相談援助の理論と方法 第26回講義レジュメ2 行動変容・危機介入・ナラティブモデルとは 社会福祉士養成科

相談援助の理論と方法 第26回講義レジュメ2 2011/10/13 6・7時限
日本福祉教育専門学校 社会福祉士養成科(夜間部トワイライトコース) 担当:当ブログ筆者

6章 さまざまな実践モデルとアプローチ
1節 実践モデルとその意味・続き
*補足:実践モデル 発展の経緯の概

・1960年代後半から1970年代初め頃にかけて,新たなソーシャルワーク実践モデルが形成された。

・伝統的な個別援助技術の流れを発展させた「心理―社会的モデル」「問題解決モデル」

・行動療法を個別援助技術に導入しの「行動主義(行動変容)モデル」
・1970年代前後から,「危機介入モデル」
・W.リードとL.エプスタイン(1972年)の「課題中心モデル」
・「生活モデル」の理論化

◆これらの実践モデルに共通する特徴
①利用者の環境を欠くことのできない焦点として見直

・心理―社会的モデルは診断主義の流れをくむものだが,F・ホリスは『ケースワーク―心理社会療法―』(1965年)のなかで「状況のなかの人」という視点を明確にしたシステム論的アプローチを提唱し,直接的技法と間接的技法を体系化した。
 「生活モデル」の個別援助技術がこの点を最も代表している。
・伝統的な「医学モデル」から「生活モデル」への転換の段階に入っていこうとしている。

②行動主義モデルや課題中心モデル,さらには危機介入モデルのように,ターゲットとなる問題と援助目標を明確にした比較的短期間の実践方法を形成する方向が顕著である。
 即座の対応を迫る利用者のニーズの緊迫性とともに,政策上の対策という二方向からの社会的ニーズの反映をみることができる。

*F.J.ターナーは1974年に『ソーシャルワーク・トリートメント』を編集し,アメリカにおけるクリニカル・ソーシャルワークの理論を整理した。
 その後1979年,1986年,1996年と改訂を重ねて理論動向を示す

○実践モデルの概要 テキストP126表に関連して
*診断主義ケースワーク

 1920年代,特にS. フロイトの精神分析の影響を受けて発展したケースワークの一体系。リッチモンドの『社会診断』(1917)の出版を機に,診断主義ケースワークは急速に広まった。
 当初,診断主義ケースワークは,個人の深層心理の「診断」と「治療」にその重点をおくあまり,人間の社会的側面を軽視してきた経緯をもつ。

*機能主義アプローチ
 オットー・ランク(Rank, O.)が提唱した人間の「自由意思」という概念を重視するケースワークのアプローチ。スモーリーなどペンシルベニア大学の研究者が中心となり,機能主義アプローチは確立された。ケースワークの役割は,クライエントの問題解決を援助するのではなく,クライエントの成長しようとする自由な意思を邪魔する障害を取り除くことであるとした。ワーカーは,クライエントと接し,よい援助関係を築くことによって,そうした役割を遂行すると考え,関係を築くプロセスを重視した。援助のプロセスは,初期・中期・終期という捉え方をし,クライエントとの出会いの瞬間から治療的関わりが始まっていると考え,診断主義アプローチとは異なるとした。こうした援助関係は,ワーカーが勤務する機関の機能によって影響されるとし,機関の機能を重んじたところから,機能主義アプローチとよばれた。

*問題解決アプローチ
 問題解決を提唱したパールマンは,人が生きることあるいは社会的に機能すること(social functioning)は問題解決のプロセスであると考え,自我機能としての問題解決能力を重視した。ケースワークとは,問題(problem)をもつ人(person)がある場所(place)すなわち福祉機関を訪れ,その場所において,そこを代表する専門職(ケースワーカー)が一定のプロセス(process)を通して問題を抱える人を援助することであるとした。このようにケースワークの核となる要素としての「四つのP」を明らかにした。なかでも4番目のPであるプロセスを重視した。それは,専門的ヘルパーとしてのケースワーカーとクライエントとがやりとりしながら前進するプロセスであり,ワーカーとクライエントがともに行う一連の問題解決作業であるとした。パールマンは,こうしたプロセスにおけるケースワーカーの役割は,クライエントが問題解決をしてみようと思えるように動機づけること,問題解決するための技術を身につけるようにすること,そして,身につけた技術を実際に使う機会を提供することであるとしている。

*心理社会的アプローチ
 精神分析等の知見を導入した診断主義ケースワークに立脚する,個別援助技術の主要アプローチの一つ。ホリスによって,1960年代に体系化された。ハミルトンらも代表的な研究者である。特に「状況における人」に着目し,クライエントの環境面と内面・心理面の相互作用を認識すること,さらにクライエントに対する直接的な働きかけと同じく,環境への間接的な働きかけや調整の重要性も強調した。

*行動変容アプローチ(行動主義モデル) E.トーマスら  1967
 利用者の問題行動の原因や動機にさかのぼることをせず、問題行動そのものを取り上げて、特定の問題行動の変容を目標に働きかける。学習理論を導入した。あくまで目的は問題行動それ自体の解消、修正であって、問題行動の原因や動機を解消、修正することや、クライエントの意識や思考の変容は直接の目的ではない。
◎行動療法とは、学習理論を基礎とし,すべての行動は経験を通して学習されたものであると考える治療方法。

■解説:学習理
 人の行動は学習によって形成され、また、その改善も学習によって達成されるとする理論である。

*危機介入モデル  L.ラポポート  1970
◎危機介入モデルとは、危機状態にある対象者(個人, 集団, 組織, 地域など)に対して,その状態からできるだけ早く脱出することを目的に迅速かつ直接的に行われる援助。
 危機とはクライエントがそれまで獲得し、用いてきた対処方法では問題解決を図ることができず情緒的に不安定な状況である。
 危機に直面して情緒的に混乱している利用者に対して、適切な時期に、迅速に、危機介入していく援助方法である。危機理論を導入したもの。積極的・集中的な援助を行い、危機状況からの脱出を目的とする援助方法である。

■解説:危機理
 危機理論とは、火災で犠牲となった人々の関係者(遺族,親族,友人・知人)の悲嘆にまつわるリンデマン(Lindemann, E.)の研究に端を発し,後にキャプラン(Caplan, G.)らと共同で1940年代から60年代に構築された理論。
 危機とは,対処困難な事態に突然直面した際に引き起こされる,身体的・心理的・社会的にホメオスタシス(恒常性)のバランスを崩した状態をいう。ホメオスタシスに基づく危機理論は,人が危機状態から脱する過程において一定の段階と法則が存在し,その期間が長期的なものではないとの仮定をおく。

*課題中心モデル  W.リード、L.エプスタイン  1972
 利用者の問題を、利用者が解決しなければならない課題として取り上げ、いかにその課題を解決するかについて、利用者と援助者が協力して解決しやすい方法を検討し、計画を立て、実行していく方法。具体的な作業計画の策定、実行、評価を通じて、短期間内で問題の解決を図る。課題の達成状況に焦点が当てられ、ワーカーはクライエントが実行可能な課題の設定やその達成に向けての作業に対して援助を行う。

◎課題中心アプローチとは、短期かつ計画的にクライエントの援助を行うケースワークのアプローチとして,シカゴ大学のリードとエプスタイン(Epstein, L.)によって研究・開発された。当初より,計画的短期性(planned brevity)をめざした。
 目的をもった行動をアクションとよび,一連のアクションが「課題」(task)であるとしたこと,具体的な課題を設定する計画的なプロセスを明らかにしたこと,課題とケース目標を整理し,契約することによってケースに関わる者すべてが課題を共有すること,課題の遂行状況をモニターし評価する手順を明確にした。

*ナラティブ・アプローチ
・ナラティブ(物語)モデルは、利用者の語る物語を通して援助を行うものである。利用者の現実として存在し、支配している物語を、ソーシャルワーカーは、利用者とともに共同して見い出していく作業が求められる。そして、利用者が新たな意味の世界を創り出すことにより、問題状況から決別させる。
 ナラティブ・アプローチはクライエントが「自己」について否定的なストーリーを抱き、それを変えることができないと信じ込んでいる場合に有効である。このようにクライエントのなかで確立しているストーリーをドミナント・ストーリーという。まず、クライエントは、援助者との対話を通して、ドミナント・ストーリーを解体する。(「自己」についての否定的なストーリーが自明のものでも変えられないものでもないことに気づく。)この作業を問題の外在化という。そして、クライエント自身が新たに構成するストーリーをオルタナティブ・ ストーリーという。
・ナラティブ・アプローチは、社会構成主義に基づくアプローチである。

*ストレングス(長所または強さ活用)とは、長所あるいは強さに焦点をあてその人の残存能力の強みを評価するもので、クライエントの弱点や問題点のみを指摘し、その不足や欠点を補う従来の否定的なクライエント観から脱却を図る。

*エンパワーメント
 ソーシャルワークにおいて一致した定義はいまだないが,おおむね,個人,家族,集団あるいはコミュニティが,その個人的,対人関係的,社会経済的および政治的な影響力(パワー)を強め,それによってその取り巻く環境の改善を実現させていくこと,あるいはそれらが実現された状態を意味している。パワーの脆弱化,無力化をディスエンパワーメント(disempowerment),パワーの欠如状態をパワーレスネス(powerlessness)とそれぞれよんでいる。ソーシャルワークにおいてこの概念を初めて取り上げたのは,ソロモン(Solomon, B.)の著書『黒人のエンパワーメント』(1976)であるといわれている。

*ライフ・モデル・アプローチ life model approach
 1960年代以降のアメリカでは,複雑で多様な生活問題に対する援助の社会的要請が高まり,従来の個人のパーソナリティに治療の焦点をおいた伝統的なアプローチに対する批判が高まった。そのソーシャルワークの限界を打開するために,生態学や一般システム理論などの新たな理論的枠組を背景に登場したのがジャーメインらによって体系化されたライフ・モデル(生活モデル)である。

*レジュメ3に続

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by yrx04167 | 2011-10-14 18:06 | Comments(0)