生活保護受給者を対象としたグループワーク 精神科デイケア 横浜のドヤ街「寿町」における実践報告 筆者

*当ブログ筆者の論文の概要
『生活保護受給者を対象としたグループワーク-ドヤ街「寿町」における実践報告と考察-』
日本福祉教育専門学校研修紀要第21巻1号 39頁から52頁 2013年5月

<概要>
Ⅰ . はじめに .公的扶助と精神科デイケア
1. ドヤ街「寿町」と「ことぶき共同診療所精神科デイケア」とは
2. デイケア開設時の特徴
3. 貧困・生活保護受給者を対象としたグループワーク

Ⅱ . 寿町地域と精神科デイケアの経緯
1. 寿町と地域福祉活動の概要
- 2000 年5 月から2002 年7 月
(1)高齢化する寿町とコミュニティ・ケア
(2)居場所支援と当事者ケアワーカーの就労開始

2. 精神科デイケアの経緯 2000 年5 月~ 2002 年7月
(1) 2000年5月以降-利用者間の摩擦と衝突、季節行事の拡大
(2) 2001年-作業・社会貢献活動による役割と期待の獲得
(3)2002年-統合失調症利用者の孤立・孤独死

Ⅲ . 寿町のグループワーク実践-実践から抽出された援助の手法
(1)引きこもりを脱し、生活の拡充を図る支援
(2)作業による承認の機会の創出.自信の強化
(3)訪問等個別援助の併用による危機の予防
(4)創作活動による自己表現の促進
(5)社会資源の適切な利用の為の情報提供
(6)柔軟な参加形態と主体的な参加
(7)ドヤ街の生活と文化に合ったプログラム


2. グループワークの専門的援助関係

3. ドヤ街の精神障害者に対する観察技法
(1)幻聴等の精神症状悪化の早期発見
(2)金銭管理と人間関係の観察-たかりの予防
(3)利用者の観察-視線、虱や南京虫、服装
(4)グループ観察の要点.ボス的支配を防ぐ

4. 自助グループに不参加のアルコール・薬物依存症者に対するアプローチ

5. 生活保護費の自己管理と「生き抜く技法」

6. 共同調理と利用者の食生活の特徴

7. 利用者のセルフケアの向上、就労支援と「相互扶助的就労」

8. 利用者の内なる排除と相互理解の必要性

Ⅳ . 貧困領域のグループワークのあり方
1.「ホーム」喪失者の避難所としてのドヤ街
2. 自尊感情の貧困と社会的排除
3. 当事者の共同体と根源的なニーズ
4.「 自立」支援とグループワークの必要性


<抜粋
 「寿町」 地域とは、横浜市中区の簡易宿泊所が密集した「ドヤ街」 である。
 かつての横浜港で働く日雇労働者とその家族のドヤ街の面影は無く、現在は、高齢者や障害者等の生活保護受給者が単身で集住する「福祉の町」である。
 医療法人・ことぶき共同診療所(以降、診療所と表記)は、精神科・内科・整形外科等の医療機関であり、通院する殆どの患者が、寿町の簡易宿泊所に住む生活保護受給者である。
 併設の精神科デイケア(以降、デイケアと表記)は、利用者のほぼ全員が、寿町の簡易宿泊所に単身で居住する精神障害者であり、生活保護を受給している。
 利用者の疾患は、アルコール依存症、薬物精神病(依存症、主に覚醒剤)、統合失調症等の多岐にわたる。
 各利用者の精神科リハビリテーションとしての課題は、断酒の継続、心身の健康と日常生活の維持、借金・ギャンブル問題の改善、人間関係やコミュニケーションの向上、就労等であり、年齢層と合わせて幅広い。
 現在、デイケアは火曜日から土曜日の午前10 時から午後4 時まで、午前は共同調理と会食、午後は公園の緑化・園芸作業、造形と書道の創作活動、音楽・茶道・エアロビ・ヨガの教室、卓球等のスポーツ、散歩や映画鑑賞などのプログラムを実施している。
 また、季節毎の農作業等の宿泊プログラム、運動会、餅つきなどの年間行事を実施している。
 なお、精神保健福祉士や社会福祉士、看護師等の常勤及び非常勤職員がデイケアの実践を担っている。
 これまでのデイケアにおける実践の成果としては、統合失調症で簡易宿泊所に閉じこもっていた利用者が、デイケアに欠かさず通所し生活も安定した事例や、アルコール依存症から回復した事例等が挙げられる。
 反面、毎日通所していたが自室で孤独死、自殺を迎えた利用者も目立つ。
 筆者は、準備段階を含めて1999年3月から現在まで、かつては常勤職員、現在は非常勤職員として、この診療所とデイケアにおける実践を継続中である。

(註)
 簡易宿泊所とは、旅館業法における4種(ホテル、旅館、簡易宿所、下宿)の旅館営業許可業種のうち
のひとつである。
 ドヤ街は他に、「山谷」や、「釜ヶ崎」が現存する。山谷は、東京都台東区と荒川区にまたがる、「泪橋交差点」を中心としたドヤ街である。釜ヶ崎は、大阪市西成区萩之茶屋周辺の簡易宿泊所街・寄せ場である。1966年の「第五次釜ヶ崎暴動」以降は、行政や大阪府警により「あいりん地区」の呼称が用いられるようになった。
 ドヤ街は、「寄せ場」とも称されるが、寄せ場は、大都市内のドヤの密集地域に位置付く、日雇労働者の就労場所をいう。


 寿町とその地域福祉の歴史的経緯は、拙稿において報告した。
 『簡易宿泊所街・横浜寿町における民間支援活動-歴史的経緯の概要』,『研究紀要』第18巻第1号,学校法人敬心学園日本福祉教育専門学校福祉文化研究所, 2010 年
 また、ことぶき共同診療所精神科デイケアの準備・開始期の実践は、拙稿で報告している。
 『簡易宿泊所街・寿町における、生活保護受給者等を対象とする精神科デイケア-開始段階の実践に関する考察』,『研究紀要』第20巻第1号,学校法人敬心学園日本福祉教育専門学校福祉文化研究所,2012 年

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当ブログ筆者による関連する論文等一覧-主要なもの>
 貧困領域のソーシャルワーク、生活困窮者・生活保護受給者対象のグループワーク


・「名古屋<笹島>野宿者聞き取り報告書(第1章第3節)」 笹島の現状を明らかにする会,1995年,共著

・「<笹島>問題をめぐる現状と政策提言―寄せ場と野宿(5章2節)」 <笹島>問題を考える会,1998年,共著

「野宿者の人々と共に創る演劇」 『Shelter-less』(通号4),現代企画室,1999年,単著

「書評:冨江直子著『救貧のなかの日本近代-生存の義務-』」 『研究所年報』38号,明治学院大学社会学部付属研究所,2008年,3月単著

・「“日本型”社会福祉の源流をもとめて-小河滋次郎著『社会事業と方面委員制度』を読む」 『社会福祉学』32号,明治学院大学大学院社会学研究科社会福祉学専攻,2008年,共著

・「貧困・社会的排除とホームレス女性についての一考察」 『Socially』16号,明治学院大学社会学・社会福祉学会,2008年,単著

「簡易宿泊所街における民間支援活動と支援者のあり方について~横浜寿町における民間支援活動をめぐって~」(修士論文)2009年,単

・「簡易宿泊所街・横浜寿町地域における民間支援活動-歴史的経緯の概要-」 『研究紀要』
第18巻第1号,学校法人敬心学園日本福祉教育専門学校福祉文化研究所,2010年5月,単著

・「簡易宿泊所街・寿町における、生活保護受給者等を対象とする精神科デイケア-開始段階の実践に関する考察」, 『研究紀要』第20巻第1号,学校法人敬心学園日本福祉教育専門学校福祉文化研究所,2012年,単著


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by yrx04167 | 2013-05-24 12:20 | Comments(0)