貧困とソーシャルワーク 参考文献ブックレビュー2 シーブルック『世界の貧困』 筆者の担当講義

貧困とソーシャルワーク 参考文献<ブック・レビュー>2
今回の文献:『世界の貧困―1日1ドルで暮らす人びと』2005
*ジェレミー・シーブルック 著 渡辺 景子 (翻訳)  青土社


*当ブログ筆者(日本福祉教育専門学校 専任講師、社会福祉士)の担当講義 、本校社会福祉士養成学科・養成科等の、相談援助の理論と方法、相談援助の基盤と専門職、社会調査の基礎、大学のソーシャルワーク演習等で、紹介した文献、論文等を紹介していきます。

・豊かさの果てしない追求や、経済成長が国家レベルで求められているが、反面、貧しい人々が求めているのは、安全と充足である。P12

*隠蔽された貧困 チャリティか「見せしめ」か落伍者か
 欧米諸国において貧しい人々は、人目を引く犯罪や暴動等の報道意外は、見に見えない存在として、社会の主流から排除されている。人々は通行人か「チャリティの呼び物」に過ぎない。 同P14
 「現代の貧乏人たちは哀れみの対象とならず、ごみとして捨て去られるのだ」ジョン・バージャー
・貧しい人々は「市場の落伍者」である。人々には、不道徳、堕落、怠惰、不潔、薬物依存等のラベリングが施されている。
 「彼らのみすぼらしい貧困は、あんな風になるまいと他の人たちに思わせるための悲惨な警告、実例として利用されているのである」P18

*アメリカ合衆国の貧困
・バーバラ・エーレンライクの数ヶ月間の低賃金生活体験。ウエイトレスや販売員、清掃員等の仕事を、食べていくためには二箇所で働く必要があった。支払い可能な家賃の住まいを探すことも困難であり、家賃を支払うと所持金が尽きた。食料引換券による約7ドル分の食料は貧弱で、しかも問い合わせのために電話代が3ドル弱かかってしまう。
・生活圏の分断が進み、これら貧困な人々は富裕な人々から見えない。

*貧困者の封じ込め 貧困と刑務所
・合衆国は刑務所に収監されている人間の率が高い。重罪により投票権を剥奪された黒人男性は140万人であり、同人口の約15%にあたる。現在の刑務所関連の支出は400億ドル、司法制度に何らかの関わりを持ったことがある者の合計が400万人である。1982年以降の15年間でニューヨーク州では50箇所の刑務所が新設された。
・反面、刑務所制度の民営化により、経済成長の源泉となった。
・これらの別の面としては、社会的公正を求める集団的行動が力を失った現在、犯罪というかたちで個人的抗議活動が顕れているとも言える。

・「食べ物のことはどうでもよくなって、自分の身体もどうでもいいとおもうようになる」
 「手に入れられないものを見ているのは拷問」、「眠るのがただひとつの逃げ道」
 人間らしい生活とはとても言えない。貧困によって生活や生き方の人間らしさが剥奪される人々。

・豊かな人々は「門と柵で囲ったコミュニティ」の中で、ボディガード等に防衛された生活を送っている。豊かな人間も幸せではなく、不公正に苦しんでいるのか。

*貧困と犯罪の社会病理
・社会的不平等の拡大は犯罪の増加をもたらし、米国では人口十万人あたりの犯罪率が1960年から1996年にかけて約3倍に増加した。毎年およそ1300万人が犯罪の被害にあっている。
・犯罪増加は、警察の記録が効率的になったこと、また犯罪の機会が増加したこと、これは流動性や自由が増したことによる代償である。
・犯罪の原因は加害者の人間性が元凶なのか、人間は貪欲で自己中心的なのか。資本主義だけが利己的な目的を追求しながら同時に社会に調和と自由をもたらす道なのか。

*貧困と麻薬 
 社会を変えることは出来ないが、あなたの考えを変えることは出来る(皮肉)

・米国の非合法薬物使用率(マリファナ、コカイン、幻覚剤)は2000年6.3%、2001年7.1%である。病気の人間の個人的問題と解釈されてきた。
・欧米では薬物によって精神状態の変化(「ばか騒ぎ」や超越感)を得る若者が多いのだが、タブーの対象である。豊かな国々が提供できない満足とは何か。
・欧米の豊かさはいくつかの基本的欲求に答えることが出来ないでいる。
・米国における5歳から19歳までの子どもの死因の第2位は殺人と自殺である。無分別な仕事・娯楽・気晴らしの中での無分別な暴力は拡大する。

・裕福・ミドルクラスの人々は脆弱性によって薬物使用に至り、貧しい人々は貧困が人々を薬物使用へ追いやる、とされている。

*貧困女性の人身売買
・若い女性の誘拐、騙すことによる人身売買は、1997年に中央・東ヨーロッパ・振興独立国から同じ地域へ17万5千人が売買されたと推計される。
*若い女性を標的に
・人材スカウト業者、親戚、国立養護施設によって、斡旋業者に売られてしまう。
・借金に縛られ、監禁、暴行、麻薬の被害に遭う。

*貧困と闇経済
・世界の富の再分配システムが存在しない中での社会的不公正への反応である。
・闇経済は役人や企業から黙認されている。政治の犯罪化と犯罪の政治化が闇経済の再分配の役割を支える。本物の経済の模倣である。
・闇経済の主要な「業務」、絶滅危惧種、資金洗浄、ダイヤモンド、汚職、麻薬、汚職、誘拐、強盗、人身売買等の不法な実施や取り引きである。多国籍企業は商業的窃盗などによって、先住民の共有地や知識を盗んでいる。
・闇経済の経営側の人々の子弟は新興ブルジョアジーである。しかし、この人々には優雅さや教養の欠片も無く、贅沢三昧と傲慢、無法の限りを尽くしている。搾取している貧困な人々へは敵意と秩序を押し付けようとしている。

*目次
1 目に見えない貧困
2 貧困を測定する
3 貧困を定義する
4 貧困化のメカニズム
5 富と貧困
6 自立を救い出す

*内容(「BOOK」データベースより)
引用:一握りの大金持と、毎日の食にも窮する圧倒的多数の貧者とが共存する現代社会の歪み。自由・平等を標榜するグローバリゼーションがもたらした、この全世界的な不公正を如何にして打破すべきか。経済開発のみでは解決しえない、お金より安全・安心を願う民衆の切なる欲求に応答し、大胆な構想をラディカルに提言する―。

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by yrx04167 | 2013-02-04 12:20 | Comments(0)