相談援助の理論と方法 第21回講義レジュメ2 グループワークの定義、発達史、デューイ進歩主義教育学とは

相談援助の理論と方法 第21回講義レジュメ2 2011/09/08 6・7時限
日本福祉教育専門学校 社会福祉士養成科(夜間部トワイライトコース) 担当:当ブログ筆者

3章1節 グループを活用した相談援助・続き
2 グループワークの意義 テキストP56
<補足:グループワークの発展の経緯

・グループワーク実践は、セツルメント運動、青少年団体運動、成人教育運動、公共のレクレーション運動に伴って普及した。

*1844年、YMCA(Young Men's Christian Associationキリスト教青年会)が、ジョージ・ウイリアムズらによって、ロンドンで創立
・祈祷会・聖書研究会を目的に設立。
①貧困な青年たちにクラブ・レクレーション活動を通じて生活技術と精神面の指導を図る
②人格的な交流を基礎とした社会教育活動。グループによる聖書研究。
③健康で人間らしい生活の権利への意識を高める活動
 なお現在YMCAは、青少年活動の支援などを行なうキリスト教の組織として、120以上の国で活動している。

*1855年、YWCA(Young Women's Christian Associationキリスト教女子青年会)
 同じくイギリスで設立された。現在はキリスト教の女性団体の一つである。

(1869年、慈善組織協会(COS:Charity Organization Society)の結成 ⇒ 友愛訪問等の活動が、ケースワークなどの源流となった)

*エドワード・デニソンがセツルメントの嚆矢となった(1867年に移住)

*1884年、セツルメントハウス「トインビー・ホール」をロンドン東部に創設(バーネット)。
 夫のサミュエル・バーネットは,1872年に司祭となり,貧困者救済委員会ホワイトチャペル地区委員として,貧困地域の救済活動に従事した。
 1884年,妻ヘンリエッタとともに,オックスフォード大学の学生および教授に協力をよびかけ,世界最初のセツルメント・ハウス,トインビー・ホールを創設。サミュエルは,その初代館長となった。若き経済史学者トインビーを記念して名づけた。
(トインビー・ホールにおけるグループ活動については、添付資料を参照)

*セツルメント
 セツルメントとは「殖民、住み込む」を意味し,貧困に苦しむ労働者居住地区に、教養と人格を兼備する知識人(当時の大学生など)などが「住み込む」活動である。「レジデント」が住み込み、住民・労働者と知的及び人格的接触を通じて、福祉の向上を図る地域活動である。
 続きは後述。

*解説:社会改
 社会問題や社会の矛盾を解決するために,急進的な手段で社会体制を変えるのではなく,欠陥を是正し,修正するなどの漸進的な方法で社会を改善しようとすること。
 続きは後述。

*1886年,ニューヨークの「ネイバーフッド・ギルド」の創設がアメリカでのセツルメントの嗜矢となった。

*1889年、「ハル・ハウス(Hull House)」開設、J. アダムスによるシカゴのセツルメント
 開設当初は,博愛主義に基づく穏健な地域活動で,保育園,少年クラブ等の教育的なプログラムが中心であったが,社会改良思想家等が参画して以降,革新的な社会運動的側面を有するようになり,児童労働保護運動,少年裁判所設置,児童相談所の設置等の児童福祉に関連する諸問題に活動の力点をおいた。

◎J.アダムス
 1889年にシカゴ市のスラム街でセツルメント,ハル・ハウスを創設する。その後アメリカでセツルメントを普及させ,社会改良の近代化に貢献した。
 続きは後述。

*1907年、ボーイスカウト設立 
 ベーデン・パウエル(ポウエル)が創始者である。
野外活動、グループ活動による青少年の訓練を実施する団体として発展した。
他にも青少年団体・活動の例として、ボーイズクラブ(1858年)などが創設された。
従来、上流階級の子どものみのものであったキャンプやクリケット等のスポーツの普及に貢献した。

*1923年、アメリカで最初のグループワーク課程が、ウェスタン・リザーブ大学社会事業学校(ソーシャルワーク大学院)に設置され、G.コイルの講義が行なわれた。
 「グループワークの母」とも称されるG.コイルは、YWCAやセツルメントでの実践経験を、J.デューイの進歩主義教育学と結びつけて、グループワークを理論的に体系化した。

1930年以後、ニューディール政策の一環として、青少年の民主主義思想や健全性の育成のため、グループ活動が強化された。

集団援助技術は、理論的には当初J.デューイの進歩主義教育学や、その後に1930年代の実証的グループ・ダイナミックスの影響を受けている
 実証的グループ・ダイナミックスの代表的なものとして、K.レヴィンらのリーダーシップの研究がある。また、人間関係的満足度を高めることが生産性の向上につながること、インフォーマル・グループを明らかにしたG.メイヨーらによる「ホーソン工場実験」や、J.モレノらの「ソシオメトリー」がある。

*用語解説:デューイ 
 アメリカの代表的な哲学者,教育学者。経験主義の教育基盤を築いた。
 続きは後述。

<テキスト解説>
*グループ・ダイナミックス  テキストP56
 
集団の基本的な性質,集団と個人,集団と集団,またはもっと大きな組織と集団との関係についての法則を実証的な方法によって明らかにしようとする社会科学の一分野。集団力学と訳されて使われることも多い。
 また、集団における人々の思考や行動等を研究する学問領域であり、集団的行動がどのように発生するかをテーマとして扱う。クルト・レヴィンが最初にこの語を用いた研究を展開、実験的手法を用いた研究が主流となる。

*解説:インフォーマル・グループ
 1920年代のアメリカでメイヨー(Mayo, G. E.)らのホーソン工場実験のなかで,この小集団の存在と意義が知られるようになった。組織図では見えない自然発生的な非公式的な小集団をいう。
続きは後述。

*用語解説:ソシオメトリー
 モレノ(Moreno, J. L.)によって提唱されたもので,集団のなかにおける人間関係や個人の位置,その心理的特性などを理解していくための技術や理論。
続きは後述。

*グループワークの定
・1935年の全米社会事業会議に、初めて集団援助部門が設置され、W.ニューステッターが集団援助技術の最初の定義を明らかにした。
 ニューステッターによると、「グループワークとは自発的なグループ参加を通して、個人の成長と社会的適応を図る教育的過程である」とされ、これを機にグループワークの帰属をめぐる議論が生じた。

*コイルの定義、トレッカーの定義、AAGWの定義 ⇒ テキストP56参照。

・グループワーク・集団援助技術が、ソーシャルワークの一方法であると公式に定義づけられるには、1946年の同会議におけるG.コイルの報告を待たなければならなかった

*G.コノプカによる、集団援助技術(グループワーク)の定義(再掲)
 「ソーシャル・グループワークとは、ソーシャルワークの一つの方法であり、意図的なグループ経験を通じて、個人の社会的に機能する力を高め、また個人・集団・地域社会の諸問題に、より効果的に対処しうるよう、人々を援助するものである。」

<補足>
*ロスマンとパペルのグループワークの3つのモデル

 「社会的目標モデル」「治療モデル」「相互作用モデル」である
*「社会的目標モデル」とは、伝統的なグループワークの実践モデルである。
・歴史的に,青少年団体,セツルメント,コミュニティセンターで展開されるグループに活用されてきた。
・民主主義社会にふさわしい見識ある市民を育てること,そのためにグループ経験を通じて必要な行動様式を育て強化すること,また社会的責任という価値観を身につけていくことをねらいとする。

*「治療モデル」は、現在では「予防的及びリハビリテーション的モデル」「組織モデル」とも呼ばれている。
・グループに参加する個人の矯正や治療を目的とする。
*身体的・精神的ハンディキャップを負っている人,犯罪加害者,孤立している人や疎外されている人が主な対象者である。
・個人への悪影響や,逸脱行動をとらせたりする有害な状況を防止したり,改善することをねらいとする。
・グループは人為的グループであり,メンバーの変化を焦点とする。各人に設定された支援目標を達成させるために特定のグループ状況をつくり出すための手段とされている。
・R・ヴインター,P・グラッサー,C・ガーヴインが代表的な主唱者である。

*「相互作用モデル」は、方法論統合化の視点から,グループを媒介としながら個人と社会組織が互いの利益のために相互援助システムとして機能することを目的とする。
・メンバーが相互に助け合うことによって共通の課題に取り組むようになる理想的状態,つまり相互援助システムをつくり出すことが目的である。
・コイル,H・フィリップス,W・シュワルツ,L・シュルマンらが主唱者

■用語解説:コノプカ
 ユダヤ系ドイツ人であり、アメリカに亡命後、著名なグループワーク研究者となった。1950~60年代,グループワークの発展に大きな役割を果たした治療的グループワークの代表論者。

*用語解説:シュワルツ 
 1960~70年代にかけてアメリカで発展したグループワーク理論モデルの一つである,「相互作用モデル」を構築した。

*レジュメ3に続く

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*レジュメ続き・用語解説は下記をクリック  セツルメント 、社会改良、J.アダムス、デューイ、インフォーマル・グループ、ソシオメトリー 、コノプカ、シュワルツ 



*セツルメント settlement
 セツルメントとは「殖民、住み込む」を意味し,貧困に苦しむ労働者居住地区に、教養と人格を兼備する知識人(当時の大学生など)などが「住み込む」活動である。「レジデント」が住み込み、住民・労働者と知的及び人格的接触を通じて、福祉の向上を図る地域活動である。
 具体的には、住民・労働者たちと共同で、貧困調査、労働者会議、成人教育、共同保育所、法律・市民相談、学習・レクリエーションのグループ活動といった生活環境の改善など、地域活動と社会改良運動を展開した。
 その理念はエドワード・デニソンによって慈善事業のなかで形成された。知識人が殖民し、スラム住民の教育を通じた人格の回復と、知識人には貧困解決のためにの社会改良の必要性の認識を図るものである。

*解説:社会改良  social reform
 社会問題や社会の矛盾を解決するために,革命という急進的な手段で社会体制を変えるのではなく,欠陥を是正し,修正するなどの漸進的な方法で社会を改善しようとすること。19世紀末から20世紀初頭にかけてのソーシャル・セツルメント運動などが代表であり,教育・宣伝的方法,議会活動などを通して,社会政策や社会福祉政策などに影響を与えることを目的としている。

◎J.アダムス Addams, Jane (1860-1935)
 ロックフォード女学院卒業後,一度医師をめざすが病のため断念し,1889年にシカゴ市のスラム街でセツルメント,ハル・ハウスを創設する。その後アメリカでセツルメントを普及させ,社会改良の近代化に貢献した。1920年代以降は,平和と女性の運動に力を注ぎ,日本を含む世界各国を視察し,女性運動家等に大きな影響を及ぼした。1931年ノーベル平和賞を受ける。[主著] "The Objective Value of a Social Settlement", 1893 ; Twenty Years at Hull-House, 1910

*用語解説:デューイ Dewey, John (1859-1952)
 アメリカの代表的な哲学者,教育学者。経験主義の教育基盤を築いた。子どもは未成熟(発達する力,成長の可能性)であることが大切であるとし,教育による自己更新により社会は存続すると考えた。また真の教育は民主主義社会においてのみ発展するとし,教育と社会の関係を探求した。1896年に妻とシカゴ大学付属小学校である実験学校をつくり、そこでの指導経験をまとめた『学校と社会』(1899年)でまず世に知られることになった。

*解説:インフォーマル・グループ
 1920年代のアメリカでメイヨー(Mayo, G. E.)らのホーソン工場実験のなかで,この小集団の存在と意義が知られるようになった。組織図では見えない自然発生的な非公式的な小集団をいう。フォーマルには組織系統図どおりに人々が配置されていたとしても,人と人とのつながりは現実にはさまざまなインフォーマルな集団となって自然発生的なダイナミズムを組織内にもたらす。これを「フォーマルな組織」(formal organization)に対して「インフォーマル・グループ」という。

*用語解説:ソシオメトリー sociometry
 モレノ(Moreno, J. L.)によって提唱されたもので,集団のなかにおける人間関係や個人の位置,その心理的特性などを理解していくための技術や理論。ソシオメトリック・テストが用いられることが多く,ある集団の個々人の選択・排斥の度合(ソシオマトリックス),それらの選択・排斥関係の図示(ソシオグラム)などから,集団の構造を解明する。

■用語解説:コノプカ(Konopka, Gisela.)
 ユダヤ系ドイツ人であり、アメリカに亡命後、著名なグループワーク研究者となった。1950~60年代,グループワークの発展に大きな役割を果たした治療的グループワークの代表論者であり,収容施設入所者,非行少年,情緒障害児等に対するグループワークに取り組んだ。個人の社会生活上の問題解決を小集団がもつ治療的機能に着目したグループワークの定義や,実践指針となる14のグループワーク原則が有名である。[主著] Social Group Work : A Helping Process, 1963  (前田ケイ訳『ソーシャル・グループ・ワーク ―援助の過程』全国社会福祉協議会, 1967)、  『収容施設におけるグループワーク』(1954年)

*用語解説:シュワルツ Schwartz, William (1916-82)
 1960~70年代にかけてアメリカで発展したグループワーク理論モデルの一つである,「相互作用モデル」を構築した。機能主義学派の流れを汲み,社会システム論やフィールド理論に依拠しながら,「媒介モデル」へと発展させた。ソーシャルワーカーの多様な援助行動を貫く共通の原理と実践技術を追求し,ワーカーの機能を「個人と社会が互いに手を差し伸べる過程を媒介すること」と明示した媒介機能は,グループワークのみならず,ソーシャルワーク全体に多大な影響を与えた。[主著] The Practice of Group Work, 1971 (with Zalba, S. R.).


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by yrx04167 | 2011-09-10 11:25 | Comments(0)