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相談援助の理論第3回講義レジュメ 貧困とMSW、倫理的ジレンマとは 生活困窮相談支援員研修、社会的起業支援

相談援助の理論と方法 第3回講義レジュメ概要
 当ブログ筆者が、社会福祉士養成科(夜間部1年通学課程)にて、4月22日(水)に講義            
<レジュメ完全版は講義にて配布。解説の詳細は講義にて>


<映像資料から 生活困窮者を対象とする医療ソーシャルワーク>
1.生活保護制度(医療扶助)と医療福祉領域の相談援助
2.シラミ、結核等。生活と環境が病気をつくる。
 医療ソーシャルワークの源流とは。社会的な治療の一助として。
 「貧困が人間をダメにする」
3.「障害者」と「健常者」のボーダーライン 貧困問題の要因
4.社会的孤立と「告知」、ターミナル、緩和ケアの課題。
5.病状と治療の理解を支援する。「わがまま」か、理解が困難な「障害」か
 インフォームド・コンセントを阻む障害。
6.貧困と家族問題。借金等の過去の問題が原因の「身寄りが無い」、ネットワーク全員の困窮が進み、拠り所の喪失へ。
7.クライエントの多重債務、トラブルによる「偽名」
8.生きがいとは何か。望ましい生き方とは。
 アルコールや薬物の依存症、精神疾患、ストレス、メンタルヘルス

 人間関係貧困から、繋がりの再構築への挑戦。
 孤立を越えて、それぞれの傷と痛みを通して繋がる。痛みの共有と弱さの連帯。

 自尊感情の回復へ。
 「自分には価値が無い」という無力感、自尊感情の欠如を超える。
 他者の評価で価値が決まるのではない。
 自分の意味付けで、自分の価値を定める。
 つまり、過去の出来事は変えられないが、その意味は変えられる。
 結果が全てではなく、努力のプロセスによる人間的な成長こそ重要であろう。


3節 ソーシャルワークを構成する要素
1 ソーシャルワークの構成要素
*ソーシャルワークの基本的枠組み・構成要素(NASW 1958)
「目的」、「価値」、「知識」、「方法・技能」、「権限の委任」。

*ソーシャルワークの目的
・国際ソーシャルワーカー連盟:人間の福利(ウエルビーング)の増進を目指し社会の変革を進め、人間関係における問題解決、人びとのエンパワーメントと解放を促す。

・ソーシャルワークの目的とは利用者の社会生活機能の強化であり、QOL(生活・人生の質)の向上や、自己実現を高めることである。
・自己実現とは、より自分らしく生きるライフスタイルであり、我慢ではなく、なりたい自分になる。
あくまでクライエント中心である。

・全米ソーシャルワーカー協会(1981年の定義)
①問題の解決・緩和、②問題の予防、③エンパワーメント

・社会生活の逆機能(目的に対してのマイナスの作用)や不全を弱め、質の高い生活を実現する。

*ソーシャルワークの価値 テキストP10
・ソーシャルワークにおける判断を方向付けるのが、価値である。それは、他者を援助し支える価値意識であり、また援助専門職としての行動を動機づけ、態度や姿勢に反映される価値観である。

・ソーシャルワークの価値・抜粋
・ソーシャルワーク専門職としての価値の優先(個人的・社会的・所属組織の価値等の影響を受ける ⇒ コンフリクトを生じる場合もある。摩擦を経て相互理解が促進)。
・ソーシャルワークは、価値を実践の基盤とする。
・価値は、サービス対象の選定・優先度、援助方法の選択、支援の方向性、時間・社会資源の配分等の判断の拠りどころとしても重要である。

◎参考:ソーシャルワークの基本的価値前提 (ブトゥリム)
 ①人間尊重:人間は,その人の能力や行動に関係なく人間であること自体で価値がある。
 ②人間の社会性:人間はそれぞれ独自性をもった生きものであるが,その独自性を貫徹 
  するのに,他者に依存する存在である。
 ③変化の可能性:人間は,変化,成長,向上する可能性をもっている。
 ゾフィア・ブトゥリム:『ソーシャルワークとは何か一その本質と機能一』川島書店
・ブトウリムによれば,これらはソーシャルワークに固有の価値とはいえないが,ソーシャルワークに不可欠な価値である。

*補足:価値・倫理の必要性

*国際ソーシャルワーカー連盟(IFSW)ソーシャルワークの定義:価値

価値
ソーシャルワークは、人道主義と民主主義の理想から生まれ育ってきたのであって、その職業上の価値は、すべての人間が平等であること、価値ある存在であること、そして、尊厳を有していることを認めて、これを尊重することに基盤を置いている。ソーシャルワーク実践は、1世紀余り前のその起源以来、人間のニーズを充足し、人間の潜在能力を開発することに焦点を置いてきた。人権と社会正義は、ソーシャルワークの活動に対し、これを動機づけ、正当化する根拠を与える。ソーシャルワーク専門職は、不利益を被っている人びとと連帯して、貧困を軽減することに努め、また、傷つきやすく抑圧されている人びとを解放して社会的包含(ソーシャル・インクルージョン)を促進するよう努力する。ソーシャルワークの諸価値は、この専門職の、各国別並びに国際的な倫理綱領として具体的に表現されている

*倫理綱領
◎日本においては「ソーシャルワーカーの倫理綱領」が1986年に日本ソーシャルワーカー協会が宣言した。段階的な改訂の後、2005年に最終案が取りまとめられ、国内の各専門職団体が承認し採択している。

*社会福祉士の倫理綱領 日本社会福祉士会
<前文>
 われわれ社会福祉士は、すべての人が人間としての尊厳を有し、価値ある存在であり、平等であることを深く認識する。われわれは平和を擁護し、人権と社会正義の原理に則り、サービス利用者本位の質の高い福祉サービスの開発と提供に努めることによって、社会福祉の推進とサービス利用者の自己実現をめざす専門職であることを言明する。
われわれは、社会の進展に伴う社会変動が、ともすれば環境破壊及び人間疎外をもたらすことに着目する時、この専門職がこれからの福祉社会にとって不可欠の制度であることを自覚するとともに、専門職社会福祉士の職責についての一般社会及び市民の理解を深め、その啓発に努める。
(略)国際ソーシャルワーカー連盟が採択した、次の「ソーシャルワークの定義」(2000年7月)を、ソーシャルワーク実践に適用され得るものとして認識し、その実践の拠り所とする。(略)

*価値と原則
Ⅰ(人間の尊厳)
 社会福祉士は、すべての人間を、出自、人種、性別、年齢、身体的精神的状況、宗教的文化的背景、社会的地位、経済状況等の違いにかかわらず、かけがえのない存在として尊重する。
Ⅱ(社会正義)
 社会福祉士は、差別、貧困、抑圧、排除、暴力、環境破壊などの無い、自由、平等、共生に基づく社会正義の実現を目指す。
Ⅲ(貢献)
  社会福祉士は、人間の尊厳の尊重と社会正義の実現に貢献する。
Ⅳ(誠実)、Ⅴ(専門的力量)(略)

*NASW(全米ソーシャルワーカー協会)倫理綱領(1997年) テキストP11
・他者への奉仕
・社会正義
・人間に対する尊厳と自尊心の確保
・人間関係の重要性
・誠実であること
・専門的能力や力量を有すること

*ソーシャルワーカーの倫理のポイント
・ミクロの援助と、マクロのソーシャルアクション
・自己への利害を優先してはならない-つまり自己を顧みずに他者のために
・マイノリティのアドボカシーが主要な役割
・専門的援助関係は、変化の媒介である。クライエントと援助者の双方向の人間関係は不可欠
・自尊心の問題
・信頼を獲得する行動-非自発的・拒否的なクライエントならなおさら
・成長する専門職=ソーシャルワーカー


*差異に対する感受性
ソーシャルワーカーは,常に各クライエントの(a)民族的、社会的、経済的地位や宗教、(b)性的な特性、(c)性別,(d)年齢そして精神的身体的状態,を受容し,尊重する。
このような感受性は,専門職の自己覚知、特定の集団や個人についての専門的知識を必要とする。

<補足:ソーシャルワークの価値・まとめ>
①人間であること自体の固有の価値
援助者は、人間であること自体に固有の価値をおくこと、つまり人間の本質に根源的価値をおくことが重要である。人間の尊厳は不可侵である。

②個人に対する価値と、自己決定に対する価値
 人間としての個人、その個別性を最大限に尊重することが重要である。
 また、利用者の自己決定の尊重と、権利(人権)擁護のバランスが求められる。
◎自己決定とは、利用者の人格を尊重し,自分の問題・課題、生活や人生について自分で判断し,決定する自由があるという理念に基づいた援助関係の原則である。

③人道主義に対する価値
人道主義を貫くことが求められる。
◎人道主義とは、博愛に基づき,人間全体の福祉の実現をめざす。人間愛を根本とし,非人間的な行いを排する。

④自己実現と生活の質に対する価値。
 利用者の自己実現を可能にするために、個々の利用者の潜在的可能性、発達可能性を確信すること。

*価値が重要である理由
・社会福祉に関わる組織は、価値に基づいて存在し、不可欠なものである(差異、その程度等があるが)
 価値のために、組織(例:運営)や職員個人(例:処遇)としての倫理的ジレンマ等の困難をも抱える。
 価値は実践の方向を導き、動機付けにも繋がるが、燃え尽きの要因の一つにもなり得る。

*倫理的ジレンマ
 ⇒テキストp12参照
・価値のハイラキー

*補足:川村隆彦によるソーシャルワーカーの倫理的ジレンマの構造。 略


・福祉施設の課題と成長する援助者
 社会福祉サービスの人間的側面が、ますます求められている。
 福祉施設とは、関わる全ての人を、肯定し、承認する場であり、それぞれの人生にとって意味のある活動を促進する場である。その源は、人を全人的に活かすために、危機、困難のなかでも寄り添い、共に歩くことにあるのではないか。
 援助者(職員やボランティア)は、その職務、活動によって磨かれて成長し、自己実現という豊な実を結ぶ。実践における人との関わり、とりわけ実践の困難のなかで内省し、学ぶことができる。
 このような集まり、コミュニティは、現代社会において、障害者も周囲の人々(職員や家族)も、より人間らしく生きる希望がある。


日刊 社会福祉ニュース 関連情報クリップ
生活困窮者支援へ相談支援員の研修開始
2015/04/18 09:00 【デーリー東北】

引用「生活困窮者自立支援制度が4月からスタートしたのを受け、青森市で17日、相談支援員を対象とした研修会(青森県社会福祉協議会主催)が始まった。
 制度は生活保護に至っていない生活困窮者に対する「第二のセーフティーネット」として位置付けられており、参加者は初日、制度の背景などを確認した」。引用ここまで

福島にNPO起業支援の学校、5月開講 子育て支援等コミュニティビジネス 対話型の授業
(2015年4月19日 福島民友ニュース)

引用「NPO法人起業支援ネットが5月30日、福島市に「起業の学校福島キャンパス」を開講する。18日、同市で説明会を開いた。関戸校長(68)は「困難を抱えた地域でこそ、『起業の学校』の理念を生かしたい」と、起業支援へ決意を語った。
 「起業の学校」は起業ノウハウの伝授ではなく、対話型の授業で受講生に自分との向き合いを促し、事業計画の作成につなげるという独特の手法をとる。2005(平成17)年の開講以来200人が受講し、60人が起業。介護や子育て支援など地域の需要に応じた「コミュニティービジネス」で活躍する。「身の丈の起業」が関戸校長の信条だ。本県には新しい事業を受け入れる土壌があると考える。「日本の困難さや矛盾が凝縮されて存在する福島でこそ、理念が生かせる」。引用ここまで

<関連資料 バックナンバー>
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 社会福祉士の仕事等の説明会。貧困、生活困窮等の福祉問題も対象とする社会福祉士の相談援助について、 貧困問題に20年間、取り組み続けている当ブログ筆者(本校社会福祉士養成学科 専任教員)が、詳しくお話します。ご質問、ご相談も歓迎です。会場は高田校舎です。



by yrx04167 | 2015-04-27 15:51 | Comments(0)