相談援助の基盤と専門職講義概要 倫理的ジレンマ事例、看取り、リアリティショック、生命倫理とは

相談援助の基盤と専門職 前期第10回講義レジュメ概要1
 当ブログ筆者(本校専任講師、社会福祉士)が、社会福祉士養成学科にて、2016年6月に講義            
<この記事は、ダイジェスト版と講義当日の補足。レジュメ完全版は講義にて配布。解説の詳細は講義にて>


8章 相談援助専門職の倫理
3.倫理的ジレンマ
*はじめに

・価値・倫理の必要性-リアリティ・ショック。実践の指針としての価値・倫理。
・リアリティ・ショックとは、理想と現実のギャップとも言えよう。
 対人援助領域の専門職の実習や、これらの新人職員の実践で語られることが多い傾向にある。
 高い期待と実際の職務での失望させるような経験との衝突である。モチベーションに影響を与える。
 これらを語る場、シェアの機会が必要である。

・例えば、看取り(ターミナルケア)における人間の尊厳、最期とその後の支援のあり方。理想、あるべき姿と実践の限界とのギャップ。
 事例

・実習は、目指す専門職や、実践のモデルに出会う機会でもある。


A.倫理的ジレンマとは テキストP125
・倫理的ジレンマとは、相反する複数の倫理的根拠が存在し、何れも重要と考えられる場合、専門職として葛藤し、方針の決定が困難となることである。
・ソーシャルワーカーはクライエント、所属組織、行政、専門性、社会のそれぞれ、または全てに対し義務を負っている。
・職員としての義務と、専門職としての価値が対立する場合、どれを優先するのか等、ジレンマが生じる。→全てが尊重すべき価値であり、果たすべき義務でもある。

*倫理的ジレンマとは テキストP125参照
・倫理的ジレンマには様々なテーマがあり得る。事例で解説-当日の講義を参照。
 自殺(願望)を巡って。
 他害行為(復讐)-虐待者に対するものだったら-自己と他者を傷つけることは許されないが、ジレンマは深まる。
 緩慢な自殺・依存症。生活習慣病と食生活等の健康維持のモチベーション。
 HIVを巡って。
 抑制
 利用者の死、看取り
 個別援助において生命倫理に関わること-人間の生命の誕生と最期をどのように支えるのか。
 当事者の生活による限界もある。援助者自身の信条と、専門職としての責任のはざま。

 事例 精神疾患を持つ利用者と癌。

 事例 家族、身寄りが無い当事者のインフォームド・コンセント。

・また、利用者と施設、利用者と職員、利用者とコミュニティ、施設とコミュニティ等のコンフリクト(摩擦)が生じることもあるが、これらを含んだ結びつきも生じる。

・ジレンマは、メゾ・マクロシステム(施設、地方自治体等)に内在する根底的な問題を明らかにするという側面もある。システムの改善への展望を開くものである。
 個人、組織にとっても、自らの内面を客観的に見つめ直す機会となる。ジレンマは、自己の探求の機会ともなる。
 意識の変革からはじまり、持続可能な実践、組織への転換、発展にも繋がりうる。


*「自己決定」を巡って
 事例:医療を拒否する人-看護や介護、福祉サービス、面接・訪問、食事・入浴の拒否を含めれば多くの事例に該当する。
・統合失調症で引きこもり、診療に来ない、拒否。入院の拒否。食べない、入浴しない。
 認知症高齢者、アルコール依存症等。
 生活困窮者支援、医療ソーシャルワークの関連する課題でもある。


*セルフネグレクト
 必要な食事をとらず、医療を拒否し、不衛生な環境で生活を続け、家族や周囲から孤立し、孤独死に至る場合がある。
 生活困窮者支援、地域福祉の今日的な問題のうち、主要なものの一つであろう。


 クライエント本人の存在を承認することから、本人が見失った自らの尊厳、いのちの価値、自尊感情があることを言動で伝え、尊重する関わりがはじまる。
 援助者として、クライエントの隣人になること、関わりを深めること。


*自己決定とクライエントの保護義務
・クライエントの自己決定が、本人に不利益、脅威を与えると予想される場合。
 事例:危機的状況であるのに、治療・サービスの拒否を自己決定するホームレス。

・危機・脅威の内容や程度の検討、クライエントの判断能力の確認、情報の有無、真の自己決定であるのかを検討する必要がある。
 第三者の権利・利益の侵害の可能性も確認する。

<考察のポイント>
・ソーシャルワーク実践で生じるジレンマが 全て倫理的なものではない。多様な要素が含まれることもある-利用者との関わりの課題、組織運営等のシステムの課題が挙げられよう。
 ジレンマが、制度的な問題であるのか。
 組織的な制約が要因になっているのか。
 ⇒それぞれ、解決の手法が異なる。
 社会福祉の全ての問題を、倫理的な問題にすり替えてしまうことは、解決から遠ざかることになる。

・社会における多様性は、既に進み、定着の段階を迎えている。
 寛容を掲げるソーシャルワーク、倫理的、理論的根拠が求められる。


*守秘義務と第三者の利益を守る義務 P126
・守秘義務は、専門職の明確な義務であるが、状況によりジレンマの要因となる。
・事例:「加害」側とピアカウンセリングの「ルール」。
 HIVのケース。

・クライエントが第三者を害する可能性に関する情報等は、守秘義務と第三者の権利や利益を守る義務が対立する。
・第三者への影響の度合いや、情報の信憑性などを考慮して対処するべきである。
・社会福祉士及び介護福祉士法 抜粋
(秘密保持義務)
第四十六条  社会福祉士又は介護福祉士は、正当な理由がなく、その業務に関して知り得た人の秘密を漏らしてはならない。社会福祉士又は介護福祉士でなくなつた後においても、同様とする。

*クライエントに対する義務と所属組織に対する義務 とのジレンマ。 P126

 テキスト事例:組織・同僚を守るため、施設の利用率向上のためのジレンマ等。
・特に、社会福祉以外の価値に基づく組織ではこれらの差異が生じる可能性が比較的高い。
・一時しのぎの対応ではなく、日頃から所属組織の価値・方針の改善を図る。

*同僚に対する義務と専門性への義務 P126



・価値・倫理は、職員間、組織との間で互いに影響を与え合うものでもある。
 ⇒対話と相互理解の必要性。ソーシャルワーカーは、媒介の役割を担う。

・個人の内面でも、価値、倫理は、せめぎあう。
例えば、専門職等としての価値、あるべき姿
 自らの価値
 組織の価値
 他の専門職の価値
 市民社会の価値

<受験対策キーワード 講義の練習問題から>
行動変容(行動療法)アプローチ

ストレングス
サレエベイ(サリービー Sallebey,D.)
「人間は困難でショッキングな人生経験を軽視したり,人生の苦悩を無視したりせず,むしろこのような試練を教訓にし,耐えていく能力である復元力を基本にしている」

コノプカ(Konopka,G.)

ジェンダー・トラック
ジェンダー・セグレゲーション

ナショナルミニマム
ノーマライゼーション
ソーシャルインクルージョン

「スティグマの対象となり,否定的な評価を受けてパワーが欠如した状態の人々」

 詳しくは、講義を参照。


ソーシャルワーカー自己覚知、自己理解方法、スーパービジョン、ワークショップとは 相談援助理論と方法 講義概要


地域福祉の理論と方法 練習問題 初級
社会福祉士・精神保健福祉士共通科目 基礎
 <この4月から学習を開始した受講生向き練習問題入門編>


問題1 企業の社会貢献活動に関する次の文章の空欄A,B,Cに該当する語句の組み合わせとして,正しいものを一つ選びなさい

 我が国で,行われている企業の社会貢献活動の形態としては,芸術文化活動を支援する< A >と,博愛精神に基づき自発的に行われる社会的活動を中心とする<  B  >に大別される。また,平成2年に日本経済団体連合会が打ち出した1%クラブ,従業員と企業が共に同額の寄付を行う<  C  >などの活動が行われ,いずれも地域社会における「企業市民」としての新しい企業のあり方を考える上で重要なものである。
     A         B          C
1 カリタス----フィランソロピ--ユナイテッドウェイ
2 メセナ-----カリタス-----ステークホルダー
3 フィランソロピー--メセナ-----ステークホルダー
4 メセナ------フィランソロピー--マッチングギフト
5 フィランソロピー--カリタス-----ユナイテッドウェイ

心理学理論と心理的支援 練習問題 初級
社会福祉士・精神保健福祉士共通科目 基礎


問題2 心理療法に関する次の文章の空欄A、B、C、に該当する語句の組み合わせとして正しいものを一つ選びなさい。
 箱庭療法は、< A >によって心理療法の技法として発展・確立された。箱庭療法では< B >にして保護された空間の中で、クライエントの奥底の眠るイメージに形を与えることに意味がある。治療者は箱庭作品の流れの中で読み取っていく< C >が必要である。
      A                B         C
1 カルフ(Kalff,D.) ―――― 制限的―――― 洞 察
2 カルフ(Kalff,D.) ―――――自 由―――― 系列的理解
3 ローエンフェルト(Lowenfeld,M.)――自 由―――― 洞 察
4 ローエンフェルト(Lowenfeld,M.)―――制限的―――― 系列的理解
5 ユング(Jung,C.)――――――――――自 由―――― 分 析

低所得者に対する支援と生活保護制度 練習問題・初級

問題3  生活保護制度の生活扶助について、次の記述の空欄AとBとCに該当する語句の組み合わせとして正しいものを一つ選びなさい。

 生活扶助は、個人単位の費用である第1類の経費(飲食費・被服費等)と(  A  )の費用である第2類の経費(光熱費・家具什器等の世帯共通費用)、各種( B )、及び一時扶助と勤労控除を中心に構成されており、原則として( C )により一か月分を世帯主又はこれに準ずる者に対して交付される。
<組み合わせ>
    A        B      C
1 世帯単位    加算    金銭給付
2 地域単位    加算    現物給付
3 家族単位    賞与    金銭給付
4 親族単位    慰労金   日用品配給
5 夫婦単位    恩賜金   現物給付

生活保護法

*解答・解説:1%クラブ、企業の社会貢献、企業ボランティア、マッチング・ギフト制度、ボランティア休暇とは
箱庭療法、ローウェンフェルト、生活扶助、経常的最低生活費、臨時的最低生活費、基準生活費とは下記をクリック



当ブログ筆者執筆の新刊
精神保健福祉援助演習(専門)第2版
精神保健福祉士シリーズ 10
福祉臨床シリーズ編集委員会 編

ISBN978-4-335-61117-9
発行日 2016/02/22 弘文堂

第8章 地域における精神保健問題(依存症と生活困窮)

2017社会福祉士国家試験過去問解説集 第26回-第28回全問完全解説 日本社会福祉士養成校協会編集 中央法規出版
ISBN978-4-8058-5338-2

 450問を選択肢ごとに詳しく解説、科目別ポイント。過去3年分の国家試験全問題を掲載。最新の制度や数値にアップデート。

貧困問題と相談援助:当ブログ筆者講演の音声記録の一部を公開中

<当ブログ筆者の論文>
当ブログ筆者の論文 「福祉施設職員のストレスケア サポーティブ研修プログラムの開発」
日本福祉教育専門学校 研究紀要第23巻1号 37頁から55頁 平成27年4月


<当ブログ筆者の論文 最新>
「福祉施設職員のメンタルヘルスとリワークの支援」
日本福祉教育専門学校 研究紀要 55頁から73頁


<ブログ記事 バックナンバー>
当ブログ記事バックナンバー 福祉施設職員研修



第13回 敬心学園学術研究会
テーマ 「保健、医療、福祉分野における人材育成 -地域・産学との連携を中心として-」

日時:2016年6月26日(日)10時~17時
会場:日本福祉教育専門学校 高田校舎 (東京都豊島区高田 3-6-15)



*解答・解説は下記をクリック



問題1 答4
 メセナ-------フィランソロピー ---マッチングギフト

解説
*メセナ
 フランス語で「文化の擁護」の意味から,日本では特に企業による芸術文化活動の支援をさす。企業の社会貢献活動として1980年代後半からの好景気の時期に,劇場の設立や美術館の運営など,多くの企業でさまざまな活動が取り組まれた。当初は経営者の意向が強く影響した独善的な活動も多かったが,近年はメセナ担当部署が主導権を握り,地道な活動を行う方向へと転換している。

*フィランソロピー  
 直訳すると「博愛(主義)」「慈善(行為)」。ギリシャ語の「人間を愛する」という意味のことばが語源。アメリカでは,企業の「社会貢献」の意で広く使用される。1990年に経済団体連合会(現・日本経団連)によって,企業は不特定多数への貢献を経営の柱として位置づけるべきとする「経団連企業行動憲章」が打ち出され,営利活動だけでなく「良き企業市民」として地域社会に貢献していく気運が高まってきている。積極的な社会貢献の推進のためには企業による環境づくりが欠かせない。

*マッチング・ギフト制度
 企業の社員が福祉・教育などの団体に寄付をしたとき,その企業が社員の寄付金に同額またはそれ以上の寄付金を上乗せして寄付する制度。この制度は,アメリカで1960年代に行われはじめた。社員の社会貢献と同時に社員の意向を尊重した企業の社会貢献の一つであり,寄付の多様化と活性化に対応した仕組といえる。日本では大企業を中心に制度の導入が行われているが,普及度は低い。

*1%クラブ One % Club
 経済団体連合会(現・日本経団連)によって1990年から発足した団体。会員は,経常利益の1%以上(法人会員),可処分所得の1%以上(個人会員)を目安に社会貢献活動のために拠出することに努める企業および個人で,2001年現在で法人300社あまり,個人1500名あまり。広く国民各層において,寄付やボランティア活動が活発化するよう機運を醸成し,市民活動団体をはじめとするNPOと企業,個人を結びつけるコーディネーターとして,社会のニーズに合った社会貢献活動を推進することを目的とする。会員への社会貢献活動の情報提供やボランティア・セミナーなどを行っている。

*企業ボランティア
 企業が社会貢献活動の一環として行う活動。1990年には「フィランソロピー協会」,経済団体連合会(現・日本経団連)の「1%クラブ」など企業の助成団体が次々と設立され,企業が社会貢献活動を行っていく基盤が整えられ始め,「ボランティア休暇」制度を取り入れる企業も増えてきている。近年は,「企業の業務の一環」としての企業そのものが推進するボランティアから,企業に所属する個人が自己実現を求めて自発的に行うボランティア活動の増加へと傾向が変化してきている。

問題2 答2
 カルフ(Kalff,D.) ―――――――自 由―――― 系列的理解
解説
箱庭療法

 ローウェンフェルト(Lowenfeld, M.)の世界技法をカルフ(Kalff, D. M.)がユング心理学の知見を基本において発展させ,河合隼雄が日本に紹介したもの。内側が青い内のり57×72×7センチメートルの箱に砂を入れたものとミニチュア玩具を用いて,セラピストの前で作品をつくっていく技法。子どもから大人まで対象は広く,非言語的素材を用いることで導入や表現がしやすい。クライエントの自己治癒力を促すとされる。
 箱庭の作品を見たとき,全体として受ける感じ,印象のようなものを大切にしなければならない。
 箱庭作品の流れの中に,何らかのテーマと呼べるようなものを見いだせることが多い。
 子どもの場合,箱の枠を超えて玩具を移動させながら遊ぶのは自我の境界がまだ薄いことを反映していると考えることができる。
 単独では分かりにくい作品があっても,作品をシリーズとして見ることで,理解が可能となることがある。

問題3  正答1
 Aは世帯単位、Bは加算、Cは金銭給付が該当する。

*生活扶助
 生活保護の八つの扶助の一つ。困窮のため最低限度の生活を維持することができない者に対して,衣食その他日常生活の需要を満たすために必要なもの等を,原則として居宅で金銭給付する。経常的最低生活費と臨時的最低生活費(一時扶助費)とに分けられ,前者はさらに基準生活費(個人ベースの第一類と世帯ベースの第二類)と各種加算とに分けられる。生活扶助基準は,現在では水準均衡方式で算定しており,厚生労働大臣が改定を行っている。

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by yrx04167 | 2016-06-25 11:58 | Comments(0)