課題中心アプローチとは ソーシャルワーク 論文 貧困 生活困窮者 簡易宿泊所街民間支援 貧困リバイバル

社会福祉士受験対策web夏期講習 相談援助の理論と方法編 第3回
課題中心アプローチ
*課題中心アプローチの概要

・クライエントの訴える具体的な生活問題を中心に,クライエントとともに課題を設定,遂行する。
 具体的な作業計画の策定、実行、評価を通じて、短期間内で問題の解決を図る。

・このアプローチは,援助の枠組を提供するものでもあり,ソーシャルワークの重要なアプローチとして広く認知され応用されている。

1 起源と基盤理論 
・1970年代、リードとエプスタインにより理論構築された。
 心理社会的アプローチや問題解決アプローチ、行動変容アプローチから影響を受けた、折衷的なアプローチであり、各アプローチの基盤となる理論を摂取している。
・効果測定に基づく実証主義的な手法で「課題中心アプローチ」を開発した。

<課題中心アプローチの特徴>
・クライエントとともに課題を明確にし,計画的かつ短期に援助する方法である。

・最大の特徴は、短期処遇を明確に示していることにある。短期間の計画的な実践を志向し、プラグマティズムの影響を受 けている。プラグマティズムとは、「実用主義」と訳される。

3 適用対象・適用課題
・限定された期間において、クライエント自身が認識し、解決できる可能性がある具体的な生活諸課題が対象である。分野・領域は柔軟性をもって適用が可能とされる。

<課題中心アプローチの対象問題、問題選択>
*第1の問題-対人関係の葛藤
・人と人との交わり(相互作用)のなかで生ずる摩擦であり,家族関係の問題。

*第2の問題-社会関係上の不満
 関係における孤独、他人への過度の依存、積極性の欠如等、他者との付き合いのなかでの不満。

*第3の問題-組織体との問題
・福祉サービス機関や病院,学校などとの関わりのなかで生ずる葛藤。

*第4の問題-役割の遂行に伴う困難
・自分に課せられた社会的役割を遂行することに困難を感じる場合等である。

*第5の問題-社会的過渡期の問題
・社会的状況が変化することによって生ずるものであり、適応上の困難などがある。

*第6の問題-反応性の情緒的苦悩
・特定の出来事がきっかけとなって生じる不安や抑うつ状態をいう。

*第7の問題-不十分な資源
・経済的な問題、住まい、医療など適切な資源が無いことの問題である。

4 支援焦点
・クライエント自身の段階的な問題解決行動により、問題解決と社会的機能を改善する。

5 支援展開
・課題中心アプローチの支援過程(3段階・4ステップ)
*第1ステップ-問題の明確化と選択

 クライエントの認識と解決可能な具体的問題を選択。
<補足>
 問題の内容を具体的に例をあげる。
 問題が生起する場所と,解決に役立つフォーマル・インフォーマル資源などを整理する

*第2ステップ-契約
 目標を設定し、面接の回数や頻度・期間を合意し、動機づけを高める。

*第3ステップ-課題遂行
 クライエントとの協働作業。行動療法的方法(ロールプレイ、シミュレーション等)を活用する。

・ワーカーとクライエントがこれらの点で合意に達し、課題スケジュールが明確に定まれば,ロールプレーや行動リハーサルといった方法を用いて行なわれる。
・リハーサルが成功すれば、実際の場面でクライエントによって課題が実行に移されることになる。

*第4ステップ-終結
・評価により、課題の修正や契約の更新を検討する。

・基本的に3~4か月間に、8~12回の面接を実施する。

<課題中心アプローチ 事例>
 障害児がいる家族への課題中心アプローチによる支援に関する次の事例
 T子(6歳・女児)は,高熱を出し,痙攣発作を起こした後,意識障害が生じた。入院中のT子について,担当医師から病院のソーシャルワーカーに依頼があった。
 T子は,結婚歴15年の父親(40歳),母親Mさん(38歳)と3人暮らしである。
 Mさんが病院の相談室に思い詰めたようにうつむきかげんで入室し,しばらく沈黙があり,「これまでずっと泣くのをこらえてきました」と,現在と将来の不安や看病疲れ,娘の元気なときの様子を泣きながら話し始めた。さらに続けてT子の今回の病気を機に家族問題が発生したこと,しばしばT子のことをめぐって夫と口論になっていることを話した。加えて夫の面会が減っているのは娘の状態を見るに忍びないのだと思うと夫へのいたわりを示しながらも,Mさんは家族問題をなんとか解決したいと言った。
 数回の面接を通して,Mさんは母親として,妻として努力している気持ちを整理でき,現状での取り組むべき具体的課題が明らかになった。
 その中で最も優先的に取り組む課題として「Mさんの看病疲れの軽減」を取り上げ,ソーシャルワーカーはMさんとともにこれを確認した。それに対する計画は①Mさんと週1回のサポート面接実施の取り決め,②病棟でのT子に対する看護体制の調整,③Mさんと病棟ボランティア活用についての合意形成である。
 その後も医療費の助成制度や社会資源の活用,また,T子とのかかわりや今後の療養先の計画などについて,Mさんや夫に個別面接を行い,彼らとともに取り組む課題を決定した。夫は,娘の病状を心配し,娘の顔を見るのがつらいことなどを話していたが,次第に心の整理ができたことでT子の世話をし始めた。
 在宅療養の準備のために医療担当スタッフが家族指導を行い,地域の関係機関との連携を図った。援助開始から2か月後,T子の病気は徐々に回復に向かい,それとともにMさん夫婦も精神的に安定してきた。近いうちに自宅退院となることが決まった。
(以上、社会福祉士試験問題の事例より)

2 課題中心アプローチを理解するためのキーワード
*課題

 クライエント自身によって着手される、一連の問題解決行動。

*計画的短期性
・課題を設定し、援助を計画的に実行する。

・取り組む問題を選び出す視点
①クライエントが認める問題を対象とする。
 クライエントが自ら「これが私の問題である」と認めた問題を優先的に処遇の対象とする。
②対象となる問題はクライエント自身の努力によって解決できうるもの。
 現実の場面でのクライエントの行動が重要と考える。現実の場面で,ワーカーの援助なしにクライエント自らが行動すること、自らが解決できなければならない。
③具体的な問題。

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貧困問題、生活困窮者対象のソーシャルワーク、社会福祉
 当ブログ筆者の論文
「簡易宿泊所街・横浜寿町における民間支援活動-歴史的経緯の概要-」

1.貧困・簡易宿泊所街「寿町」・「支援」
(1)はじめに-貧困のリバイバル-
 高度経済成長を経た日本社会は、「一億総中流」と言われた、多くの人々が、生活が更に豊かになっていくと実感できる状況を謳歌した。社会は、貧困を忘却し、もはや貧困は過去のものとなっていた。また、貧困の忘却の傾向は、社会福祉の領域においても、例外ではなかったと思われる。しかし、貧困は、顕在化していなかったに過ぎなかった。生活に困窮する人々は、ひっそりと、「豊かな社会」の周縁に追いやられていた。
 所謂「失われた10年」を経て、近年、貧困や格差の拡大は、社会問題化しつつある。書籍や新聞、テレビ番組等の各種メディアにおいても、様々な切り口で、関連したテーマが取り上げられている。それは甦った貧困、もしくは貧困のリバイバルとも言えるかもしれないが、誰も望まないものであろう。また、社会福祉領域においても、貧困の今日的な概念である「社会的排除」と、問題の緩和を図る「ソーシャル・インクルージョン」等が昨今、注目されている。
 しかし、現在のところ、社会的排除の緩和を目指し、ソーシャル・インクルージョンを具体化する、この領域における民間支援活動は広範なものとなっていないと思われる。貧困に対してのキャンペーンや、各種の調査等は行なわれているが、地域における新たな支援活動の拡大は、先駆的な実践が現れるに留まっている。
 貧困を巡るこれらの課題に対して、地域社会や民間支援活動は、如何に取り組むべきなのか。言うまでもなく、生活保護法による生存権・生活保障を中心とした、公的な支援施策が不可欠である。しかし、民間支援活動が果たすべき、固有の役割があると考えられる。
 戦後、貧困領域における民間支援活動は、簡易宿泊所街である、東京「山谷」 や、大阪「釜ヶ崎」 、横浜「寿町」と、「寄せ場」と呼称される日雇労働市場である名古屋「笹島」 等で行なわれてきた。
 本論文は、簡易宿泊所街・寿町における民間支援活動のあり方と、歴史的な経緯について、先行研究・文献・資料の調査から、その概要を述べる。寿町の民間支援活動は、子どもたちへの支援を発祥とし、セツルメント活動や医療支援、福祉施設開設等の経緯を経て、活動の内容と形態ともに多様化しつつ、現在に至っている。その歴史的経緯を概括し、今日の貧困領域におけるソーシャルワーク実践やボランティア活動を含めた支援への示唆を得ることを試みる。
 略
 本論文においては、寿町の民間支援活動の経緯を整理するために、時期を下記のように三期に区分する。
 第一期 民間支援活動の「開始・定着期」(1964年から1980年代前半まで)
 第二期 民間支援活動の「発展期」(1980年代後半から2000年まで)
 第三期 民間支援活動の「模索期」(2001年以降)
 略
 「寿町」地域は、横浜市中区の簡易宿泊所街である。この地域は、寿町2丁目の一部及び3丁目と4丁目、扇町3丁目の一部と4丁目、松影町3丁目と4丁目、三吉町の一部、長者町1丁目の一部を含む、簡易宿泊所の密集地域である。面積は、およそ0.06平方キロメートルである。
 「簡易宿泊所」とは、旅館業法における4種(ホテル、旅館、簡易宿所、下宿)の旅館営業許可業種のうちのひとつである。
 簡易宿泊所街は、「ドヤ街」とも言われているが、「ドヤ」は、宿の逆語であり、旅館やホテルと区別された、日雇労働者の簡易宿泊所を意味する。簡易宿泊所街は他に、東京(台東区・荒川区)の「山谷」や、大阪(西成区)「釜ヶ崎」が現存する。加えて、名古屋市(中村区)「笹島」、川崎、福岡等には日雇労働市場「寄せ場」が存在する。
 こうした地域はまた、「寄せ場」とも言う。寄せ場は、大都市内のドヤの密集地域に位置付く、日雇労働者の就労場所をいう。多くの場合、寄せ場は、周辺スラムとともに複合地域を形成する。寄せ場は、日雇労働者が集まる都市下層地域として、固有の社会と文化(生活様式)をもっているとも言われている。
 また、これらの地域においては、民間支援活動が行なわれている。何れの地域も、炊き出しと呼ばれる食の支援と、パトロール、もしくは夜回りという野宿の場への巡回による支援、医療支援という三大領域が共通している。各地域・領域の支援活動は、年末年始期の「越冬活動」等を連合して取り組み、他に日雇労働者の労働組合と連携すること等においても共通する。
 寿町も、簡易宿泊所街のひとつであり、2007年の時点では、120軒の簡易宿泊所が集中し、6301人が宿泊・居住している。このうち、3666人が60歳以上であり、4893人が生活保護の住宅扶助を受給している 。寿町に、かつての日雇労働者とその家族・子どもの街の面影は無く、現在は、高齢者等の生活保護受給者が集住する、簡易宿泊所街である。
 略
山谷とは、東京都台東区と荒川区にまたがる、簡易宿泊所街・寄せ場である。「泪橋交差点」を中心にした、簡易宿泊所が集中する地域である。
釜ヶ崎は、大阪市西成区萩之茶屋周辺の簡易宿泊所街・寄せ場である。1966年の「第五次釜ヶ崎暴動」以降は、行政や大阪府警により「あいりん地区」の呼称が用いられるようになった。
笹島とは、名古屋市中村区名駅南にある名古屋中公共職業安定所の周辺の寄せ場である。簡易宿泊所街は無く、日雇労働市場のみである。


*以上、当ブログ筆者の論文より抜粋
 「簡易宿泊所街・横浜寿町地域における民間支援活動-歴史的経緯の概要-」『研究紀要』第18巻第1号,
 学校法人敬心学園日本福祉教育専門学校福祉文化研究所,2010年,単著

<当ブログ筆者の論文 最新>
当ブログ筆者の論文 最新 「福祉施設職員のストレスケア サポーティブ研修プログラムの開発」
日本福祉教育専門学校 研究紀要第23巻1号 37頁から55頁 平成27年4月


「貧困問題と相談援助」 当ブログ筆者の講演 音声記録の一部を公開中

<関連資料 ブログ記事バックナンバー>
貧困・低所得・生活保護 : 社会福祉士受験支援講座・教員日記


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内容 貧困・生保受給者対象のグループワークプログラムと留意点等を、講師(ブログ筆者)の実践や事例に基づき解説

「福祉施設職員の職業倫理と福祉マインド、ハラスメント予防」講座番号32
内容 福祉施設職員に求められるモラルや福祉マインドの基礎と、ハラスメントの予防を含めて解説。

「グループワークの基礎」講座番号33
内容 福祉施設におけるグループワークのプロセス、方法、プログラム等の基礎を解説。

 上記は当ブログ筆者が担当する研修の一部です。
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by yrx04167 | 2015-08-27 13:31 | Comments(0)