「生活保護アパート」の火災 生活困窮者アパートの火災と居住福祉 簡易宿泊所と火災の歴史 居住の貧困 筆者のコメント、論文

筆者のコメント 「生活保護アパート」等の火災再び
 居住福祉、社会福祉における居住の支援の必要性、人間にふさわしい居住環境とは。
 居住の貧困とは。生活困窮者、高齢者、障害者、生活保護受給者に安全で健康的な住まいを求めて。

共同通信2017/8/22 19:06
引用「秋田県横手市のアパート火災で、県警や地元消防は22日午後、現場の「かねや南町ハイツ」を重機で捜索し、住人とみられる1遺体を発見、死者は計4人となった。県警は、4人の身元や連絡が取れない残る1人の安否確認を急ぐとともに、出火原因を調べている。
 横手市などによると、管理人を除く住人は20~70代の24人で、このうち17人が精神科の病院に通院しながら社会復帰を目指して暮らしていた。また、12人は生活保護を受給していた。防火設備の不備なし」引用ここまで

<筆者のコメント>
 先ず、犠牲になられた方々のご冥福と、負傷されている方々のご回復を祈念します。
 今回の火災や、居住されていた人々の詳細はまだ、十分には分かっていない。解明が待たれる。

 筆者が言えることは、生活困窮者、生活保護受給者、高齢者の方々の住まいの火災が繰り返されてしまったということである。
 火災の事例をいくつか挙げたい。他にも犠牲者をだしてしまった火災はあるだろう。
 2009年、高齢者施設「たまゆら」(群馬県渋川市)の火災では、10人の入居中の高齢者がお亡くなりになった。
 2011年11月6日、新宿区大久保の木造二階建てアパートの火災で、5人の住民が亡くなった。そのアパートは、住民23名のうち19名が生活保護受給者であり、集住していた物件だったことが分かった。
 2015年5月17日未明の、川崎市の簡易宿泊所「吉田屋」と「よしの」の火災では11人が亡くなった。

*生活困窮者と火災、簡易宿泊所 
 かつて簡易宿泊所街にとって、木造の簡易宿泊所の火災は、延焼を招き、火災の犠牲者、生活の破壊は大きな生活問題だった。
 これについては後述する。
 つまり、生活困窮者、生活保護受給者にとって、火災が生命、健康、生活を脅かす問題として復活したといっても過言ではないだろう。

*居住福祉、住まいの支援
 誰でも、住まいは安全で、健康な生活が維持され、可能な限り快適であってほしい。
 社会福祉と関連する領域では、「居住福祉」という考え方がある。
 引用すると、居住福祉とは「人間にふさわしい居住が,いのちの安全や健康や福祉や教育やほんとうの豊かさや人間としての尊厳の基礎であり,安心して生きる社会の基礎である」(早川和男『居住福祉』1997)。
 人間らしい生活の基盤は、人間にふさわしい住まいからという考え方と言えるだろう。
 誰にとっても、暮らしや健康にとって、住まいは欠かせない。
 それは、食生活、周囲の環境、移動、孤立等も含めた総合的な人間にふさわしい居住のあり方が問われる。
 生活に困窮しても、高齢になっても、ハンディキャップを持ってもコミュニティで暮らすために、住まいの質と、居住の場におけるサポートのあり方が問われている。火災の予防、万が一の火災時の避難のためにも支援が必要と言える。
 また、居住の場を運営する事業者、支援を行う事業所に対する社会的支援も求められている。

*新たな居住の貧困 低所得者シェアハウス
 加えて、単身高齢者や障害者等の生活困窮者や生活保護受給者の住まいとして、これらの人々が集住する木造老朽化アパートや簡易宿泊所に加えて、若年生活困窮者が住む傾向があるのがネットカフェ(参考記事) やシェアハウスである。シェアハウスは快適でお洒落な物件と、住宅困窮者向けシェアハウス(参考記事)の格差が拡大し、注目していく必要があるだろう。

<報道から>
引用「
横手署などによると、アパートは築50年ほどで、部屋はすべて和室6畳。1階の13部屋には11人、2階の15部屋には14人が入居していて、亡くなるか連絡が取れていない5人は全員2階に住んでいた。
 火は隣接する空き家2軒と、市の子育て支援施設「わんぱく館」の計3軒に燃え広がり、約5時間後に消し止められた。
 アパートを管理する会社の役員は朝日新聞の取材に対し、アパートは食事提供がある下宿という位置づけだと説明。日曜祝日以外は朝食、夕食が出て、1カ月の家賃は食費込みで5万1840円だったと話した。
 同社の佐々木社長(48)によると、2年前に別のアパートで火災が起き、それ以降、室内では火気の使用を禁じ、消火訓練などをしてきたという。再び火災が起きたことについて「対策を練ってきたつもりだったが(死者が出て)大変残念だ」と話した」引用ここまで


 引用「「かねや南町ハイツ」を経営する佐々木社長は日常的にアパートを訪れ、住人と面識が深かった。気の合う住人同士で互いの部屋を行き来し、「穏やかな日常だった」と振り返った。
 佐々木社長によると、遺体で見つかった千田さん(58)はパソコンが得意で、インターネットで情報収集するなど知識豊富な人だった。佐藤さん(62)は自転車で遠出することが多く、県内に泊まりがけの旅行に出掛けるなど活動的だったという。
 山本さん(78)について、アパートの管理人の奥山さん(63)は「気が強いけれど親切な人。缶コーヒーをくれることもあった」としのんだ。当該物件の見取り図等」引用ここまで

 
<筆者の論文から 関屋2009>
*簡易宿泊所火災による“罹災保障”の要求のソーシャルアクション 横浜市寿町の地域福祉活動
 1968年5月25日、簡易宿泊所の祥雲荘、扇屋、ことぶき荘の三軒の簡易宿泊所が、火災により全半焼し、罹災者は204世帯、265人に及んだ。
 この火災をきっかけに「罹災者同盟」が発足した。横浜市寿生活館のケースワーカー等の支援者がその組織化、罹災保障要求のソーシャルアクションを支援した。
 およそ二ヵ月にわたって簡易宿泊所経営者と交渉し、罹災者1人につき2000円の見舞金と無料宿泊券5日分という条件で合意に至った。以降、寿町の簡易宿泊所で火災が発生した場合は、簡易宿泊所経営者の組合から罹災者に見舞金を支給するという慣行が継続された 。
 1960年以降では、寿町の簡易宿泊所火災は13件発生し、15人が死亡している。例えば、「長者荘」の火災では、延焼し5軒の簡易宿泊所が全焼、2人が死亡し、4人が重軽傷を負い、361人が罹災している。 

*当時の寿町地域の居住環境とは
 寿町に最初の簡易宿泊所「恵会館」が、1956(昭和31)年4月に建築申請されてから、寿町は簡易宿泊所街としての基礎が形成されていった。
 1963(昭和38)年末に、横浜市建築局が把握していた寿町地域の簡易宿泊所は81軒であった。
 当時の寿町の簡易宿泊所は「2階4層」の不法・違法建築もあり、また「ベッドハウス」形式の簡易宿泊所も存在していた。宿泊者数は、推測に頼るほかないが、宿泊所の収容能力から約8000人程度であった。
 この時期の寿町の住民生活に関連する特徴的な出来事として、1963年4月に、簡易宿泊所「丸井荘」で集団赤痢が発生し、1人が死亡、15人を隔離したことが挙げられる。簡易宿泊所に居住する義務教育未就学児童の問題とも合わせて、住民の生活と居住環境の問題が顕在化しつつあったと言えよう 。
 福祉行政による寿町支援施策として、その嚆矢となる、中民生安定所の夜間出張相談が、1962(昭和37)年5月から開始された 。また、民間による支援の先駆けとして、この出張相談に、地域の民生委員も協力している。
 翌1963(昭和38)年4月には飛鳥田横浜市長が就任し、革新市政となった。同年9月には「横浜市青少年相談センター」が扇町に開所された。公的な寿町支援施策の開始となった。

序章 
第1節 問題の所在
第2節 研究の目的と方法
第3節 論文の構成

第1章 民間支援活動の位置づけと支援に関する先行研究
第1節 支援の概念と寿町における民間支援活動の位置づけ
第2節 貧困領域における民間支援活動および支援者に関する先行研究
第3節 寿町における民間支援活動および支援者に関する先行研究 

第2章 開始期:子どもへの支援とセツルメント-寿町における支援活動の歴史的変遷と特徴-
第1節 支援活動の歴史的変遷と特徴-文献から- 
第2節 証言としてのインタビュー    
第3節 考察                

第3章 発展期:福祉事業化と神奈川県域への拡大
第1節 支援活動の歴史的変遷と特徴-文献から-     
第2節 証言としてのインタビュー                     
第3節 考察                                 

第4章 模索期:活動の多様化と新たな支援のあり方の模索
第1節 支援活動の歴史的変遷と特徴-文献から-     
第2節 証言としてのインタビュー            
第3節 考察                      

終章  考察 -支援者の存在意義と民間支援活動の展望-  

「寿町」 地域とは、横浜市中区の簡易宿泊所 が密集した「ドヤ街」 である。
 かつての横浜港で働く日雇労働者とその家族のドヤ街 の面影は無く、現在は、高齢者や障害者等の生活保護受給者が単身で集住する「福祉の町」である 。

<筆者の論文 抜粋 寿町地域の簡易宿泊所の居住福祉を考える>
「簡易宿泊所街・寿町における、生活保護受給者等を対象とする精神科デイケア

 -開始段階の実践に関する考察―」から抜粋

1 簡易宿泊所の住環境=3畳の和室、外出の障壁、トイレ問題
 寿町の簡易宿泊所の住環境と居住者の心身の健康への影響に関して述べる。
 簡易宿泊所は1泊2200円という料金が多く、個室である。多くは三畳の和室で、窓があり、ベランダが付いている場合もある。寿町には、山谷 や釜ヶ崎(あいりん地区) 等に見られる、2段ベッドの集団部屋で宿泊する「ベッドハウス」と称されるものは現存しない。
 近年、寿町の宿泊所のなかには、介護対応やバリアフリー等と称して、洋室の介護用ベッドが入れられる部屋や、やや広くなり四畳の部屋、寿町等で「帳場」と称されている管理人への呼出用コール、介護対応浴室等を設備した宿泊所も登場した。デイケア開設時の1999年の時点では、このような「バリアフリー」新型簡易宿泊所は登場していない。
 エアコンの設備がある宿泊所と無い宿泊所があるが、後者は熱中症の危険が増す。エレベーター設置の宿泊所もあるが、階段のみの老朽化した宿泊所も現存し、通常よりも階段が急な宿泊所もある。老朽化した宿泊所は、和室の入口には段差があり、採光や照明の不良により廊下が暗い。これらは、高齢者や身体障害者の外出、移動の障壁になり、転倒の危険を増している。居住する高齢・障害者が自室に閉じ篭りがちになる要因である。
 個室内には、キッチンやトイレは設備が無く、各階に共同のものがある。老朽化した宿泊所の共同トイレは、和式便器であり、高齢や障害のある居住者にとって使用し辛く、臭気も強くて清潔とは言い難いところもある。これらは、居住者をトイレから遠のかせる、つまり排泄を我慢させることにも繋がる。自室外にあることから、間に合わないこともあり、自室内での失禁、排泄を繰り返し、住環境の衛生面を悪化させる居住者も少なくない。また、尿瓶等を利用する居住者もいる。なお、トイレには暖房が無い為、冬期は特に、寒暖差からも、健康への悪影響があると思われる。
 寿町の簡易宿泊所は、コインシャワーとコインランドリーの設備を持つところが多く、当然、有料であり、入浴や洗濯をしたがらない居住者もいる。銭湯は、地域内と隣接地域にある。入浴や洗濯から遠ざかり、衛生上の問題もあって、南京虫等に悩まされる居住者も珍しくない。

2 簡易宿泊所居住者の食生活-インスタントラーメン、弁当、惣菜の孤食-
 寿町地域の簡易宿泊所の共同炊事場は、ガスコンロや流しの設備があるが、調理の度に自室から、鍋やフライパン、まな板、包丁、食材等を持参しなければならない。盗難を防ぐため、炊事場から離れることも出来ない。老朽化した宿泊所では、流しは水道のみであり、コンロも古く、使用し辛く、かつ衛生的とは言い難い。炊事場には冷暖房の設備も無い。
 略

3 簡易宿泊所街の人間関係-希薄・匿名性故の住み易さと孤立・孤独死の危険-
 続く

当ブログ筆者の論文 リンク

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<当ブログ バックナンバー>
 2017年7月26日 朝日新聞朝刊 全国 「悩む職員の心のケア」(やまゆり園事件が残したもの:下)
 朝日新聞から取材を受け、障害者福祉施設等において支援、ケアを担う現場職員を支援する必要性を提言した。
 また、筆者の開発した「福祉施設職員のストレスケア研修」プログラムは、福祉施設の現場を支えたいという想いから開発し、施設職員のストレス対処、感情労働、セルフケアをサポートするために実施を続けていること等をコメントした。 

関屋光泰『職業訓練生たち-1年目職員が感じた介護&ストレス』
「介護人材Q&A 2015年2月号 介護職員「こころの健康管理」その施策と工夫」,産労総合研究所

ブログ筆者の論文 要約
 離職、職業訓練(求職者支援制度)を経て、介護施設へ就職をした元訓練生の介護職員対象のグループインタビュー、ヒアリング等から、彼ら彼女らの介護現場における離職等につながり得るストレス要因について考察したものである。

 介護留学生支援、外国出身の介護福祉士(在留資格「介護」の創設)の増員と並行して行うべきことがある。
 障害者福祉施設の支援員、高齢者福祉のケアワーカー、児童福祉施設の指導員や保育士等、現場の福祉施設職員への支援である。
 介護福祉、社会福祉領域の従事者の離職率の高さ、つまり福祉の現場から人が逃げていくかの様な状況を放置せず、改善を図らなければならない。介護士や支援員等、福祉施設職員の働く環境の問題等の課題がある。
 専門職キャリアの入口の支援だけではなく、職員の研修や個別の支援、メンタルヘルスへのサポートを拡充すべきと考える。
 <「全国社会福祉教育セミナー2016(主催 日本社会福祉教育学校連盟 日本社会福祉士養成校協会 日本精神保健福祉士養成校協会 於:淑徳大学)」における筆者の報告に、加筆したものである>



ファシリテーター養成講座 福祉のまちづくりを協働により推進する
ルーテル学院大学

引用「地域福祉ファシリテーターとは?
 地域の福祉課題や地域の中で支援を必要としている人を発見し、自らが持つ能力や人脈、社会資源を生かしながら、具体的な「新たな支え合い」活動を企画・実施する中核となる人々のことを指します。この講座では、講義だけでなく、体験的な演習やフィールドワークを盛り込み、講座修了後には、具体的な「新たな支え合い活動」が実際に展開されることを目標としています」引用ここまで


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by yrx04167 | 2017-08-23 12:32 | Comments(0)