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ニュース:「居場所なき若者たち」支援の現場から(8・完)=海外の若者の貧困化と支援政策

「居場所なき若者たち」支援の現場から(8・完)=海外の若者の貧困化と支援政策

 子どもから若者へと、社会に参入していくことが困難になっているのは、ヨーロッパなどの国々においても共通で、教育・福祉・労働(雇用)にまたがる総合的継続的支援が行われている。若者の貧困化の問題は、西欧では日本より、早い時期に顕在化しているという。西欧の支援政策と、日本とのちがいを放送大学の宮本みち子氏が、現地視察した状況をふまえ解説した。

 「日本では家庭で育て、学校で教育、企業で働くという、これまでのトライアングルは壊れてしてまって機能していません。その残像に頼って、対応には親世代が負担してきました。特に30代でのひきこもりなどは、親福祉になっています。しかし、それはもう限界です。海外では、社会全体でそれを支援する体制があります」と指摘。
 日本の若者支援には、自己責任を前提としており、軽症者を主たる対象にしていた。「親に経済力がある」「当分の生活費がある」という視点があり、支援機関には親または本人がアクセスする。そのため、支援の結果に対する責任のあいまいさがある。

 海外での政策の特長は、一番困難なのは誰なのかを明確にし、その立場の人々に焦点を絞って支援している。
 英国では、0~4歳で人生が決まると、母子家庭での親の支援を強化するなど、世代的な過程のなかに一貫した支援システムを構築している。


(1)ドロップアウト防止には、まず「社会に参加させる」(フィンランド)
 フィンランドでは、職業教育・訓練は学校や職場内の「閉じた活動」ではなく、生産・消費活動への、ゆるやかで現実味のある参加をする。自立支援には、仕事に就けることよりも、まず「社会に参加させること」。中間的労働市場をつくり、社会参加の場とする。

 「職場実習」では、自分で仕事を見つけてくる。実習手当が支給される。それが履歴の一部となり、同じ職場で雇用につながる可能性がある。「アプレンティスシップ」では、見習い手当て支給、教育。訓練の場の保障、グループ学習をする。「ワークショップ」は、目標が定まらない場合に、生活指導、経験、社会関係つくりをする。この対象は日本のニートとほぼ同じ。

(2)国が職業への橋渡しプログラムを持つ(オーストラリア)
 オーストラリアでは、国が若者支援プログラムを持つ。対象者は、義務教育修了資格をとれない若者や、高校中退、卒業後の仕事につきにくいタイプ、戸外の活動や自然や土いじりが好きなタイプである。フルタイム6カ月。苗木の育成、植樹など所定の条件を満たせば、義務教育資格を取得できる。終了後は、環境保全関係への就職、職業訓練校、復学などを支援する。
 民間支援の団体は、目標達成に集合離散するのが望ましい(湯浅氏)
 「どうする? 日本の若者支援」のシンポジウムの呼びかけ人である湯浅誠・自立生活サポートセンター・もやい事務局長は、これまでの「反貧困ネットワーク」の幅広い活動で、政策に影響を与えたことには、一定の成果を認めた。同時に「政策に影響を与えるようになると、分裂を繰り返してきた民間の支援団体活動の歴史である。今後の市民活動はこうであってはならない」と語った。

 そして、貧困者の排除(棄民)思想からの転換は、支援団体が目標達成に向けて、集合と離散を繰り返し、絶えざる活動のうねりとして、継続していくことの重要性を説いた。【了】
by yrx04167 | 2009-08-10 20:04 | Comments(0)