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社会調査の基礎 第3回講義レジュメ後半 質的調査1 観察者、エスノグラフィー民族誌、事例研究とは

社会調査の基礎 第3回講義レジュメ<後半> 2011/05/13 3時限
<続き>
D.質的調査の種類 テキストP80
①質的調査の分類

・調査手法としては、面接(個人・グループ)、観察、事例研究、フィールドワーク、ドキュメント分析等。
・分析手法としては、KJ法、グラウンデッドセオリー等。

②ミクロ研究とマクロ研究
 質的調査はミクロ研究である。社会学においては、ミクロ社会学に属する。

③手法と視点
・「行為者の視点に立つ」
・他者・他文化の理解を目的とするものが主流である。

④グラウンデッドセオリー法(GT法、もしくはGTA)の概要
 グレイザーとストラウスによる、質的データから理論構築を行なう方法である。
 手法の特徴は、対象者へのインタビューや観察などを行ない、得られた結果をまず文章化し、それを細分化し、特徴的な単語や内容をコード化し、データを蓄積していくことである。その上で、コードを分類(カテゴリー)し、分析することになる。
 データの蓄積→コード化→比較→カテゴリー化の過程を繰り返し行なうことにより、カテゴリー(概念)の統合を得る。

⑤事例研究・ケーススタディ
* ケース・スタディの定義
 「プログラム、出来事、人、(略)社会グループといった、ある特定の現象についての調査」である。
 また、「1つあるいは比較的少数の調査単位(=ケース、事例)について、複数の手法を用いて、その特質を詳細かつ多面的に明らかにする調査法」

*ケースの例
 「教室にいる子どもたちのグループ」「救急救命病棟の医師と看護師」「ある機械工場や組合支部の労働者」

* ケーススタディの目的別分類
① 本質的事例研究

② 道具的事例研究

③ 集合的事例研究

⑥フォーカス・グループ(インタビュー
・あるテーマ・事柄について、調査対象の集団に質問する手法であり、グループ対話形式で行なう。社会福祉調査、社会調査、市場調査等で用いられている。
・小集団の対象者に対して、司会者が座談会形式でグループインタビューを行い、その回答(発言)から質的データを採取するための調査手法である。対象者の発言の交互作用の活用と、対象者の生の声を直接に確認することが可能である等の利点がある。

⑦エスノグラフィー
・民族誌等と訳される。質的調査、特に、参与観察による調査報告の一形態であり、特定の集団のある社会生活を主観的次元も含めて、詳細・具体的かつ包括的に記述したものである。

・エスノグラファー=観察者、調査者の役割とは、自身がデータの収集と分析を行なう道具である。

<補足:質的調査の準備に関して
■研究アイデア、研究疑
*調査目的・課題の明確化
・調査目的・課題を明確にする必要がある。また、問題意識の明確化や、作業仮説の掘り下げも必要である。
・調査者、観察者に洞察力や想像力などが求められる。

・関連する文献、資料を読む。
 観察、インタビューをする対象の状況を理解する。
 調査中の倫理・政治・理論的側面に配慮する。
・準備段階で、観察や調査の対象、現地との信頼関係を築くことに努める。
 ⇒「フィールドへの参入」
 調査対象者や関係者に接触して、協力を依頼する。

■質的調査・参加者(対象者)の選択 
・調査対象の選定により、調査結果が大きく左右される可能性が高いので、調査課題に適合する事例を慎重に選定しなければならない。
 事例選択の方法は、調査の目的によって選択する。
①割り当て
・複数の対象集団の場合、必要な標本数を割り当てて、対象事例を選定する。

②スノーボール(雪だるま式)サンプリング
 最初の面接の対象者・対象集団に、友人・知人を紹介して欲しいと頼み、紹介された人たちに次のインタビューを行なう。十分な数のデータが集まるまで継続する。あるいは、時間や費用の面から打ち切ることもある。
 長所:調査対象者が、どこに何人くらいいるかが不明な場合に有用。
問題点:友人・知人ネットワークから外れている人はインタビューされない
     狭い仲間うちだけに通用する話になる危険性
     インタビューに適した人が選ばれている

③典型的(平均標準的)事例を選定する場合、先進的典型事例、逸脱事例を選定する場合がある

■データ収集
 質的調査のデータ収集(調査の実施)方法には、観察法と面接・インタビュー法等がある。

2 観察法の実施と記録法 テキストP83~
A.観察法
<参与観察の定義

・参与観察とは、調査者が、よく知らない社会(集団)に入りこみ、比較的長期にわたって、そのメンバーの一員として生活をともにしながら、そこで繰り広げられる人びとのやりとりや出来事を観察し記録する調査法

*観察法とは、非言語的方法を用いての調査対象の把握である。
 観察法には、非参与観察法、参与観察法(対象集団に入り込んで内部からの観察)、統制的観察法がある。

・非参与観察法とは、観察者が第三者として、対象のあるがままの姿を外部から把握する観察法をいう。
・参与観察法とは、調査者自身が対象集団の内部に入り込み、生活体験をともにしながら比較的長期にわたって内部から観察する方法をいう。
・統制的観察法とは、観察対象のなかの特定の要因を比較的純粋な形で抜き出す目的から、他の要因を規制したり、観察場面や観察手段に工夫を加えたりして、観察を行う方法をいう。

<調査における観察者の位置づけ>
(1)完全な参与者(complete participant)

*調査者と調査対象者の関係
 調査者であることを明かさずに、調査対象となる社会(集団)の活動に完全にかかわろうとする。
*作成されるデータの種類
 他の方法では得られない正確な情報と理解が得られる。
・例:大熊一夫, 1981, 『ルポ・精神病棟』(朝日文庫)
新聞記者がアルコール依存症の患者になりすまして入院し、「悪徳精神病院」の内幕を暴露した。

(2)観察者としての参与者(participant as observer)
 参与観察法に典型的な観察者の位置づけ。
*調査者と調査対象者の関係
 調査者としての役割を明らかにし、調査の意図を調査対象者に伝え、比較的長期にわたって、人間関係を維持する。
・調査対象への「ファン」になることに似ている。
・調査対象者と行動を完全に同じくする必要はない。犯罪集団を参与観察する場合に、調査者が一緒に犯罪をするわけではない。
*作成されるデータの種類
 フィールドで時間を過ごすうちに理解される観察対象におけるルール・役割・人間関係の知識を用いて、深みのある記録ができる。
・人びとのやりとりや出来事を正確に記録することが最重要課題。
 観察しているその場でノートをとれない場合は、調査者の記憶力が重大な問題となる。
・例:ホワイト『ストリート・コーナー・ソサエティ』

(3)参与者としての観察者(observer as participant)
 これは、厳密に言えば、参与観察とは呼べない。
*調査者と調査対象者の関係
・調査者としての役割は明らかにされるが、調査対象者の関係は、つかの間のもの。
*作成されるデータの種類
・フィールドで時間を過ごすうちに理解される観察対象におけるルール・役割・人間関係の知識が利用できず、底の浅いデータにならざるをえない
例:1回かぎりの訪問インタビュー
比較的形式ばった観察になる。

(4)完全な観察者(complete observer)=非参与観察
*調査者と調査対象者の関係
 調査者は、調査対象者との相互作用から完全に引き離される。
*作成されるデータの種類
 調査者の存在がデータに影響を与えない。
・例:研究室の実験において、調査者は、マジックミラー越しに実験を観察する


社会福祉士受験支援講座・教員日記 : 社会調査の基礎 第2回講義レジュメ<前半>4/29 質的・量的調査とは ソーシャルケア学科
社会福祉士受験支援講座・教員日記 : 社会調査の基礎 第2回講義レジュメ<後半>4/29 観察法・面接法・質問紙法とは ソーシャルケア学科


日本福祉教育専門学校 社会福祉士養成学科・養成科
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 社会福祉士養成科は、4年制大学卒業(見込)等の方々が対象の、1年制の社会福祉士の養成コースの夜間部(2コース)です

社会福祉士及び介護福祉士法
by yrx04167 | 2011-05-16 06:40 | Comments(0)