相談援助の理論と方法 第27回講義レジュメ3 心理社会的アプローチとは 社会福祉士養成科

相談援助の理論と方法 第27回講義レジュメ3 2011/10/20 6・7時限
日本福祉教育専門学校 社会福祉士養成科(夜間部トワイライトコース) 担当:当ブログ筆者

7章1節 心理社会的アプローチ
1 起源と基盤理論 テキストP144

・心理社会的アプローチは、ホリスによって提唱された。臨床ソーシャルワークとも呼称される。

・起源は、リッチモンドによるケースワーク理論にある。その特徴は、クライエントと環境との間を意識的に調整し、その人物のパーソナリティの変容・発達を図る。
 その要は、クライエントの社会的状況とパーソナリティを捉える社会診断にある。

・リッチモンドの理論はその後、診断主義ケースワークに引き継がれた(部分的に)。
・診断主義は、フロイトの精神分析理論から影響を受け、中核に位置付けられた。ハミルトンや、トールらが発展させた。その後、心理社会的アプローチとして継承されている。

2 心理社会的アプローチを理解するためのキーワード テキストP144
*臨床ソーシャルワーク

 心理社会的状況下にある人間の行動や発達に着目し、クライエントの社会的機能の維持・向上を支援目標におく。

*精神分析理
 19世紀末、フロイトにより創始された神経症の病因論と治療法に関する理論であり、人間の「自我」の構造を明示した理論体系である。

*状況のなかの人
 「人」と「状況」と両者の「相互作用」からなる三重の相互関連性によって成立する、重要視点である。

*暫定的目
 すぐに取り組める具体的課題を含んだ特定される目標。

3 適用対象・適用課
・支援を要するすべての人に適応可能なアプローチである。
 家族問題、精神医学的課題、医療的課題の解決に適応できる(ホームレス等にも)。
・一方、言語コミュニケーションが前提となり、動機づけに乏しいクライエントへの適応は困難である。また、クライエントとワーカーとの関係性の重視により支援に時間がかかり、援助過程にクライエントが継続的に参加することが前提になる。加えて、環境要因への介入が弱い点が、指摘される。

4 支援焦
・援助関係におけるコミュニケーションを通じ、パーソナリティの変容を図り、状況側の機能を高める。人と状況相互の機能不全を改善し、課題の解決を図る。

5 支援展
・「状況のなかの人間」を中心視点に、援助関係を確立し、両者の協働により、問題の解決を図り、人と状況相互の機能不全を減じることに目標がある。
・アセスメントは、クライエントの問題の原因、状態、また、「人」と「状況」の全体関連において、「誰が、何が問題の解決に向けて変化しやすいのか」に焦点があてられる。
・介入は、援助の初期段階から実際の介入が開始されていくことが強調される。
・アセスメント(診断)に基づく支援計画の策定が、実践の成否をにぎる。

<補足:社会診断・区分とその手法
・パールマンは、社会診断を次の3つに区分した。
*臨床診
 精神分析(精神医学)や心理学など他の臨床科学によって,クライエントを精神疾患あるいは適応異常の性質によって分類し,評価すること。パーソナリティ・人格面の評価である。

*発生的(原因論的)診
 問題発生の原因と、その後の展開の経緯を明らかにする。

*力動的診
 クライエントの問題状況のなかに相互的に作用している力を評価することで,クライエントの問題が,その生活状況のなかでもっている意味,その問題解決の手段を明らかにする。
あるいは,人-状況-問題 の複合した状態のなかで能動的に働いている諸要素についての診断であるということができる。これが伝統的にいわれている心理社会的診断であり,パールマンはこの過程で,クライエントの機能する力=ワーカビリティを評価するといっている。
 社会福祉士受験支援講座・教員日記

・これらの社会診断はクライエントの心理社会的な機能の仕方を評価することである。

*介入時の技法(六つのカテゴリー)
①持続的支

 傾聴、受容、はげまし、共感的理解など。
<補足
・上記に加えて、クライエントの不安や罪悪感への再保証
(=大丈夫であると伝える。一般化はその一つの方法)
・クライエントの力や能力についての信頼感の表現(これは,承認,肯定,激励ともいわれる)
・「愛情の贈り物」に不安の強い人にとっては、ワーカーと関係そのものが一種の報奨を与えることになる。

・これらの技法の目標は、クライエントの不安を軽減し、問題解決への動機づけを促進して,専門的援助関係を樹立することにある。
・クライエントのケースワーカーへの信頼度が高いほど効果がある。
 不信感の強いクライエントには効果は望めない。
ケースワーカーのコミュニケーションの技法であり,ケースワークのもっとも基本をなす技法である。

②直接的支持(指示
 直接的働きかけとも言える。クライエントのとるべき行動に関しての、ワーカーからの意見や態度の表明など。
<補足
・目標は、社会生活機能の障害となっていることを除去すること。
・クライエント側の必要性にもとづいてこの手続きを用い,安易に依存を助長しないようにすることが求められる。また,クライエントが衝動に走るのを一時的に抑制するのに役立つ。
・ワーカーの活動およびクライエントの同意を強化するために用いられる。
 ①クライエント自身の提案を強調する(激励,強化,報奨)
 ②ワーカーが可能な行動を示唆(現実的な制限を設ける)
 ③直接的助言
 ④弁護的な行動
  ③④は、クライエントとの強い関係が出来ており,クライエントについての知識を十分持っている場合に用いること。
⑤直接介入
クライエントが自分自身で行動できない場合の最後の救いの手である。

・これらの技法は理解を深める手続きと併せて用いること。可能ならば,クライエントに自分について十分考えさせること。
強迫的な傾向をもつ人に対してこの手続きを用いる場合には注意すること。

③浄化
クライエントの状況について探索し、事実を描写し、感情の解放を行なう。
<補足>
*探

 状況のなかにあるクライエントについての事実を述べ,説明させること。
*浄
・感情の表出およびさまざまな感情がまつわっている記憶を表現させる(感情の言語化)。

・目標は、診断的な理解をうるとともに,感情表出による緊張の軽減をはかる。
 タイミング,焦点づけをうまく活用すると有効である。
・自虐的な人,精神疾患など感情をかきたてたり,不安が高まる傾向のある人に対してはこの手続きの使用は一定の範囲内にとどめること。

④人と状況の全体関連性についての反省的話し合
 環境や他者との関係に関する思考・感情・認知への気づき。
<補足
 反省的話し合いとは以下のことをさす。
①外的な力
人,状況,出来事(ワーカーと治療も含めて),に対するクライエントの知覚の仕方。
②意志決定とその結果について
他人に対するクライエントの影響とその結果を自分で考えるように援助する。
③自分の行動傾向についての内省的な気づき(反応および歪曲)。
④行動と結果との相互作用的な関連についての気づき。
⑤自分自身あるいは行動のある側面についての評価
自己像,正・誤についての考え方,信念,価値,あるいは好みについて。

・目標は、問題についてのよりよい理解を深めるために,また,行動に何らかの変化をもたらすためにクライエントが歪曲してとらえている点を現実的に把握できるようにさせる。
・クライエントが以前失敗した理由や原因を追求する必要がない場合には,より現実的に理解できるように,少しの援助で問題解決できる人に対して有効である。
・クライエントの準備態勢や能力に応じて用いること。

⑤パターン力動的要因への反省的話し合
 行動傾向、出来事への反応や行動を生み出す思考・感情のパターンを明確化。
<補足
・目標は、変化することへの動機づけを促しながら,クライエント自身のパーソナリティのパターン,特徴および力動を理解するように援助する。

⑥発達的要因への反省的話し合
 原家族や幼少期の経験について考察する
<補足>
・目標は、変化のために,幼少期の問題と現在の行動との間に因果関係のあることをクライエントに気づかせる。
・ワーカーは診断的な理解を得たり、あるいはクライエントのカタルシスを促す場合に幼少期のことが語られることと,この手続きとを混同してはならない。

<補足>
*ホリスの治療技

 伝統的な診断派の流れをくむ家族福祉機関や精神科領域での実践にもとづき生み出されたものであるため,「治療的ケースワーク」がその中心をなしている。
と くに,クライエントの人格発達上の問題や、対人関係上の問題の解決に焦点がおかれ,積極的に自らの問題解決にたちむかおうとする動機づけや知的レベルの高い人を対象とし,その治療技法も感情表現を促したり,また,問題の原因や他の人とのかかわりへの洞察を促す方法が採用されている。
 しかし,社会の変化にともない,ケースワークの対象とするクライエントや問題は多様化してきている。心理的な問題よりも,生活困難にともなう具体的なサービスや環境調整といった現実的で,即物的な要求をする人たちがふえてきている。
これらの人々は多問題で,限られた経験や環境のため,対人関係のもちにくい人たちである。
 このような人たちに対して,ホリスの直接的指示は有効である。感情よりも知覚,認知を刺激して,生活の仕方,コミュニケーションのまずさを現実的に修正したり、教育していくことが大切である。行動療法や課題中心ケースワークにより,特定の行動や課題に限定して援助していくことも役立つであろう。

■用語解説:ハミルトンHamilton, Gordon  (1892-1967)
 アメリカにおける診断主義ケースワークの代表的な研究者の一人。
(後述)

■参考用語 精神分析
 精神分析学は、ジクムント・フロイト(Sigmund Freud)によって創始された人間心理の理論と治療技法の体系である。
(後述)

■参考用語:フロイトFreud, Sigmund (1856-1939)
 精神分析の創始者。
(後述)

■参考用語:自
・自我
・イド(エス)
・超自我
(後述)


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■用語解説:ハミルトンHamilton, Gordon  (1892-1967)
 アメリカにおける診断主義ケースワークの代表的な研究者の一人。1923年から57年までの約35年間,ニューヨーク社会事業学校(現・コロンビア大学大学院)で教鞭をとり,診断主義ケースワークの確立と発展に大きく貢献した。また,その代表的著書『ケースワークの理論と実際』(Theory and Practice of Social Case Work, 1940)は,アメリカのみならず,世界中で読まれ,各国のケースワーク研究や実践の発展にも貢献した。

■参考用語 精神分析学
 精神分析学は、ジクムント・フロイト(Sigmund Freud)によって創始された人間心理の理論と治療技法の体系である。広義には、フロイト以後に発展した分派を含めた理論体系全体を指す。1920年代に戦争神経症の治療などに用いられた。
◎精神分析とは「抑圧された心的なものを意識化すること」とフロイトは定義したうえで,精神分析の「分析」とは,化学者が合成物を分析して,その構成要素を見つけだすのと同じように,合成物としての患者の症状を分析して,症状を構成する衝動を見つけだし,その衝動について患者自身が意識化できるようにするための働きかけであると述べている。精神分析は20世紀前半の精神医学・心理学に大きな影響を及ぼした。

■参考用語:フロイトFreud, Sigmund (1856-1939)
 精神分析の創始者。臨床例から,抑圧理論および性的外因説によるヒステリー論を展開し,ここで用いた自由連想法による治療を「精神分析」と命名した。その後,人間の無意識とその意味の解読法の理論化を試み,エディプス・コンプレックスと小児性欲説,自我防衛機制による心的構造論と深層心理学を体系化した。
 エディプス・コンプレックスとは、S. フロイトによって提唱された幼児期(3歳から6歳程度)の男児が抱く「母親を独占したい」という衝動と父親への嫉妬心を示す。正常な発達過程では,父親に代わって母親を独占したいという衝動は,やがて父親への同一化から男性としての性的役割を形成するなかで解消へと向かっていく。
 防衛機制とは、S. フロイトによって明らかにされ,その後A. フロイトらによって発展させられてきた,精神分析学で用いられる中心概念の一つ。イド(エス),超自我,外界の現実の対立する圧力によって,自我のなかで緊張,不安,葛藤が生じる場合,自我がそれを解決し,日常生活のなかで安定を図ろうとする無意識の働き。当面の問題を意識の外に追い出す「抑圧」,満たされない性的願望などを社会的に認められる代償行動で満たす「昇華」など,さまざまなものがあげられる。

■参考用語:自我
 自我は精神分析学上の概念で意識のある機能の中心である。
・自我
自我は意識層の中心の機能で、イドからの要求と超自我からの自己の規制を受け取り、感情を現実に適応させる機能である。

・イド(エス)
 イドは無意識層の中心の機能で、感情、欲求、衝動をそのまま自我に伝える機能である。イドは視床下部のはたらきと関係があると思われる。

・超自我
 超自我は上の二つの層をまたいだ機能で、ルール、道徳観、倫理感、自己の規制を自我に伝える機能を持つ。この機能がイドや自我を強く押し付けているとき、自我がエスの要求を通すことができずに防衛機制を働かせることがある。超自我は前頭葉のはたらきと関係があると思われる。
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by yrx04167 | 2011-10-21 16:19 | Comments(0)