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児童福祉・里親とソーシャルワーク5 相談援助演習レジュメ概要 社会福祉士養成学科2クラスBにて

相談援助演習レジュメ概要 児童福祉・里親とソーシャルワーク5  社会福祉士養成学科2クラスBにて
<資料:子ども虐待 被虐待児童の心理的特徴
*虐待を受けた子どもは、人間に対する不信感を抱いており、なかなか本当のことを言おうとしない。そして次のような特性を持っていることが多い。
・ 虐待の事実を家族内のこととして秘密を守ろうとする
・ 親はよい存在であってほしいという思いから、親をかばおうとする
・ 親は悪くない、悪いのは自分だから暴力を振るわれるのだという理解をして、虐待されることを納得しようとする
・ こんな悪い子どもは親から見捨てられるのではないか、という不安を持っているためにより親にしがみつく

*したがって虐待が子どもにとって耐えがたい状況になって、明らかに親子を分離し施設に入所させなければならない場合でも、保護者の前では萎縮し、保護者の意向にそった返事しかできないこともある。
 施設入所についての子どもの意向は、安心した状況のなかで子どもの本心を酌み取るための配慮をした上で確認したい。

・一時保護所などで子どもが保護者と分離できている場合、「家には帰りたくない」とはっきり表明することがある。このような場合、子どもは施設入所に納得していると判断できるが、「どういう気持ちで施設にいくの?」と質問すると、「僕が悪いことをするから、イライラしたお父さんが酒を飲んで家の中がもめる。僕がいないほうが家が平和だから施設に行く」と答えた事例もある。
 これは明らかに「虐待されるのは自分が悪いから」という低い自己評価に陥っており、このような思い込みは修正する必要がある。
・ 保護者がイライラするのは子どもの性格や行動だけが原因ではない。保護者もまた助けを必要としている人である
・ すべての子どもは「安全に」「自信をもって」「自由に生きる」権利を持っており、大人はそれを認めなければならない
・ 今の家族の中では子どもの体や心が傷つき、安心して暮らすことができないことを説明した上で、心身の安全と健やかな成長のために、家族から離れて施設で生活する必要があることを伝える。
 また、親が「行け」というなら施設に入所するが、自分から親を切るようなことはしたくないと施設入所に躊躇する子どもに対しては、「児童相談所が様々な状況から判断して施設入所が適当と決定した」と言い渡すことが、子どもの精神的負担を軽減する。
 
*子どもへの心理的援助はどのように行うか
 虐待のために家族から分離されて施設に入所することは、子どもにとって非常に重大な体験である。
 こうした体験は、子どもに「二重のトラウマ(心的外傷)」を生じさせる可能性がある(西澤哲「虐待を受けた子どもへの初期対応」1995)。一つは、保護者からの虐待によるトラウマであり、もう一つは保護者を失ったことによるトラウマである。
 何らかの手当を施されない限り、こうしたトラウマが自然に癒えていくことはまずないと言っていいだろう。したがって、子どもの施設入所後にも、彼らがこれらのトラウマから回復できるよう、児童相談所はできうるかぎりの援助を行わなければならない。

*施設に入所している子どもに対して児童相談所が行いうる援助を、施設職員等へのコンサルテーションと子どもに対する直接的な心理療法の二つに分けて述べる。
*施設職員等へのコンサルテーション
 虐待や家族からの分離によるトラウマは、子どものさまざまな「問題行動」として現れる傾向がある。施設の職員は日常的にこれらの行動に振り回されてしまう傾向があり、そうした事態で子どもが「問題児」のレッテルを貼られてしまうことも珍しくない。
 子どものトラウマ性の反応としてまず考えられるのは、PTSD(Posttraumatic Stress-Disorder:心的外傷後ストレス障害)である。
 Benedek(1985)は、DSM-IIIのPTSDの症状は基本的に成人を対象とはしているものの、子どもにも適用可能であるとしている。しかし、虐待という刺激の反復的、慢性的な特質を考えた場合、子どもが示すトラウマ反応をPTSDにのみ限って考えるのは適切ではないといえる。またBriere(1992)も、虐待を受けた子どものトラウマ反応は、認知、情緒、感情、行動、対人関係などさまざまな領域において観察されるとしている。

*従来の諸研究と、児童養護施設における西澤らの観察(「養護施設における子どもの入所以前の経験と施設での生活状況に関する調査」1996)に基づいて、虐待というトラウマによって生じうると考えられる特徴を列記すると以下のようになる。

○ 入眠困難などの睡眠障害
 (PTSDの過覚醒症状)
○ 注意集中困難、多動性
 (PTSDの過覚醒症状)
○ 悪夢、夜驚
 (PTSDの侵入性症状)
○ 無感情、無感覚
 (PTSDの回避・麻痺症状)
○ 無気力、抑うつ
 (慢性化した回避・麻痺症状)
○ 年少の子どもや小動物に対する過度の攻撃行動
 (行動上の再現性)
○ かんしゃく・パニックや、それにともなう破壊的行動
 (感情調整障害)
○ 年長者や力の強いものに対する従順さ
 (力に支配された対人関係)
○ 年少時に見られる無差別的愛着傾向
 (愛着形成の障害)
○ 思春期以降に見られる対人関係の希薄さ
 (愛着形成の障害)
○ 他者、特に自分にとって重要な意味のある年長者に対する挑発的行動と、それにともなう虐待的な対人関係(トラウマとなった対人関係の反復的再現)
○ 万引き、暴力的行為、喫煙などの反社会的行為
 (トラウマ性の情緒の行動化)
○ セルフカットなどの自傷行為
 (感情調整障害、あるいは乖離症状への対処行為)
○ 拒食や過食などの摂食障害、食べ物への固執
 (口唇期性障害)
○ アルコールや薬物への依存
 (PTSDの回避・麻痺症状)

*児童相談所としては、以上のような症状もしくは行動を、保護者からの虐待や家族の喪失のトラウマに起因するものであると施設の職員が理解できるようなコンサルテーションを提供することが必要となる。

*参考 (心的)外傷後ストレス障害 PTSD
 posttraumatic stress disorder;PTSDは、突然の衝撃的出来事を経験することによって生じる、特徴的な精神障害である。
 PTSDが持つ他の精神障害にない特色は、明らかな原因の存在が規定されているという点で、PTSDの診断のためには災害、戦闘体験、犯罪被害など、強い恐怖感を伴う体験があるということが、必要条件とされる。しかし、どのような衝撃的出来事がPTSDの原因となりうるのかについては、議論がある。

*PTSDの主な症
 PTSDの主要症状は再体験(想起)、回避、過覚醒の3つである。
1) 再体験 (想起)
  原因となった外傷的な体験が、意図しないのに繰り返し思い出されたり、夢に登場する。
2) 回避
 体験を思い出すような状況や場面を、意識的あるいは無意識的に避け続けるという症状、および感情や感覚などの反応性の麻痺という症状を指す。
3) 過覚醒
  交感神経系の亢進状態が続いていることで、不眠やイライラなどが症状として見られる。
PTSD/外傷後ストレス障害 家庭の医学 - Yahoo!ヘルスケア
・抜粋 「標準治療:PTSDの症状自体は「異常な出来事に対する正常な反応」です。多くの人はショックな出来事を経験しても時間経過とともに心身の安定を取り戻していきますが、大きな心身の障害を残す場合には治療が必要となります。
 治療法は、薬物療法と心理療法です。不安・過敏症状・睡眠障害には抗不安薬、抑うつ症状には抗うつ薬、最近では選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)が第1選択薬として用いられています。
 心理療法としては、支持的な心理療法(カウンセリング)が中心ですが、恐怖体験の言語化と不安反応のコントロールをめざした行動療法、また、最近の新しい治療法としてEMDR(眼球運動による脱感作と再処理法)があります。これは、問題の記憶場面を思い浮かべながらリズミカルに目を動かすという方法で、外傷的記憶を処理するという効果があります。また、PTSDの人は外傷的記憶を思い出したくないのであまり口に出さず、ただ我慢しているために、周囲からなかなか理解を得られないことがありますから、ソーシャル・サポートの意義が重要です」。

*レジュメ6に続く

社会福祉士受験支援講座・教員日記 : 児童福祉・里親とソーシャルワーク1 相談援助演習レジュメ概要 社会福祉士養成学科2クラスBにて

社会福祉士受験支援講座・教員日記 : 児童福祉・里親とソーシャルワーク2 相談援助演習レジュメ概要 社会福祉士養成学科2クラスBにて

社会福祉士受験支援講座・教員日記 : 児童福祉・里親とソーシャルワーク3 相談援助演習レジュメ概要 社会福祉士養成学科2クラスBにて

社会福祉士受験支援講座・教員日記 : 児童福祉・里親とソーシャルワーク4 相談援助演習レジュメ概要 社会福祉士養成学科2クラスBにて


<記事バックナンバー 講義レジュメ等>
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日本福祉教育専門学校 社会福祉士養成学科・養成科
*日本福祉教育専門学校 社会福祉士養成学科は、4年制大学卒業(見込)等の方々が対象の、1年制の社会福祉士の養成コースの昼間部です
 社会福祉士養成科は、4年制大学卒業(見込)等の方々が対象の、1年制の社会福祉士の養成コースの夜間部(2コース)です

社会福祉士及び介護福祉士法


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<相談援助演習ライブラリ>
社会福祉士受験支援講座・教員日記 : グループワークの概要1 相談援助演習レジュメ概要 社会福祉士養成学科2クラスBにて

社会福祉士受験支援講座・教員日記 : グループワークの概要2 相談援助演習レジュメ概要 社会福祉士養成学科2クラスBにて

社会福祉士受験支援講座・教員日記 : グループワークの援助過程1 相談援助演習レジュメ概要 社会福祉士養成学科2クラスBにて

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by yrx04167 | 2012-02-27 11:49 | Comments(0)