相談援助の理論と方法 17回講義レジュメ1 アルコール依存症者のアウトリーチ、包括的地域生活支援ACTとは

相談援助の理論と方法 第17回講義レジュメ概要1
 2013年8月7日 日本福祉教育専門学校 社会福祉士養成科(夜間部)にて

*ソーシャルワーク実践・現場・事例と理論との往復
・生活保護受給中の精神障害者を対象としたアウトリーチの事例から

 ある訪問の事例:日常では、虫も殺さぬような穏やかで、優等生のようにグループワークで振舞っているアルコール依存症の利用者が、訪問時は飲酒をした後であり、態度が豹変した。何者かに対して、一方的に怒ったり、捨て台詞等、同じ人間とは思えない。
 訪問は、様々な側面の理解をもたらし、全人的な支援のためには、必須の取り組みであろう。
 対象者の心理・内面を、その生活全体、環境への理解を深めるため、真に欲しているのは何かを把握するために、訪問は有効である。

*接近困難なクライエント(多問題家族)へのアウトリーチ実践
・アウトリーチ実践は、接近困難、拒否的なクライエントに対しても、何度も対象者のもとに通い、気にかけていること、受容の姿勢を行動で伝える方策でもある。対象者が援助者に対し、「これまでの人とは違う」という実感を持つことが、支援の糸口となる。

*地域包括支援センターのアウトリーチ-調査から地域包括支援センターにおけるアウトリーチ実践の現状について。
 高齢者やその家族への直接的なアウトリーチに関しては積極的に行なわれているが,地域を対象にアウトリーチを実施している機関は少ないのが実状である。

*地域包括支援センターの地域連携・地域づくりの活動例
①広報活動:市民に相談機関の存在をアピールする。
②地域ケア会議の開催:関係者のカンファレンス実施。
③民生委員・児童委員、学区社会福祉協議会、各種関係機関等との連携
④出前講座、相談会の実施
⑤社会資源調査と情報発信
⑥実態把握活動
 詳細は講義にて。

7章2節 アウトリーチの方法と留意点 テキストP155~
<ポイント>

・アウトリーチの手法についての解説―ケース発見、サービスへの誤解を解き、拒絶を解消することから開始する。アウトリーチには、包括的アセスメントが必要とされる。また、バックアップ体制も必要となる。

1 援助過程とアウトリーチの具体的方法 テキストP155
*ケース発見
・クライエントレベルでの対応

 アウトリーチは、地域に出向き対象を発見する⇒対象を援助へと引き入れていく努力
・ケースは、自らの現状について問題意識をもっていないか、解決の動機づけに乏しい。
⇒現状を問題と感じるように促すことからはじめる必要がある。
・サービス利用への抵抗感がある場合もある。
⇒過去の否定的な被援助・拒絶体験や、誤解から生じていることもある。
・ワーカーは、これらの背景を理解し、受容的な対話により誤解を解き、問題解決の動機づけを高める働きかけを行なう。
・トロッター(C.Trotter)は、「ワーカーとクライエントの役割をクライエントが理解するように支援すること(正確な役割の明確化)、社会的にみて望ましいと思われる行動をクライエントがとることを示し、賞賛や何らかの心理的報酬によって強化していくこと(向社会的価値のモデリングと強化)、クライエントが定義した問題の解決に協働で取り組むことなどが有効」。

・システムレベルでの対応
・イギリスのケアマネジメントは、最初の段階を「情報の公開」と示している。
関連システムの、市民に対する広報・啓発が重要であり、市民のアクセス向上につながる。
・住民や関係機関による、ケース発見のネットワークを構築することも重要である。
接近困難なクライエント(多問題家族等)の早期発見・早期対応を可能にする重要な課題である。

*アセスメント
・情報収集と包括的なアセスメントが必要である。情報とは、心理・社会的、過去、内的世界の理解をもたらす情報などである。
・クライエントの関係者によるカンファレンスを開き、情報の共有と、共通理解を図ることも有効である。
・クライエントの家庭訪問(生活場面面接)は、生活の様子、戸外の都市環境、住宅の物理的環境、近隣関係の把握に有効である。

*モニタリング
 詳細は講義にて。

2 アウトリーチを行なうための留意点 テキストP158
*アウトリーチを可能にする要因

 座間によるアウトリーチを可能にする要因
①職員に対する要因
アウトリーチの必要性に対するワーカーの認識・力量、職員体制の課題。
②サービスに関する要因
クライエントの個別性に合わせた工夫、柔軟なサービス提供。
③組織的要因
ワーカーが資源活用に関する実質的な権限をもつ、他機関と積極的に連携をとる。
④地域の状況
ワーカー・機関と地域との関係の構築。

*アウトリーチ活動を行なうワーカーのバックアップ体制
・アウトリーチは、機関のバックアップ体制が不可欠である。
・アウトリーチを正当な業務として認める管理者・機関の姿勢が必要である。
・アウトリーチ・ワーカーは、成果の報告により、その必要性について理解を得ることに努める。

<補足>
・アウトリーチを実施できる体制の整備は、機関・施設の運営管理の課題である。

*参考:ACT Assertive Community Treatment
・「地域医療および各種生活支援を含めた包括的地域生活支援プログラム」と訳される。
 主に精神障害者の継続した地域生活を可能にするために考案されたプログラムで、24時間対応を前提に、精神科医・精神科看護師・精神保健福祉士等の他職種による協働チームが、退院後の精神障害者のケア(地域生活支援、社会復帰促進、再発予防のための訪問サービス、服薬管理、社会適応訓練など)を行う。
 治療とリハビリテーションの両面を併せ持ち、それを地域において提供することに主眼が置かれる。
・1970年代前半頃に、米国においてモデル事業が行われ、その後オーストラリア、イギリス、フィンランドなどで展開されている。
 欧米諸国の実践では、精神障害者の再入院が減少し、地域における定着率が高まった等の面からその有効性が評価されている。

・具体的には、実践においてケアマネジメントの技法を用い、支援プランに基づき、利用者のニーズや希望に即した包括的な支援をチームで提供する。
 ⇒精神科薬物治療、危機介入(生活危機を含む)、住居支援、家族支援、就労支援など
 入院時・入院中・退院時にも積極的に関与する。入院機関との緊密な連携の下、入院時にも利用者と関わる機会を得る。
 24時間365日対応を原則とする。必要に応じて高いサービス密度、頻度で関わる。
 ニーズがある限り支援を継続する。ACTへのニーズが解消された場合は、一般的な地域のサービスへ移行し、ACTプログラムを終了する。
 対面は、原則として地域の中でおこなわれる。
 利用者の長所、能力、環境の長所などに注目し、利用者の“リカバリー”のプロセスを尊重した、ストレングスモデルによる関わりを実践する。
 医療的な危機介入ばかりでなく、生活上の危機の支援にも積極的に取り組む
 家族のリカバリーも尊重した家族支援を積極的に行う。利用者の周囲の人々も支援の対象とする。

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*日本福祉教育専門学校 社会福祉士養成学科は、4年制大学卒業(見込)等の方々が対象の、1年制の社会福祉士の養成コースの昼間部です。日本福祉教育専門学校 電話:0120-166-255
夏期休暇期間の校舎閉館について 日本福祉教育専門学校

第26回 社会福祉士国家試験の施行について 報道発表資料・厚生労働省
抜粋:第26回「社会福祉士国家試験」の実施について官報で公告しましたので、その概要をお知らせします。社会福祉士国家試験の概要 試験期日 平成26年1月26日(日) 略


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by yrx04167 | 2013-08-11 13:43 | Comments(0)