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相談援助の理論と方法 第19回講義レジュメ4 ケース・ケアマネジメントの定義 社会福祉士養成科夜間8/25

相談援助の理論と方法 第19回講義レジュメ4 2011/08/25 6・7時限
社会福祉士養成科(夜間部トワイライトコース) 担当:当ブログ筆者

2章1節 ケース(ケア)マネジメントの基
○ケースマネジメントとは、高齢者福祉領域のみの援助技術ではなく、まして介護保険制度でのみ活用される援助技術でもない。
 ケースマネジメントは、障害者福祉でも用いられ、児童福祉等でも必要とされている。

*概要:ケース(ケア)マネジメント
 ケアマネジメントは,複数のニーズをもった利用者およびその家族を中心としたサービス提供のアプローチであり,地域に散在し,連携・調整機能を基本的にもたない縦割り的な社会資源を,ネットワーク化することによりケアの統合と継続性を達成する方法である。 (後述)

1 ケースマネジメントの目的 テキストⅡP22
<補足>
*"ケア"の概

*ケアという言葉が狭く用いられているときの使い方は,一般的には身辺介護という意味。
*ケアを広くとらえて用いる場合は,日常生活の維持に支援を要する人が安定した日常生活を維持できるようにするための包括的なケアを意味。
*ケアマネジメントの"ケア"は当然のことながら広義のケアのこと。

*ケースマネジメントの定義
1)白澤政和による定

「対象者の社会生活上での複数のニーズを充足させるため適切な社会資源と結びつける手続きの総体」。

2)D.P.マクスリーによる定義 
「ケースマネジメントは,対人サービスや機会や給付の調整を促進するための,利用者の立場に立つ方法である,と定義できる。ケースマネジメントの主要な効果は,(1)機関の範囲を超えたサービスを統合すること(Goldstein,1981)と,(2)ケアの継続性を達成すること(Johnson&Rubin,1983)である」。

①『利用者の立場(client-level)』…ケースマネジャーが特定の個人や集団のために働く
②『サービスの調整(coordination of services)』…ひとそろいの援助(package)を求めて,各種のサービスや各機関を動員する
③『統合(integration)』…異なった組織の後援のもとで提供された諸サービスが利用可能にまとまるよう,ケースマネジャーが実現に努める
④『ケアの継続性(continuity of care)』…機関を超えることと一貫性という2つの側面
*『機関を超える(cross-Sectional)』ケアの継続性…その人の処遇のいかなる時点においても,その人のニーズにあった包括的なケア体制の中に,その人をおくこと。
*『一貫性のある(longitudinal)』ケアの継続性…その人のニーズの充足が時間的に継続することを意味。

⇒ケースマネジメントとは力動的な戦略
 短期的:各分野の組織的な複合体の中で,利用者の一連のニーズを見定めて充足することに焦点をあてる
 長期的:利用者が成長し発展して,新しい挑戦を体験することで,変化して浮かびあがるニーズに応える

3)橋本泰子による定義
「ケアマネジメントとは,複合的なサービスニーズをもつ利用者が,安全で安定した自分らしい日常生活を自宅で長期的に維持できるよう,利用者一人ひとりのためのケア態勢をマネジメントする地域ケアの技術である」。

■ケア・パッケージ
・在宅サービスおよびインフォーマルな支援の総体をケアと捉えて,利用者の個別性に合わせて適切なサービスや支援を一揃いのパッケージとして組み合わせること。 (後述)

<ケースマネジメントの歴史:登場の背景
・アメリカ合衆国…1970年代の半ば,精神障害者が病院を退院し,地域での生活に移行していくための援助の技術として開発。
 野中猛:「アメリカ合衆国における精神保健領域のケースマネジメント実践は,1975年に国立精神保健研究所の活動として始まり,1978年に報告されている」。

・イギリス…1989年に発表されたコミュニティケアに関する政府白書に基づいて,翌年制定された「国民保健サービス及びコミュニティケア法」によって、ケアマネジメントが制度化された。

*日
・1984(昭和59)年:「ケースマネージメント」がわが国の公の文書に登場
 クォリティ・オブ・ライフ(Quality of Life)の理念 高齢者の在宅ケアを推進する政策が展開
*ケースマネージメントがケアマネジメントに置き換えられる契機をつくったのは,1994(平成6)年12月に発表された高齢者介護・自立支援システム研究会の報告書「新たな高齢者介護システムの構築を目指して」

■高齢者介護・自立支援システム研究会とは、1994年に厚生省(当時)は高齢者介護対策本部を設置,7月からは,新たな高齢者介護システムを検討する有識者による研究会として発足させたもの。この研究会は,同年12月に「新たな高齢者介護システムの構築を目指して」と題する報告書をとりまとめた。
(後述)

・1990(平成2)年:在宅介護支援センターの創設
 ⇒老人福祉法において,老人介護支援センターの名称で、老人福祉施設の一つとして法定化

*ケアマネジメントは在宅ケアの推進に必要な援助技術として登場した。

○背景:複合的サービスニーズをもつ人の多
・高齢者支援の領域から、ケア(ケース)マネジメントが導入されていった。
 →安定した日常生活を営むうえでの支障が,多面的に,重層的に生じている高齢者が急激に増加した。
 病気の後遺症とともに長生きすることになったり,慢性疾患をもって長生きする人も増えている。
・後遺症や慢性疾患のある人々が,安全で安定した質の高い日常生活を,自宅で維持
 →生活費の保障,基本的生活欲求の充足,心身の健康と疾病の管理,心身機能の維持・改善,福祉用具の活用,安全な生活空間の確保,円満な人間関係の維持,社会的交流の促進等への配慮などが必要である。
 こうしたニーズは,一人の高齢者のうえに多面的に重層的に,所得階層に関係なく発生する。
・一人ひとりの高齢者のうえに複合的に発生しているニーズを解決するためには、必要な各種のサービスを有効適切に活用するための調整が不可欠である。
<テキスト解説>
*コミュニティケアの推進
・ケア(ケース)マネジメントという援助方法の活用は,地域ケアを推進しようとする流れのなかで進められてきた。

*社会的入
 積極的な医学的治療は要しないが,介護等の受け皿がないために在院が継続するものをよぶ。
(後述)

○地域ケア(コミュニティ・ケア community care )
・長期ケアを必要とする障害者や高齢者等が,在宅や施設でサービスを利用しながら,その人らしい地域生活を実現できるように支援するサービス,政策を示す概念である。
(後述)

*生活の支援 テキストP22
・ケースマネジメントは、地域生活、コミュニティケアの継続を可能にする支援である。
・地域の多機関の多職種による支援者チームが効果的に機能することによって,サービス利用者の在宅生活は可能となり,より自分らしい生活の継続が可能となる。
利用者に関わるすべての支援者が情報を共有し,ニーズを明らかにするための事前評価(アセスメント)をともに行い,問題解決の方針と支援計画(ケアプラン)をともに作成し,計画のなかに明記された役割を各機関の各専門職等が責任をもって遂行するという"協働"の技術でもある。
・ケアマネジャーは,支援者チームのコーディネーターとして、役割を果たす。

*QOLの向上 テキストP23
・少子化・長寿化が進行する社会においては,多くの人々が社会的支援を必要とする。
・生命の長さだけではなく,生命の質(生活の質)を求めるようにもなった。
 ⇒価値観やライフスタイルの違う一人ひとりのその生活全般に対して必要な社会的支援が期待される。
・従来のように医療職は生命と心身の機能に関わる側面を,福祉職は生活に関わる側面を,それぞれの職能による専門的判断と技術によって個々にサービスを提供していては、混乱や無駄が生ずる。
⇒ニーズの包括的把握とサービスの一体的提供が求められる

*コストのコントロール
・ケースマネジメントは、二次的にコスト面を抑制することに貢献している。

*レジュメ5に続く

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*用語解説は下記をクリック  ケア・パッケージ、高齢者介護・自立支援システム研究会、社会的入院、脱施設化、地域ケア・コミュニティ・ケアなど



*概要:ケース(ケア)マネジメント
 ケアマネジメントは,複数のニーズをもった利用者およびその家族を中心としたサービス提供のアプローチであり,地域に散在し,連携・調整機能を基本的にもたない縦割り的な社会資源を,ネットワーク化することによりケアの統合と継続性を達成する方法である。
 また,社会資源として,行政機関などによるフォーマルなサービスだけでなく,家族,親戚,友人,同僚,近隣,ボランティアなどのインフォーマルな資源も積極的に取り入れる。
さらに,ケアマネジメントでは,利用者の自立支援および自己決定という理念のもと,利用者自身がもつ能力や資産などの内的資源を最大限に活用することが求められる。
 社会資源を活用し,ケアサービス利用者が適切なケアを必要なときに必要なだけ受けられることにより,安定した状態で生活することが可能となると同時に,サービスの効率的提供が可能となる。
 サービスを実施する保健・医療・福祉などの専門職者およびインフォーマルな支援者の集団がチームとして機能するために,その連絡・調整の中心にケアマネジャーがおかれる。
 利用者および家族は,サービス提供組織と個別に交渉する必要がなく,ケアマネジャーという窓口を活用することで必要なサービスを適切に受けることが可能となる。

■ケア・パッケージ
・在宅サービスおよびインフォーマルな支援の総体をケアと捉えて,利用者の個別性に合わせて適切なサービスや支援を一揃いのパッケージとして組み合わせること。利用者には生活上のニーズが複数あり,それを充足する社会資源は地域に散在しているため,問題を単独のニーズとして捉えて対応する方法では,提供者ごとに散発的に行われるサービスになりやすい。ケアマネジメントでは,在宅ケアの効果と効率を高めるため,パッケージ化したサービスを計画的に提供する。

■高齢者介護・自立支援システム研究会
 1994年に厚生省(当時)は高齢者介護対策本部を設置,7月からは,新たな高齢者介護システムを検討する有識者による研究会として発足させたもの。この研究会は,同年12月に「新たな高齢者介護システムの構築を目指して」と題する報告書をとりまとめた。
この報告書では,高齢者の介護の基本理念として「高齢者の自立支援」を掲げ,高齢者自身による選択,社会連帯による支え合い等を基本的な考えとした。また,介護費用を賄うシステムとして,税による公費方式より社会保険方式が適切であるという見解を示した。この報告書は,介護保険論議の出発点となった。

*社会的入院
 積極的な医学的治療は要しないが,介護等の受け皿がないために在院が継続するものをよぶ。長期療養の必要な慢性疾患が増えたことだけでなく,家族形態や就業状況の変化が背景にあるとされる。主として老人や精神障害者で問題になるが,老人の場合には介護保険制度の導入の目的の一つが,この解消にあるとされた。精神障害では社会資源の整備などが求められ,諸調査では1~2年以上の在院の30%前後に相当するとされている。

*脱施設化
 管理的で閉鎖的な入所型大規模障害者施設の問題を解決するために,施設入所者を地域ケアに移行するとともに,施設入所の可能性がある人たちの不必要な入所を防止し,同時に「施設化」されてない人たちには質の高い地域ケアを実現する取組みおよびその理念をいう。欧米諸国では,1950年代より精神障害者と知的障害者の施設で施設症とよばれる施設ケアの弊害が批判され,各政府により脱施設化の方針がだされた。脱施設化は,同時にノーマライゼーションと地域ケアの実践や理念と連動する。施設ケアに比べて,より人道的でより効果的・治療的な,質の高いサービスを地域において提供することがめざされた。特に重い障害をもつ人たちには,居住サービスとして小規模で家庭的な環境のグループホームが用意され,また多様な地域ケアサービスを包括的・継続的に提供するケアマネジメントが導入された。日本では,知的障害者の入所施設数が増加し,精神病院の長期入院者問題が未解決のままである。脱施設化がこれから社会の課題になるべき段階にあるといえよう。

○地域ケア(コミュニティ・ケア community care )
・長期ケアを必要とする障害者や高齢者等が,在宅や施設でサービスを利用しながら,その人らしい地域生活を実現できるように支援するサービス,政策を示す概念である。イギリスにおいて,1957年の王立委員会報告書のなかで最初に用いられたことばである。
1960年代後半に日本に紹介され,その後,理論的にも実践的にも深められて,地域福祉の概念形成に大きな影響を与えた。最初にこのことばが公の文書に用いられたのは,1969年の東京都社会福祉審議会答申「東京都におけるコミュニティケアの進展について」である。コミュニティ・ケアを「コミュニティにおいて在宅の対象者に対し,そのコミュニティにおける社会福祉機関・施設により,社会福祉に関心をもつ地域住民の参加を得て行われる社会福祉の方法である」とした。また,1971年の中央社会福祉審議会答申「コミュニティ形成と社会福祉」では,「社会福祉の対象を収容施設において保護するだけでなく地域社会すなわち居宅において保護を行い,その対象者の能力のいっそうの維持発展を図ろうとするものである」とした。
当初は,病院や施設から退院(所)させ地域で生活を支援するという意味で用いられ,施設ケアと在宅ケアを対立して捉える考え方,あるいは「施設ケアも在宅ケアも」という並立的な考え方がみられた。最近は,居宅訪問サービスだけでなくグループホームやケア付き住宅などの在宅ケアを充実させながら,施設の役割を見直し,大規模収容施設ではなく小規模施設へ,また住宅化の方向が模索されている。同時に,地域住民の連帯を強め地域社会の一員としての生活を実現するものであると捉えられるようになってきた。
by yrx04167 | 2011-09-01 09:36 | Comments(0)