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講義:相談援助の基盤と専門職 前期第8回レジュメ6/4-権利擁護・アドボカシーとは*社会福祉士養成学科

相談援助の基盤と専門職 前期第8回 講義レジュメ 2010/06/04
社会福祉士養成学科にて講義
3節 ソーシャルワーク実践と権利擁護
1 権利擁護が必要とされる背景 テキストP96から

・国内における人権保障の課題、国際的な課題。

*国や社会が人権を保障する前からソーシャルワーカーは活動してきた
・慈善事業家を発祥とし、様々な支援を実践してきた。

*人として生まれながらにもつ権利が保障される社会
■基本的人権の保障

 基本的人権とは、人が生まれながらに当然に有する権利とされるものである。

◎日本国憲法 第11条
 国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。

*生存権の保障
◎生存権とは、日本国憲法25条第1項において、「すべて国民は,健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と規定し,第2項で「国は,すべての生活部面について,社会福祉,社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」と規定する。ここで保障される人権は,「健康で文化的な最低限度の生活」という内容をもったものであって,たんなる生物としての存在,生理学的な生命維持といったレベルをさすものでないことは明らかである。第2項は,この人権の実質的な保障のためのシステムを国家の責任で構築することを明示する。それは国家にとっては責務・義務であり、国民にとっては権利とされている。

*行政判断、措置によりサービス提供が決定された時代
◎措置制度
 措置制度とは、社会福祉サービスの対象者・当事者に対して,「措置」とよばれる行政機関の行政行為に基づいてサービスを提供する仕組のことである。

*契約により社会福祉サービスを利用する時代へ
・社会福祉基礎構造改革に伴って,援助者と利用者が対等な関係をもとに契約を結んで援助が展開されるようになった。そのなかで「利用者本位」という理念が基盤に据えられることになり,援助過程においてもそれが具体化されることになった。
 しかし,これらの考え方は現行の法制度のもとでは援助者側の援助に関する論理が先行し,加えて,法制度の要件を満たす必要から,いわゆる受給要件(eligibility)を充足しない限り,供給側のサービスが始動しない仕組みになっている。
*例えば,生活保護を受給する場合,資産調査(means test)をクリアしない限り,給付は開始されないことになっており,受給に関する可否は供給側の裁量に委ねられなければならないことになっている。
*こうした措置制度の課題を克服し,対等な関係を確保するために,社会保険方式を導入し,利用者となりうる被保険者はあらかじめそのリスクの発生に備えて保険料を拠出することによって,その義務を果たし,保険事故の発生に際して明確な権利を取得できるようにしておくことになっている。他方,保険者たる供給者は,利用者に対して保険事故に責任を負うということになり,両者の権利一義務関係が成立する。

*社会的弱者が必要なサービスの利用に至るまで

2 深刻な人権侵害の顕在化 テキストP99から
 一人暮らし,寝たきり,痴呆性の高齢者が増加し,また障害者が地域において自立した生活を志向するなかで,高齢者・障害者に対する財産侵害,不公正な取引,経済的な搾取,高齢・障害を理由とする差別,身体的・精神的・性的虐待など権利侵害の事例が多く見受けられるようになっている。また,児童虐待やドメスティック・バイオレンスが頻繁に起きていることに関しても社会の関心は高まっている。
 そこで最近は,現実に生じている,高齢者・障害者・児童・女性に対する権利侵害の実態を明らかにしつつ,社会保障の権利ばかりでなく,財産権,身体的自由,精神的自由などの市民権利をも含む諸権利の擁護の問題について検討し,権利擁護のシステムを構築することが課題となっている。
 市民としての当たり前の権利が守られていないという現状認識があるからである。市民であれば当然守られるべき法的利益さえ侵害されている当事者の立場を擁護し,侵害されるおそれのある当事者の生活を支える手立てを講じようとするのが,「権利擁護」である。


3 権利擁護の定義・自らの権利,要求、主張を表現できずニーズを充足できない人々を弁護、代弁する。
・制度、サービス機関、機関責任者が利用者の要求を無視したり不利益を与えたりする場合に,適切なサービスが提供されるよう要求し,サービスの開発を促進するよう機関や地域に働きかける代弁的役割である。
・アドボカシーとは、伝統的な生活習慣のなかで差別と偏見、不自由な生活を強いられてきた人々の権利を擁護するために、援助者が代弁し、意識を変革していくことをいう。また代弁的横能は、個々の利用者が現に受けている直接の具体的な不正を正していく機能と、地域社会で利用者あるいは他のすべての人々に不利な影響を与えているような政策などを改革していく機能がある。


4 ソーシャルワークにおける権利擁護の種類
 アドボカシーとは,たんに利用者の意思の代弁をするだけではなく,自己決定を援助し,利用者の生活と権利を擁護する活動である。力のない人に力を与え,声にならない人に声を与える直接介入,エンパワーメント介入である。

・アドボカシーは,個人または家族に対して行われる活動であるケース・アドボカシーと,同じような問題に直面する特定の集団に対して行われるクラス・アドボカシー(class advocacy)に大別される。
・アドボカシーには、他にもセルフ・アドボカシー、シチズン・アドボカシー、リーガル・アドボカシー等がある。

5 権利擁護を行うシステム
 アドボカシーを担う人のことを、アドボケート advocateと呼ぶ。
 ソーシャルワーカーは,利用者を支持し,倫理的な原則に基づいて利用者の最善の利益に向けて目的的行動を行う。つまり,ソーシャルワーカーの知識と技術を使って,行政・制度や社会福祉機関,サービス供給主体に対して,利用者が最も適切で最良のサービスが受けられるよう柔軟な対応や変革を求めていく一連の行動である。

6 ソーシャルワーク実践としての権利擁護
 秋山の整理によれば、権利擁護の専門的機能として,利用者の側にたって,①発見,②調整,③介入,④対決,⑤変革があげられている。


*用語解説は下記をクリック



◎解説:自由権
 国家が個人の生活に対して権力的に介入することを排除し,個人の自由な意思決定と活動(作為,不作為を含む)を保障する人権である。国家的介入の排除という点を捉えて,「国家からの自由」ともいわれる。人間の尊厳ないし個人の尊厳の原理に基礎を有するものであり,人権体系のなかでも根幹をなすものである。具体的には,精神的自由権(思想・信条の自由,学問の自由,表現の自由など),経済的自由権(財産権,職業選択の自由など),身体の自由(奴隷的拘束からの自由,適正手続の保障など)からなる。

◎解説:社会権
 基本的人権の一種で,人間らしい生活を営める諸条件の確保・改善を国に求めることができるすべての人の権利。社会的基本権,生存権的基本権ともいわれる。国際連合で1966年に採択された「経済的,社会的及び文化的権利に関する国際規約」は社会権規約(または国際人権規約A規約)とよばれ,そのカタログを示している。労働権,団結権,社会保障権,生活権,健康権,教育権等が含まれる。

◎参考:基本的人権
基本的人権の考え方は,「人間は生まれながらにして自由・平等であり,この生得の権利はいかなる政府も侵害しえない」とする,17~18世紀の自然権思想を基礎として形成され,1776年のアメリカの「独立宣言」,89年のフランスの「人権宣言」(「人および市民の権利の宣言」)などで具現化された。例えば,アメリカの独立宣言では,万人が生まれながらにして自由かつ独立しており,生命と自由と幸福の追求という譲渡しえない一定の生得の権利を有しているということが,唱えられている。またフランスの人権宣言は,政治的結合(=国家形成)の目的たる自然的権利として自由,所有,安全,圧制への抵抗の四つを掲げ,それぞれの具体的内容として人身・意見・表現の自由,所有の不可侵,罪刑法定主義,無罪の推定,抵抗の正当性等を宣明している。
 当初,基本的人権の内容は,自由権を中心とするものであったが,その後,さまざまな社会問題(失業や貧困問題,労働争議,反独占運動など)に直面することになり,20世紀に入るとともに,個人の福祉を守るために国家の積極的な配慮を求める社会権や生存権が新たに加わることになった。こうした展開の嚆矢となったのが第一次世界大戦後に制定されたワイマール憲法(1919年)である。ワイマール憲法は,人間に値する生存の保障を目的とした正義の原則に適合するような経済生活の秩序をめざし,生存権,労働権,労働者の団結権などの社会権を保障するとともに,それまで不可侵とされてきた経済活動の自由と財産権の保障に一定の制限を加えたのである。
 基本的人権の問題は,元来は国内の憲法問題として各国が自主的に処理してきたのであるが,第二次世界大戦時のファシズムやナチズムによる大規模な人権侵害の経験は,人権保障の国際化を促進した。かくして人権保障は,国際的な関心事項となり,国際連合憲章(1945年)では,基本的人権と人間の尊厳および価値などに関する信念が確認され,すべての者のために人権および基本的自由を尊重することについての国際協力を達成することが,国連の目的の一つとされることになった。
1948年には国連で世界人権宣言が採択されたが、すべての国が達成すべき共通の基準であって法的な拘束力を有しなかった。そのため,条約としての性格を有する人権規約として,1966年12月に国際人権規約が国連総会で採択された。同規約は,「経済的,社会的及び文化的権利に関する国際規約」(A規約)と「市民的及び政治的権利に関する国際規約」(B規約)の二つの規約からなっている。

◎解説:措置制度
 社会福祉サービスの対象者に対して,「措置」とよばれる行政機関の行政行為に基づいてサービスを提供する仕組のこと。日本の福祉制度は,第二次世界大戦後,この措置制度のもとで充実が図られてきた。措置を行う権限をもつ行政機関(行政庁)を「措置権者(措置機関)」という。「措置委託」とは,この措置権者が民間の社会福祉施設へ入所の委託をすることである。また,入所措置に要する費用を「措置費」といい,民間施設へ委託している場合の措置費を「措置委託費」という。
ただし,社会福祉サービスの進展を通じて,福祉サービスも国民全体を対象としたものとなり,また,国民の福祉需要も多様化していき,措置制度による福祉サービスの利用のしにくさが問題とされるようになり,新たな利用方式としての介護保険制度(2000年4月から施行)等が導入された。新しい方式が導入された後も,児童養護施設など要保護児童を対象とした施設サービス等については,措置制度が用いられている。

◎解説:契約
 一般的には,相対する者が互いに意思を表示し,合意に達した取り決めを結ぶことをいう。社会福祉では,相談機関における受理が契約概念に基づいて行われてきた。機関の援助は,利用者の意思と自己決定のもとで,機関の役割,援助方針等への同意により展開するからである。また,従来の措置(行政処分)制度から利用者と事業者との直接契約方式への変更により,福祉サービス利用の際にも権利・義務を明確にした契約が行われるようになった。

◎解説:社会的弱者
 社会的に弱い立場にあるものをいう。社会的弱者だから排除されるのではなく,社会的に差別,排除されることで社会的弱者は生みだされる。同時に,社会的弱者と分類されることで,一人前の人間とみなされず,社会統制や排除が正当化される。その結果,社会的弱者はますます力を剥奪されることとなる。障害,高齢などの属性は,自立という社会規範からの逸脱として捉えられ,社会的弱者というレッテルと結びつきやすい。

◎解説:ラベリング
 特定の行為や行為者に逸脱ラベルを付与する社会的過程をさす概念。多くは,行為よりも行為者に対して,また自己による付与よりも他者による付与に対して用いられる。社会的にはそれぞれ後者の方がより問題をはらんでいるからである。しばしば,ラベルの内容は行為の性質よりも行為者の属性によって左右され,自己による付与よりも他者による付与が先行する。ラベル付与の成否は,付与する側とされる側との社会関係,付与場面の状況等に影響される。また,他者による逸脱ラベルの付与は,否定的な自己イメージを構築する契機となりやすい。

◎解説:利用者の権利保障
 福祉サービスの利用者は,サービス請求権のほかに,虐待や拘束からの自由,プライバシーの権利などの処遇過程の権利,適正な手続でサービスを受ける権利やサービス決定過程への参加の権利,権利侵害があった場合の不服申立てや訴訟の権利を有しており,これらの権利は,福祉サービスの申請から提供までのすべての場面で保障される必要がある。同時に,措置制度から契約制度への移行に伴い,利用者の権利擁護が課題となってきている。

◎解説:セルフ・アドボカシー
当事者が権利を自ら主張するのがセルフ・アドボカシーであり,障害者や高齢者が自分の力で主張できるように,その人がもともと有している力を引き出す「エンパワーメント」の支援が,権利擁護においては特に重要となってくる。さまざまなサービスを必要としても,「ありのままの自分でよいのだ」とまず自らを肯定し,次に権利を主張してよいのだ,という権利意識を回復するための支援が,セルフ・アドボカシーの実現につながっていくともいえよう。

◎解説:ペイシェント(患者)アドボカシー
アメリカではpatient advocacy, patient right advocacy等と呼ばれ、「患者とともに患者権利の擁護のために闘うこと」とされる。
◎患者の権利 patient's rights とは、患者の人権保障と医療への主体的参加を実現するために必要とされる権利の総称。その表現や権利内容は,必ずしも統一されてはいないが,おおむね患者の自己決定権を主軸として,情報アクセス権(カルテ開示請求権等),同意権,治療拒否権,プライバシー権,苦情申立権などがあるとされる。もっぱら患者・医療従事者関係において主張されるが,それにとどまるものではなく,医療制度に関するもの(例えば,医療サービスアクセス権)などを含む。
by yrx04167 | 2010-06-03 16:31 | Comments(0)