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相談援助の理論と方法 前期第9回講義レジュメ後半 契約、事項の例、ソーシャルワークの目標設定の留意点とは

相談援助の理論と方法 前期第9回講義レジュメ<後半>2011/06/09 5・6時限
日本福祉教育専門学校 社会福祉士養成科(夜間部トワイライトコース)

8章 相談援助のための契約の技術・続き
2節 契約の方法と留意点
1 アセスメント段階までの共有 テキストP167

・契約の核心は、アセスメント段階から援助計画段階の間であり、援助における目標に関する契約である。
・契約段階を経ることにより、ソーシャルワーカーとクライエントは協働で目標設定をし、達成のために計画を立案し、その進展や結果の評価が可能となる。
・双方の理解の共有は、全過程で行われるべきだが、特にアセスメント終盤は重要である。
ソーシャルワーカーは、支援の姿勢、態度を現しながら、クライエントの問題、状況への理解を示し、問題等の共有化を図る。
クライエントの動機づけ、クライエントへの尊重、自己決定の尊重を具体化する。
・双方の見解が異なる場合、ソーシャルワーカーは更に情報を収集し、再アセスメントの必要が生じることもある。
・クライエント自身が直面を避ける問題に、気付かせることが課題となる場合もある。
・共通理解のうえに、双方が問題解決のために協働することの合意がもたらされる。

<補足
・アセスメントの過程によって、クライエントの問題と取り巻く状況が明らかになり,次に進むべき道すじも見えてくる。
・ソーシャルワーカーとクライエントとが共にアセスメントで見えてきた問題の本質を踏まえ,可能性や障害・問題についても話し合われる。これらを理解し,具体的な支援・取り組みを取り決めるのが「契約」である。

2 目標設定の合意 テキストP168
・目標設定に関する契約・合意は、援助過程全体の中核的部分である。
・取り組むべき問題が同意 ⇒ 問題解決の目標・到達点を設定する。
・目標は、到達されるべき結果の形態で設定されるべきである。
・目標と、目標を達成する方法や手段も区別すべきである。例:「~の状態になる」は目標であり、その為の「~サービスを利用する」は、目標を達成するための手段である。

<目標設定の留意点>
*特定すること

・目標は明確に特定される必要がある。漠然、曖昧、具体的でない表現は避ける。
・目標の特定化は、クライエントの課題を顕在化させ、取り組むべきことを明らかにする。

*検証可能であること
・目標は、検証できる形で設定されることが望ましい。
・具体的、測定可能な目標の設定は、課題達成の評価が可能となる。

*現実的であること
・目標は現実的であり、クライエントの意欲や能力などと、インフォーマル・フォーマルな資源の活用により、達成可能なものでなければならない。
・クライエントの価値観や文化、適性や能力、関心に沿ったものを設定すべきである。

*時間的枠組みを設けること
・目標には時間的枠組みを設けるべきである。
行動の具体化は時間の限定によって進められる。

3 目標に達する方法・手段の合意 テキストP 170
・目標の設定後、達成するための具体的な方法・手段の計画の立案が必要であり、ソーシャルワーカーとクライエント双方が、この計画を合意して進める。
・特に、ソーシャルワーカーとクライエントの、各々の役割の明確化と、相互の了解が重要である。
・クライエントが、自らが果たすべき役割を付与されることにより、自己評価や自己効力感が高まることに繋がる。それは、問題に積極的に取り組む姿勢をもたらす。

4 目標達成に関する評価についての合
・目標達成の評価について、支援の実施前に、評価の方法を決めることが必要とされる。評価は、測定可能なものが必要とされる。
・目標達成スケールとは、目標達成の度合いを「考えられる範囲内での最も望ましい結果」から「考えられる範囲内での最も望ましくない結果」の間で5段階を設定している。
・クライエントの参加を可能とするために、評価は目標に結びつけた、具体的な表現が必要とされる。
・また、進行中の援助の達成の度合いに目を向け、モニタリングすることも重要とされる。目標達成が進捗していなければ、再検討や、目標の修正が必要になることもある。

5 文書による契約と口頭での契約 テキストP171
・契約は,本来、文書・書面で、ソーシャルワーカーとクライエント双方が、合意事項を確認することが必要とされる。また、口頭で行われることもある。
文書での契約は内容が明確になる。双方の合意を証明するため署名する。
文書化は、口頭での契約よりも契約の誤解が生じることを避けることができる。
 常に文書に戻ることで、目指すべき方向の確認ができる。
・口頭での契約も、合意のための面接を十分に実施し、曖昧さの解消を図る。
・契約内容は、計画の実施過程において、変更の必要性が生じることもある。
・契約とは本来、双方の対等性の保障であり、協働作業としての援助過程の考え方である。
・医療のインフォームドコンセントの同意書が、クレームや訴訟を予防するために実施されることがあるが、本来の契約を重視する立場とは異なる。

<補足
・契約の文書に盛り込むべき内容の例としては,①援助のゴール・目標,②援助の方法,③援助者の役割,④クライエントの役割,⑤サービス提供の条件,が挙げられる。

*契約事項の例:在宅介護を受ける高齢のクライエントの場
①援助のゴール
・在宅における自立生活の支援
②援助の方法
・現在の生活を支えるために、必要なフォーマル・サービスと、それ以外のサービスを見つけ出し,サービスが適切に受けられるように調整を行なう。
③援助者の役割
・必要なサービスが何かについてのアセスメント
・サービスをより良く提供する事業所・人々を把握し,それらの条件をクライエントに説明する。
・クライエントの選択に基づき,サービスをクライエントが使い易いように連絡・調整する。
④クライエントの役割
・援助者が収集したサービスの情報を聞き.自らにとって適切なものを選ぶ
・インフォーマル資源について、自分が援助を頼める人やグループなどを、援助者に伝える。有償サービスの使用希望の有無の表明
⑤サービス提供の条件
・各サービスにかかる費用(有償のものか無償かを明確に示す)
・契約内容の変更こ関して(再交渉が可能、変更も可能であること)
・援助の期間
・援助の進捗状況・成果の評価、見直しについて

6 契約へのバリア 
・アセスメントまでは、クライエントは自らの問題、状況についてソーシャルワーカーに話すことが主要な行為である。
・契約、目標設定の段階においては、問題解決のために、自らで取り組める問題・課題は自分で取り組むことが求められる。
・契約段階では、クライエントの現実理解の無さ等に対して、現実への直面を強いることもある。
しかし、機械的に契約段階を進めるのではなく、クライエントの現状から出発し、クライエントのペースに合わせて進めることが重要である。
・合意による署名という結果よりも、合意を得る作業を行うという過程が重要である。

9章 相談援助のためのアセスメントの技術
1節 ソーシャルワークにおけるアセスメントの特性、援助的関係、面接
1 アセスメントの特性一統合的で多面的な問題のとらえ方 テキストP177

・アセスメントの特徴の一つとして、現状の問題点の背景、原因の分析が挙げられる。

・ソーシャルワークのアセスメントの特性を、以下に述べる。
 アセスメントの対象は、家族、小グループ、組織、地域など広範である。
 アセスメントの起源は、1917年のリッチモンドの『社会診断』にある。診断の用語を当てつつ、クライエント理解の枠組みを「社会」に求めようとした。
 1970年、バートレットにより「アセスメント」という用語が「診断」の代わりに用いられるようになった。
 近年、エコロジカルモデル等に準拠した統合的アセスメントが主流となり、アセスメントの特性は統合的で多面的に問題を把握することが強調されている。

・アセスメントは、静的なものではなく、支援の進行とともに情報が追加、統合、分析することによる動的なプロセスである。
 例えば、クライエントの潜在的な感情等の新たな情報は、支援方針を検討する際に重要な役割を果たす。
・ソーシャルワークは、クライエント個人と、周囲の環境の相互・交互作用に着目する。
・クライエントの問題対処能力、満たされないニーズ、問題の原因を考察する。
・クライエントの強さ=ストレングスへの着目も求められている。
・ヘップワースらによるアセスメントに関する記述。テキストP178 囲み
・クライエントの問題、状況とその背景への理解と分析が必要であり、人と環境との相互作用に対する視点、考察がその基盤となる。

2 アセスメント面接を支える援助的関係-留意点
*自己を知ること(自己覚知

・クライエントの現状に対する援助者の認識は、援助者自身がもつ過去の経験、価値観に影響される。
これらは、クライエントに対する態度、情報の取捨選択、予測などに影響を与える。
・専門職としての実践のためには、個人的な視点、価値観に捉われることなく、専門職としての客観的な認識、判断が必要となる。
・専門職は、自らの価値感を自覚し、影響を最小限にとどめる努力が必要となる。
自己覚知が重要だといわれる理由である。

*援助的関係をつくるために
・ソーシャルワーク面接においては、深くプライバシーに関わり、他者に話し辛い内容まで話し合う。
クライエントとの関係性、信頼の獲得が重要となる理由である。
・バイステックによる、クライエントとの関係形成を重視した七原則においても、強調されている点である
 良好な援助的関係の構築が、有効なアセスメントに繋がり、効果的な支援の実施をもたらすのである。


<相談援助の理論と方法 社会福祉士養成科トワイライトコースにて
社会福祉士受験支援講座・教員日記 : 相談援助の理論と方法 前期第8回講義レジュメ前半6/2 資源開発・ソーシャルアクション 社会福祉士養成科
6章4節 予防的対応とサービス開発
1 個別援助から地域支援へ テキストP143から
社会福祉士受験支援講座・教員日記 : 相談援助の理論と方法 前期第8回講義レジュメ後半6/2 アウトリーチとは 社会福祉士養成科
1 アウトリーチの必要性 テキストP151


日本福祉教育専門学校 社会福祉士養成学科・養成科
社会福祉士及び介護福祉士法


*用語解説は下記をクリック



○解説:バイステックの7原則
 ケースワークにおけるワーカーとクライエントの援助関係の最も重要な原則としてバイステック(Biestek, F. P.)が唱えたもので,①個別化,②意図的な感情表出,③統制された情緒的関与,④受容,⑤非審判的態度,⑥クライエントの自己決定,⑦秘密保持,の七つである。
 バイステックは,ワーカーとクライエントの良好な援助関係の形成がケースワーク実践のすべてに影響を与えるとして,それまで曖昧であった援助関係の概念を分析した。すなわち,援助関係をワーカーとクライエントの間に生まれる態度と感情による力動的な相互作用と捉え,この関係の目的はクライエントの適応の過程を支援することにあるとした。
援助関係全体の構成要素として,クライエントの共通した基本的なニーズから七つの原則を見出した。クライエントは,①個人として対応してほしい,②感情を表現したい,③共感してほしい,④価値ある人間として受け止めてほしい,⑤一方的に非難されたくない,⑥自分の人生は自分で決めたい,⑦他人に秘密を知られたくない,というニーズをもっている。

○ストレングス視点
 アメリカのソーシャルワーク実践理論において,1980年代以降提唱されている視点。それまで支配的であった病理・欠陥視点を批判する立場をとる。ストレングスとは,人が上手だと思うもの,生得的な才能,獲得した能力,スキルなど,潜在的能力のようなものを意味する。ストレングス視点とは,援助者がクライエントの病理・欠陥に焦点を当てるのではなく,上手さ,豊かさ,強さ,たくましさ,資源などのストレングスに焦点を当てることを強調する視点であり,援助観である。

○自己覚知 self-awareness
 援助者が,他者と自分をも含めた状況(援助関係やその時々に起こっている事柄)を的確に理解し,とらわれなく対象者に相対できるように,ありのままの自己に気づき受容することをさす。それは肯定的であれ否定的であれ自らの価値観,偏見,先入観,行動や反応パターン,パーソナリティなどのより深い自覚である。自己覚知を高める方法としては,スーパービジョンや教育分析などが代表的だが,つねに援助過程を振り返り吟味することも役にたつ。


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by yrx04167 | 2011-06-09 23:15 | Comments(0)