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相談援助の理論と方法 第29回講義レジュメ4 参与観察、構造化面接とは 社会福祉士養成科夜間部

相談援助の理論と方法 第29回講義レジュメ4 2011/11/10 6・7時限
日本福祉教育専門学校 社会福祉士養成科(夜間部トワイライトコース) 担当:当ブログ筆者

13章 事例研究・事例分析・続き
2節 事例研究の方法と留意点
1 研究の目的とデザイン テキストP264

・事例研究を行う場合、研究目的が明確でなければならない。
 これから研究しようとすることについて、先行研究のレビューが必要である。
・研究目的に適した、研究デザインを決める。

*固有事例と手段的事例
・固有事例研究とは、その事例の固有性を詳しく調べる。
・手段的事例研究事例とは、事例を通して問題や現象を研究するものである。

*単一事例と複数事例
・一つの事例を深く探求する研究と、複数の事例を対象とする研究がある。
*複数事例を扱う研究
・複数事例の比較検討-共通点を見出し、問題の特徴を浮かび上がらせる。
・複数事例の比較検討-現象や問題のバリエーションを示す。
・異なる状況に至った事例(例えば成功事例と失敗事例)の比較検討
・仮説の検証と理論の生成

*過去と現在
・過去の事例では、記録を調べたり、面接で当事者らに回想してもらうことにより、得られたデータに基づいて研究を行う。
・現在の事例では、過去の記録を含むが、現在の状況についての記録、当事者から得る情報も含む。継続してデータを取り続ける場合もある。

・情報の質・量からみれば現在の事例を対象とするほうが望ましい。

*量的研究と質的研究
・事例研究は、質的研究の一つと位置づけられる。
・評価・効果測定目的の研究では、一事例を対象とする単一事例実験計画法の手法もある。

2 事例研究の方法
*事例の選定

・事例研究の目的とデザインが決まったら、事例を選定し、データを収集する。分析し、考察を加えたうえで発表することになる。
・研究対象にしたい事例に対して、原則、事例の本人に研究協力の依頼をする。原則として研究協力に対する本人の同意が必要である。
 同意書への記入も依頼する。

*データを収集
 事例研究において、データは、主として観察、面接、文書などから収集することが多い。

<観察>
・事例研究では、自然観察法を用い、観察の対象となるのは、外見や態度、行動、言語的・非言語的コミュニケーションなど、さまざまである。

*観察法の概要
・観察法とは、非言語的方法を用いての調査対象の把握である。
 実験的観察法と自然観察法。

・観察法には、非参与観察法、参与観察法(対象集団に入り込んで内部からの観察)、統制的観察法がある。

・非参与観察法とは、観察者が第三者として、対象のあるがままの姿を外部から把握する観察法をいう。
・参与観察法とは、調査者自身が対象集団の内部に入り込み、生活体験をともにしながら比較的長期にわたって内部から観察する方法をいう。
・統制的観察法とは、観察対象のなかの特定の要因を比較的純粋な形で抜き出す目的から、他の要因を規制したり、観察場面や観察手段に工夫を加えたりして、観察を行う方法をいう。

・具体的には、観察→調査・観察者の観察中の記録であるフィールド・ノーツ等からの分析→調査報告の記述といった過程でまとめられる。

<参与観察の定義>
・参与観察とは、調査者が、よく知らない社会(集団)に入りこみ、比較的長期にわたって、そのメンバーの一員として生活をともにしながら、そこで繰り広げられる人びとのやりとりや出来事を観察し記録する調査法

<参考:調査における観察者の位置づけ>
(1)完全な参与者(complete participant)
*調査者と調査対象者の関係
調査者であることを明かさずに、調査対象となる社会(集団)の活動に完全にかかわろうとする。
*作成されるデータの種類
他の方法では得られない正確な情報と理解が得られる。
・例:大熊一夫, 1981, 『ルポ・精神病棟』(朝日文庫)
新聞記者がアルコール依存症の患者になりすまして入院し、「悪徳精神病院」の内幕を暴露した。

(2)観察者としての参与者(participant as observer)
参与観察法に典型的な観察者の位置づけ。
*調査者と調査対象者の関係
調査者としての役割を明らかにし、調査の意図を調査対象者に伝え、比較的長期にわたって、人間関係を維持する。
・調査対象への「ファン」になることに似ている。
・調査対象者と行動を完全に同じくする必要はない。犯罪集団を参与観察する場合に、調査者が一緒に犯罪をするわけではない。
*作成されるデータの種類
フィールドで時間を過ごすうちに理解される観察対象におけるルール・役割・人間関係の知識を用いて、深みのある記録ができる。
・人びとのやりとりや出来事を正確に記録することが最重要課題。
観察しているその場でノートをとれない場合は、調査者の記憶力が重大な問題となる。
・例:ホワイト『ストリート・コーナー・ソサエティ』

(3)参与者としての観察者(observer as participant)
これは、厳密に言えば、参与観察とは呼べない。
*調査者と調査対象者の関係
・調査者としての役割は明らかにされるが、調査対象者の関係は、つかの間のもの。
*作成されるデータの種類
・フィールドで時間を過ごすうちに理解される観察対象におけるルール・役割・人間関係の知識が利用できず、底の浅いデータにならざるをえない
例:1回かぎりの訪問インタビュー
比較的形式ばった観察になる。

(4)完全な観察者(complete observer)=非参与観察
*調査者と調査対象者の関係
調査者は、調査対象者との相互作用から完全に引き離される。
*作成されるデータの種類
調査者の存在がデータに影響を与えない。
・例:研究室の実験において、調査者は、マジックミラー越しに実験を観察する

<面接>
 インタビュー法とは、「調査者が、あまり面識のない調査対象者と、ある話題について質問―回答という形式の会話を一定の時間続け、情報を収集する社会調査の方法」とされている。
 社会調査で用いられる4つの面接法(インタビュー)とは、構造化面接(インタビュー)、、非構造化面接、半構造化面接、グループ・インタビューである。

1)構造化面接(インタビュー)
<概要>
インタビューの諸手続が標準化されたインタビュー。フォーマルな性格が強い。
調査者はあらかじめ質問項目・順序・方法を決め、それに厳密にしたがいながら回答を得ていく。
<解説>
 量的調査で用いられることが多いインタビュー法である。調査票を用いる。
*インタビュアーの役割=中立
 調査票に記載された一連の質問を順番にしたがって、回答者に指示する。
*調査者のルール
 標準化された形式で、面接調査の説明をする。
 調査票から逸れない。
 調査対象者の回答だけを引き出す。
 インタビュアーが、自分で言葉を補ったり、自分の意見を述べたりしない。
 自分の解釈を加えずに単純に質問を繰り返す。即興の工夫を慎む。

2)非構造化面接(インタビュー)
<解説>
インタビューの諸手続が標準化されていないインタビュー。インフォーマルな性格が強い。
質問項目を事前につくらず、調査者が質問を臨機応変に変えながら、回答を得ていく。
<解説>
*自由面接・回答形式
 インタビューされる人は、自分の準拠枠に照らして、質問に答えられる。
 インタビューで話される話題について、質的に深く掘り下げられる。
インタビューされる人の視点、主観的な考え方を明らかにできる。
生活史、生活歴、口述史に関するインタビューとして知られるものもある。
生活史についてのインタビューでは、社会・経済の情勢変化によって、人間関係がどのように変わるかを明らかにできる。
*柔軟性
 インタビューの実施に柔軟性があり、互いが解釈している意味を発見できる。
 公式の見方に対して疑問を投げかけられる。

3)半構造化面接
 非構造化面接と構造化面接の中間。
*標準化と自由面接・回答の融合
 質問はふつう細かく決められているが、インタビュアーは回答をふまえて、より自由に探りを入れるように尋ねることができる。
 構造化面接よりも、回答者は、自分の言葉で答えられる。
 構造化面接よりも、インタビューの行われる具体的な文脈の記録が重要になる(非構造化インタビューでは、さらに重要である)
*インタビューは、調査者自らが行なうのがよい。

*時系列インタビュー
・時系列インタビューとは、過去の出来事を、それらが起こった順序にしたがってインタビューする。
 時間の流れにそって話をすることは、人間の記憶や思考にとって自然。
あらゆるインタビュー法(構造化、半構造化、非構造化、グループ)で利用可能。
 年代順のインタビュー法は、人の「経歴(キャリア)」という考えと結びつく。
 キャリアとは、世間的評価の高い職業上の経歴だけでなく、人が人生・生活においてたどってきた「経路」全般を指す(ゴフマンの「経歴の二面性」)

・多面的な情報を得るために、本人だけでなく、家族や関係者からも聞き取りを行うこともある。

<文書やビデオ等>
・下記のように、あらゆる文書や記録がデータになり得る。
 アセスメント、ケアプラン、経過記録などのサービス担当専門職による記録、申請書などの文書、手紙、メール、メモ、日記など本人や家族が書いたもの。

<レジュメ5に続く>

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日本福祉教育専門学校 社会福祉士養成学科・養成科
*日本福祉教育専門学校 社会福祉士養成学科は、4年制大学卒業(見込)等の方々が対象の、1年制の社会福祉士の養成コースの昼間部です
 社会福祉士養成科は、4年制大学卒業(見込)等の方々が対象の、1年制の社会福祉士の養成コースの夜間部(2コース)です

社会福祉士及び介護福祉士法



*解説:参与観察
 観察者自身が,観察される集団の一員として,日常生活に参加し,人々と関係を結びながら,そのプロセスのなかで生じる出来事を観察する調査法である。社会学者リンドマン(Lindeman, E.)によって命名された用語。主に人類学者や社会学者が行ってきた調査方法。参与観察を用いた研究では,人類学者マリノフスキー(Malinowski, B. K.)の『西太平洋の遠洋航海者』(1922)と,シカゴ学派とよばれる社会学者のグループによる一連の研究が有名。
by yrx04167 | 2011-11-12 00:11 | Comments(0)