社会福祉士・相談援助入門講座web11 児童相談所、社会的養護とは 相談援助の理論と方法等予習資料
<予習・参考資料>
*「相談援助の基盤と専門職」と「相談援助の理論と方法」などの予習・プレ学習として活用して下さい。
社会福祉 各領域の概要・児童福祉(4)
*児童相談所・概要
都道府県及び政令指定都市に設置される行政機関(中核市も設置できる)。都道府県によってはその規模や地理的状況に応じて複数の児童相談所およびその支所を設置している。
児童に関する各般の問題につき,家庭その他からの相談に応じ,児童および家庭につき必要な調査ならびに医学的・心理学的等の判定を行い,それらに基づいて児童および保護者の指導を行うとともに,児童を一時保護する等を業務とする。
*児童相談所の業務
①児童の生育上の問題について、家庭その他から相談に応ずる。
②児童とその家庭について必要な調査を実施し,医学的,心理学的,教育学的,社会学的及び精神保健学的判定
③上記判定に基づいて必要な指導を行い,また児童福祉施設への入所,里親及び保護受託者への委託措置をとる。
④必要な場合,一時保護を行う。
*上記のような業務に応じて、児童に対して養育・保健・養護・教護・心身機能・長期欠席および不就学・性向相談,しつけ相談など個別的,専門的な援助の方法でもって対応する。
*虐待事例への援助の特質
・保護者の意に反する介入の必要性-子どもの生命や健全な成長・発達、権利を守るため
・虐待をする保護者のリスク―子どもにとって安心できる大人ではない。
*援助に際しての留意事項
個々の子ども虐待は極めて多様であるだけでなく、福祉、保健、医療、教育、司法など多岐にわたる問題を抱え、かつその背景やメカニズムも複雑である。個々の問題に応じた複合的対処をしなければならない。
(1)迅速な対応
児童虐待防止法では、「児童の安全の確認、児童相談所への送致又は一時保護を行う者は、速やかにこれを行うよう努めなければならない」(児童虐待防止法第8条第3項)と規定された。
(2)組織的な対応
(3)機関連携による援助-多様な複合的問題を抱える家族に対して
(4)子どもの安全確保の優先
(5)家族の構造的問題としての把握
子ども虐待が生じる家族は、保護者の性格、経済、就労、夫婦関係、住居、近隣関係、医療的課題、子どもの特性等々、実に多様な問題が複合、連鎖的に作用し、構造的背景を伴っているという理解が大切である。したがって、単なる一時的な助言や注意、あるいは経過観察だけでは改善が望みにくいということを常に意識しておかなければならない。放置すれば循環的に事態が悪化・膠着化するのが通常であり、積極的介入型の援助を展開していくことが重要との認識が必要である。また、家族全体としての問題やメカニズムの把握の視点と、トータルな家族に対する援助が必要不可欠である。
(6)保護者への援助-虐待を行った者に対する対応も今後重要となる分野である。
(7)基本としてのカウンセリングマインド
保護者も往々にして虐待の被害者であったり、様々な困難に直面している者であることが多い。
(8)権限の行使
<対応の留意点 例>
・保護者が、関係機関の支援や働きかけを拒否することはハイリスク要因として捉えることが必要である。
・虐待する保護者の外傷に対する一見合理的な説明、反省や「もう虐待はしない」ということばにも注意が必要である。
*虐待する保護者のタイプと対応を踏まえる
①育児ストレスが高いタイプで、相談意欲のある保護者には受容的なアプローチ
・自ら不安を訴え相談したり、問題解決のニーズを感じている保護者には、多くの場合、受容し、共感し、傾聴することにより、保護者を支えていくことが求められる。虐待の程度が軽度である場合には、あえて虐待の告知をせずに、保護者の主訴へ対応するかたちで対応した方がよいこともある。その場合でも、虐待を保護者自身の問題として解決していくためには、時期をみて虐待であることに気づかせることが大切である。
②攻撃的で周囲の支援を受け入れないタイプの保護者には介入的なアプローチ
虐待の事実について矮小化や否認するなど虐待認識に歪みを持っていたり、関係機関の支援を拒否したりして、状況の改善が見込まれない保護者の場合には、児童相談所は保護者と対峙し、子どもの保護や状況の改善について毅然として向かい合う姿勢をとる必要がある。児童相談所は保護者の行為が虐待に当たることを明確に告げ、保護者の無理押しを許さず、子どもの安全を守るためには積極的に介入し、必要であれば法的対応も辞さないという姿勢を、妥協のない行動で知らせる必要がある。そして、保護者が自らの行動を変えようとせざるを得ないというときに、支援者がいたわりやねぎらいの言葉をかけることで、保護者に支援を受け入れる姿勢が芽生えてくることも、決して少なくないと言われている。
厚生労働白書より抜粋
<社会的養護の充実>
(1)社会的養護の基本的方向
社会的養護は、かつては、親のない、親に育てられない子どもを支援する施策であったが、現在では、虐待を受けた子どもや何らかの障害のある子どもを支援する施策へと変化しており、一人一人の子どもをきめ細やかに支援していけるような社会的資源として、その役割・機能の変化が求められている。
社会的養護が必要な子どもたちを社会全体で温かく支援していくことが必要であることから、厚生労働省では、2011(平成23)年1月から、「児童養護施設等の社会的養護の課題に関する検討委員会」を開催して、社会的養護の短期的課題と中長期的課題を集中的に検討し、同年7月に、同委員会及び社会保障審議会児童部会社会的養護専門委員会で、「社会的養護の課題と将来像」を取りまとめた。
これに沿って、家庭的養護の推進、里親委託・里親支援の推進、施設運営の質の向上、親子関係の再構築の支援、自立支援の充実、子どもの権利擁護などを進めている。
(2)家庭的養護の推進
虐待を受けた子どもなど、家庭で適切に養育されない子どもに対しては、家庭的な環境の下で愛着関係を形成しつつ養育を行うことが重要である。原則として、家庭養護(里親、ファミリーホーム)を優先するとともに、児童養護施設等での施設養護についても、施設の小規模化や、地域分散化によりできる限り家庭的な養育環境に変えていく必要がある。
このため、里親手当の引上げや、里親に対する相談支援等を行う「里親支援機関事業」を実施するほか、2011(平成23)年3月に、里親委託優先の原則を明示した「里親委託ガイドライン」を策定した。さらに、2012(平成24)年度予算では、児童養護施設及び乳児院に里親支援専門相談員を置くことにしたところであり、里親の孤立化防止など里親支援の体制を整備しながら、里親委託を推進していく。
施設では、ケア形態の小規模化を図るため、児童養護施設、乳児院、情緒障害児短期治療施設及び児童自立支援施設を対象とした小規模グループケアの実施や、地域小規模児童養護施設の設置を進めている。2012(平成24)年度予算では、地域小規模児童養護施設等を賃貸物件を活用して運営する場合に、賃借料の一部を措置費に算定できるようにするなどした。
(3)年長児の自立支援策の拡充
社会的養護の下で育った子どもは、施設等を退所し自立するに当たり、保護者等から支援を受けられない場合が多く、その結果、さまざまな困難に突き当たることが多い。このような子どもたちが他の子どもたちと公平なスタートが切れるように自立への支援を進めるとともに、自立した後も引き続き子どもを受け止めるような支援の充実を図ることが必要である。
このため、2009(平成21)年に施行された改正児童福祉法では、児童自立生活援助事業(自立援助ホーム)について、都道府県等に実施を義務付け、費用を負担金で支弁することとした。
また、2010(平成22)年度から、施設を退所した後の地域生活及び自立を支援するとともに、退所した人同士が集まり、意見交換や情報交換・情報発信を行えるような場を提供する「退所児童等アフターケア事業」を実施している。
さらに、施設等を退所する子ども等に対しては、親がいない等の事情で身元保証人を得られないために就職やアパート等の賃借に影響を及ぼすことがないように支援することが必要である。このため2007(平成19)年度から、施設長等が身元保証人となる場合の補助を行う「身元保証人確保対策事業」を実施している。
2012(平成24)年度予算では、就職支度費、大学進学等自立生活支度費、就職に役立つ資格取得や講習の受講等のための特別育成費の改善を図り、進学や就職を支援している。
(4)社会的養護に関する施設機能の充実
2011(平成23)年6月に、児童福祉施設最低基準を改正し、児童養護施設等の居室の面積基準の引上げその他の改善を行った。また、施設運営の質を向上させるため、「社会的養護の課題と将来像」では、施設種別ごとの運営指針を策定するとともに、社会的養護の施設での第三者評価及び施設長研修を義務化することが盛り込まれた。これを受けて、2011年9月に省令を改正し、第三者評価及び施設長研修を義務付けた。
2012(平成24)年3月には、児童養護施設、乳児院、情緒障害児短期治療施設、児童自立支援施設、母子生活支援施設の5つの施設運営指針のほか、里親及びファミリーホーム養育指針を策定するとともに、第三者評価の評価基準を策定した。
2012(平成24)年度予算では、虐待を受けた子ども等の増加に対応し、ケアの質を高めるため、社会的養護の施設の児童指導員・保育士等の基本的な人員配置を、30数年ぶりに引き上げるためなどの予算を盛り込んだ。引き続き、施設機能の充実を進めていくこととしている。
(5)被措置児童等虐待の防止
施設入所や里親委託などの措置がとられた児童等(被措置児童等)への虐待があった場合には、児童等を保護し、適切な養育環境を確保することが必要である。また、施設や事業者を監督する立場にある都道府県等は、不適切な施設運営や事業運営について、児童福祉法に基づき適切に対応する必要がある。
このため、2009(平成21)年に施行された改正児童福祉法では、
①被措置児童等虐待に関する都道府県等への通告や届出
②通告した施設職員等に対する不利益取扱いの禁止
③届出通告があった場合に都道府県等が講じるべき調査等の措置
等が規定された。これを受けて厚生労働省では「被措置児童等虐待対応ガイドライン」を作成し、被措置児童等虐待の防止に取り組んでいるところである。
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*社会福祉士とは
「社会福祉士及び介護福祉士法」により定められた、相談援助、運営管理等、ソーシャルワークに携わる専門職の国家資格です。
各種の相談機関、福祉行政機関、福祉施設・団体、医療機関などにおいて,専門的知識と技術をもって,福祉サービス利用者の相談援助や,グループワーク、施設の運営管理、地域福祉活動等を行なう社会福祉専門職です。
社会福祉士は、子ども、コミュニティ、障害者、貧困、女性、高齢者、更生保護等、多岐にわたる領域で、相談援助等の実務を担っています。
社会福祉士及び介護福祉士法
日本福祉教育専門学校 社会福祉士養成学科・養成科
*日本福祉教育専門学校 社会福祉士養成学科は、4年制大学卒業(見込)等の方々が対象の、1年制の社会福祉士の養成コースの昼間部です。
社会福祉士養成科は、4年制大学卒業(見込)等の方々が対象の、1年制の社会福祉士の養成コースの夜間部(2コース)です。
<入学予定・検討中の皆様へ―社会福祉士養成学科・養成科の入学前講義>
認知症高齢者問題の現状と課題 社会福祉士入門講座
2/21(木)19時から21時 日本福祉教育専門学校高田校舎
・社会福祉士を目指す方を対象としたプレスクール・入学前講義です。これから本校の受験を検討されている方、すでに本校に合格された方が対象です。参加無料。
<進路検討中の皆様へ 学校説明会>
日本福祉教育専門学校説明会オープンキャンパス
2/23(土)13:20-15:30 参加予約不要、無料
会場:日本福祉教育専門学校本校舎 JR・東京メトロ 高田馬場駅から徒歩1分
・当ブログ筆者(日本福祉教育専門学校 専任講師、社会福祉士)が、社会福祉士の資格と就職、社会福祉士養成科・学科の概要を解説します。
<お問い合わせ先>
学校法人敬心学園 日本福祉教育専門学校
電話:0120-166-255
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