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相談援助の基盤と専門職 後期第3回 講義レジュメ10/11*社会福祉士養成学科

相談援助の基盤と専門職 後期第3回 講義レジュメ 2010/10/11
*社会福祉士養成学科
3章2節 ソーシャルワークの基礎確立期・続き
3 世界恐慌・大不況とソーシャルワーク テキストP59

*1929年、世界恐慌。ニューヨーク証券取引所で株価が大暴落したことを端緒として世界的な規模で、各国の経済に波及した金融恐慌、および経済後退である。1929年10月24日は「暗黒の木曜日」として知られる。大恐慌等とも言われる。
 →多くの失業者の救済が課題となるが、民間施設では対応できず。

*ニューディール政策とは、アメリカ合衆国大統領フランクリン・ルーズベルトが世界恐慌を克服するために行った一連の経済政策である。それまでの歴代政権が取っていた古典的な自由主義的経済政策(政府は市場には介入せず、経済政策も最低限なものにとどめる)から、政府がある程度経済へ関与する社会民主主義的な政策へと転換したものであり、第二次世界大戦後の資本主義国の経済政策等に大きな影響を与えた。
→公的機関にケースワーカーが雇用される。
 青少年の民主主義思想や健全性の育成のため、グループ活動(グループワーク)が活用される。


*1935年、アメリカ社会保障法Social Security Act の成立。
 アメリカ合衆国は,大恐慌の後,経済の立て直しのため,有効需要を刺激する目的から,社会保障法を成立させた。
 →公立のソーシャルワーク施設・機関の増加。


4章1節 ソーシャルワークの発展期(1940年代から1950年代半ば)
1 診断主義学派と機能主義学派 テキストP62
<ポイント>

 精神分析学や心理学を背景に、(社会的)環境から「人間の内面」に焦点が移行した1920年代には「診断主義ケースワーク(診断派)、30年代には「機能主義ケースワーク(機能派)が登場した。診断派はケースワークを「援助者が利用者に働きかける過程」として捉え、機能派は「利用者が援助者に働きかける過程」と捉えた。
<解説>
①診断主義学派の特徴

・1920年代からのケースワークは,リッチモンドの社会診断の流れを引きながらも,第一次世界大戦後の戦争神経症の治療に用いられたS.フロイトの精神分析学に接近した。とりわけそのパーソナリティ論にひかれ,環境との関係を次第に弱め,個人の心理的問題への関心に傾斜していった。このようなケースワークが,後に「診断主義ケースワーク」と呼ばれることになった。
・診断主義の流れは,ニューヨーク社会事業学校のG、ハミルトン(G.Hamilton)による『ケースワークの理論と実際』(1940年)に集約される。その後、診断主義のケースワークは,1960年代にはF.ホリス(F.Hollis)の「心理-社会的モデル」として発展し,現代のソーシャルワークの理論モデルの一つとなった。また,ヴインターらの「治療的モデル」グループワークにも受け継がれている。
 診断主義(診断派)ケースワークの特徴とは、①利用者の問題の心理的側面の重視、②パーソナリティの発達に焦点を当てた過去の生活史の重視、③面接を中心とした長期的援助関係における援助者の主導性、④調査→診断→治療の過程を重視する といった点が挙げられる。
 診断主義ケースワークは、リッチモンドと同様に面接を重視し,家族関係を中心とした環境を重視したが,関心は主として利用者の内面・心理的環境にあって,リッチモンドのように貧困,疾病,労働などを含めた社会的環境の全体が視野に入れられていなかった。
診断主義ケースワークは、S.フロイトの精神分析の理論と方法を取りいれた。利用者のもつ問題やその原因は、社会環境よりも個々の精神内界にあると捉え、ケースワークに「治療的意味」をもたせた。つまり、利用者の問題を病理・病的状態ととらえ、これらを治療するのは援助者であるという専門職中心の医学モデルである。
・診断主義ケースワークの援助の過程とは、専門職からの、利用者の内面の問題の原因の探求と解決の過程である。つまり「援助者が利用者に働きかける過程」であった。その目的は、自我の強化とそれによるパーソナリティの社会環境への適応を図ることにある。

②機能主義学派(機能主義ケースワーク)
<ポイント>

 1930年代になるとO.ランクの流れをくむ機能主義(機能派)ケースワークが登場する。機能主義におけるケースワークの役割は,クライエントの問題解決を援助するのではなく,クライエントの成長しようとする自由な意思を邪魔する障害を取り除くことであるとした。機能派の登場により、主流である診断派との論争が始まった。
<解説>
 大恐慌(1929年)後、ソーシャルワークが再び大量の貧困問題への対応を迫られる中で,それまでの診断主義のケースワークへの批判的立場として,新たに新フロイト派のO.ランク(0.Rank)の意志心理学を基礎とする、Ⅴ.ロビンソン(Ⅴ.Robinson)やJ.タフト(J.Taft)らの「機能主義のケースワーク」が登場した。初期の理論はロビンソンの『ケースワーク心理学の変遷』(1930年)に代表される。

機能派の特徴とは、①「疾病の心理学」より「成長の心理学」、②「治療」よりも「援助」、③機関の機能の枠に沿った援助、④利用者中心、④開始→中間→終結の時間的展開の重視 といった点が挙げられる。
・機能主義ケースワークとは,クライエントの自由な意志を尊重し,利用者による主体的な問題解決を援助者がそれぞれの「機関の機能」を代表して援助する点を明らかにした。それは、パーソナリティの健康的側面に焦点を当て、クライエントの持つ意志(will)の力の発揮を促進させようというものである。
・援助の過程については,診断主義のような専門職中心の調査→診断→治療の過程を廃し、「初期の局面→中間の局面→終結の局面」と時間的な経過の中での相互的なケースワーク関係によって展開していくものとみている。つまり機能派は、意志の力によって人は自分自身で問題を解決していけるという仮説に立って、利用者に潜在している力を引き出すために、援助者は側面から援助する役割を重視していた。問題の背景はクライエントの現在の生活状況にあり、援助者は自分の属する機関の機能をクライエントに提供するという考えであった。

 機能派は、ケースワークの構成される場面の現実的な枠組みを、援助者の属する横関に求めて、機関の機能を重視していた。
また、診断派と機能派の論争の歴史的意義とは、「医学モデル」から「生活モデル」へと、社会福祉援助技術の視点の転換の発端であった点が挙げられる。



*続き・用語解説は下記をクリック



■用語解説:ハミルトン
Hamilton, Gordon  (1892-1967)
 アメリカにおける診断主義ケースワークの代表的な女性研究者の一人。1923年から57年までの約35年間,ニューヨーク社会事業学校(現・コロンビア大学大学院)で教鞭をとり,診断主義ケースワークの確立と発展に大きく貢献した。また,その代表的著書『ケースワークの理論と実際』(Theory and Practice of Social Case Work, 1940)は,アメリカのみならず,世界中で読まれ,各国のケースワーク研究や実践の発展にも貢献した。

■参考用語 精神分析学
精神分析学は、ジクムント・フロイト(Sigmund Freud)によって創始された人間心理の理論と治療技法の体系である。広義には、フロイト以後に発展した分派を含めた理論体系全体を指す。1920年代に戦争神経症の治療などに用いられた。
◎精神分析とは「抑圧された心的なものを意識化すること」とフロイトは定義したうえで,精神分析の「分析」とは,化学者が合成物を分析して,その構成要素を見つけだすのと同じように,合成物としての患者の症状を分析して,症状を構成する衝動を見つけだし,その衝動について患者自身が意識化できるようにするための働きかけであると述べている。精神分析は20世紀前半の精神医学・心理学に大きな影響を及ぼした。

■参考用語:フロイトFreud, Sigmund (1856-1939)
 精神分析の創始者。臨床例から,抑圧理論および性的外因説によるヒステリー論を展開し,ここで用いた自由連想法による治療を「精神分析」と命名した。その後,人間の無意識とその意味の解読法の理論化を試み,エディプス・コンプレックスと小児性欲説,自我防衛機制による心的構造論と深層心理学を体系化した。
エディプス・コンプレックスとは、S. フロイトによって提唱された幼児期(3歳から6歳程度)の男児が抱く「母親を独占したい」という衝動と父親への嫉妬心を示す。正常な発達過程では,父親に代わって母親を独占したいという衝動は,やがて父親への同一化から男性としての性的役割を形成するなかで解消へと向かっていく。
防衛機制とは、S. フロイトによって明らかにされ,その後A. フロイトらによって発展させられてきた,精神分析学で用いられる中心概念の一つ。イド(エス),超自我,外界の現実の対立する圧力によって,自我のなかで緊張,不安,葛藤が生じる場合,自我がそれを解決し,日常生活のなかで安定を図ろうとする無意識の働き。当面の問題を意識の外に追い出す「抑圧」,満たされない性的願望などを社会的に認められる代償行動で満たす「昇華」など,さまざまなものがあげられる。

■参考用語:自我
自我は精神分析学上の概念で意識のある機能の中心である。
・自我
自我は意識層の中心の機能で、イドからの要求と超自我からの自己の規制を受け取り、感情を現実に適応させる機能である。
・イド(エス)
イドは無意識層の中心の機能で、感情、欲求、衝動をそのまま自我に伝える機能である。イドは視床下部のはたらきと関係があると思われる。
・超自我
超自我は上の二つの層をまたいだ機能で、ルール、道徳観、倫理感、自己の規制を自我に伝える機能を持つ。この機能がイドや自我を強く押し付けているとき、自我がエスの要求を通すことができずに防衛機制を働かせることがある。超自我は前頭葉のはたらきと関係があると思われる。


<用語解説・機能主義学派>
■用語解説:スモーリー Smalley, Ruth Elizabeth (1903-79)
・ランク(Rank, O.)の影響を受け,タフト(Taft, J.),ロビンソン(Robinson, V.)らとともにペンシルベニア大学で機能主義学派を率いた。ソーシャルワークの伝統的な考え方にとらわれず,クライエントの潜在的に備わった創造力を重視し,クライエントが主体的にワーカーやワーカーの所属する機関の機能を活用できるよう支援することを実践家に説いた。CSWE(Council on Social Work Education)や NASWの設立に貢献したことでも知られる。[主著] Theory for Social Work Practice, 1967.

■参考用語 新フロイト派
 新フロイト派は、精神分析学において、フロイトの欲動論を批判し、文化的・社会的要因を重視した学派。フロイト左派とも呼ばれる。政治学や社会学に影響を与えた。 代表的な研究者に、サリヴァン、カレン・ホーナイ、エーリッヒ・フロム、クララ・トンプソンがいる。


*前回の講義レジュメ
社会福祉士受験支援講座・教員日記 : 相談援助の基盤と専門職 後期第2回 講義レジュメ*ソーシャルワークの基礎確立期(~1930年代)*社会福祉士養成学科

by yrx04167 | 2010-10-11 08:52 | Comments(0)