、調査により現実世界を知らないと、効果的な意思決定ができない。
・専門職、当事者、市民の認識の幅を広げ、慣習や常識などを打ち破る。実際に調べてみたら、常識とは違った調査結果が得られることも多く、視野が広がる。

<欠点>
*調査による現実の操

 ①「予言の自己成就」現象
   銀行の調査が、銀行を倒産させる?
 ②アナウンスメント効果──例:選挙予測の調査
・バンドワゴン効果:「勝ち馬に乗る」心理。ある候補者が優勢という調査結果に
 よって、人びとが有利な候補者に投票する。
・アンダードッグ効果:「判官びいき」心理。劣勢と伝えられる候補者に票が集まる

*レジュメ後半に続く

社会福祉士受験支援講座・教員日記 : 社会調査の基礎 第6回講義レジュメ・前半6/3 実験、EBP、独立変数、従属変数とは ソーシャルケア学科
<実験・効果測定 1>
1 実験、効果測定の考え方
社会福祉士受験支援講座・教員日記 : 社会調査の基礎 第6回講義レジュメ・後半6/3 単一事例実験計画法とは ソーシャルケア学科
<実験・効果測定 1・続き>
*概要:単一事例実験計画法(シングル・システム・デザイン)
社会福祉士受験支援講座・教員日記 : 社会調査の基礎 第6回講義練習問題6/3 グラウンデッド・セオリーとは ソーシャルケア学科


日本福祉教育専門学校 社会福祉士養成学科・養成科
*日本福祉教育専門学校 社会福祉士養成学科は、4年制大学卒業(見込)等の方々が対象の、1年制の社会福祉士の養成コースの昼間部です
 社会福祉士養成科は、4年制大学卒業(見込)等の方々が対象の、1年制の社会福祉士の養成コースの夜間部(2コース)です

社会福祉士及び介護福祉士法
by yrx04167 | 2011-07-04 08:23 | Comments(0)