相談援助の基盤と専門職講義 劣等処遇の原則、マルサス人口の原理、混合収容とは 保健医療サービス練習問題

相談援助の基盤と専門職 前期第13回講義レジュメ概要1
 当ブログ筆者(本校専任教員、社会福祉士)が、社会福祉士養成学科にて、2016年7月に講義            
<この記事は、ダイジェスト版と講義当日の補足。レジュメ完全版は講義にて配布。解説の詳細は講義にて>


ソーシャルワークの歴史 相談援助の形成過程Ⅰ
1節 ソーシャルワークの源流 
1 ソーシャルワークの前史 

・イギリスにおける救貧院(10世紀頃から)
 修道院に付設。

*社会変動に伴う対応
・エンクロージャー
 耕地の牧場への転換、「羊が人間を食う」-貧農の離村、貧困化。
 羊毛とその取引は、農民(貧農)から耕作地を奪い、牧羊に転換が図られた。貧農たちは、土地を離れ、都市に流入することを余儀なくされた。

<初期の救貧の法制>
 16世紀になり、住居を喪失した貧民が増加した。農地の囲い込み(第一次)、自営農家(ヨーマン)の減少、食糧不足等の影響があった。
 ヘンリー8世の王令、1531年の王令、1536年、1572年 略、当日の講義にて解説。

<ヘンリー8世 [1491~1547]在位1509~1547>
 結婚問題を契機に、イギリス国教会を設立、ローマカトリック教会から独立した。また、修道院を解散した。
 修道院は、貧民にとって避難場所であったため、その解散は慈善活動への影響が大きかった。また修道院の解散が引き起こした混乱は、人々の価値観にも影響をもたらした。

・総じて、中世の社会システムの変化によって、影響を受けたと言えよう。
 封建制度は、身分、階層の強固なヒエラルキーが構築されていたが、領主等は、自分たちの土地の農民の保護も担っていた。

*エリザベス救貧法の完成 (1601年)
<ポイント>
・労働能力の有無を基準に、①有能貧民、②無能力貧民、③児童に分類し、就労を強制したり、教区徒弟として送り出した。救貧法に基づく制度は、教区ごとに救貧税を徴収して救貧事業を行うものであった。

<解説>
 都市に流入した住居喪失貧民の増加などにより、イギリスではヘンリー8世の救貧立法、各地方の個別の救貧行政が行なわれていたが、手に余る教区・都市も出始めていた。
 そこで1601年、「エリザベス救貧法」として知られる救貧立法の集大成がなされた。 略、当日の講義にて解説。

<補足>
◎エリザベス救貧法は当時の公的救済制度の基本法。
 教区を救貧行政の単位とし,治安判事の監督のもとで,貧民監督官が貧民の保護・監督にあたり,費用として救貧税の課税・徴収を行った。
・エリザベス救貧法の特徴は、国家単位での救貧行政という点にあり、中央集権化が図られた。貧民の待遇は抑圧的(収容と強制労働が基本)であり続けた。

<救貧法体制>
枢密院
 治安判事
 貧民監督官は、貧困層の救済を行い、貧困層の監視者でもあった。 略

*エリザベス1世[1533~1603]
 イングランド女王。在位1558~1603。イギリス国教会を確立、スペインの無敵艦隊を破って海外発展を果たし、イギリス絶対主義の最盛期を築く。

清教徒革命、ピューリタン、王の処刑(1649年)
王政復古 1660年
名誉革命 168年ウィリアム3世、権利宣言と権利章典

・17世紀初めに一応の完成をみたイギリスの救貧法は,時代の変遷により改正を経ながら,その後300年余り,20世紀前半まで存続した。 第21回社会福祉士国家試験問題
・エリザベス救貧法(1601年)は,救済の対象者を,労働能力のある貧民,労働能力のない貧民,親が扶養できないとみなされる児童の3つに分類した。


1722年、ワークハウステスト法の成立

 労役場で労働能力のある者に作業をさせる方法がとられた。作業資材を提供した。
◎救貧法による救済は労役場への収容に限定されることとなった。
・労役場は、ときに健常者と病気を持つ者を分け隔てなく収容し、院内での伝染病の集団感染もおこった。こうした劣悪な処遇から脱走を試みる貧民はあとを絶たなかった。貧困問題の根治には至らなかった。
・施設収容による保護=院内救済。
・一括して施設へ収容=混合収容。

*産業革命:1733年「飛びひ」発明(紡績機械の発達の始め)。1765年、蒸気機関発明。

1782年 ギルバート法制定

 有能貧民の雇用斡旋や院外救済の実施。労役場は労働能力のない貧民の収容施設となった。労働能力ある貧民に仕事の世話と就業までの賃金不足分を補充した。労役場中心の救貧立法から院外の居宅保護(院外救済)への転換を促した。
・ギルバート法(1782年)は,労働能力のある貧民に対して,労役場以外の場である在宅での救済を認めた。<第18回社会福祉士等国家試験出題>

1795年 スピーナムランド制度
 労働貧民の賃金補助制度である。食糧価格が上昇し、労働者の実質賃金が下がったとき、扶養家族数に応じて不足分を給付した。一揆(暴動、内乱)の危険があり,賃金補助制度が行われた。1834年まで続く。
・スピーナムランド制度(1795年)は,働いている労働者や失業者を対象として,パン価格と家族数にスライドして定められた最低生活水準を設定して,その基準に満たない分を救貧税から手当として支給するものであった。<第18回社会福祉士等国家試験出題>

・スピーナムランド制度は、ベーシック・インカムのさきがけの一例との位置づけもある。
 略、当日の講義にて解説。

1798年 マルサス『人口の原理』 An Essay on the Principle of Population
 イギリスの新救貧法の思想的根拠は、マルサスの『人口の原理』(1798年)に置かれ、有効な貧困対策は、人口抑制策以外にはないとするものであった。
(人口の増加と食糧増産。予防的人口抑制)

1834年、新救貧法(改正救貧法)の成立 
 内容は、①救済水準を全国均一とする、②有能貧民の居宅保護を廃止し、救済をワークハウス(労役場)収容に限定する、③劣等処遇の原則の明示。

◎劣等処遇の原則 principle of less eligibility
 救貧法による救済対象となる貧困者の生活水準とは,労働して自活する最下層の労働者(ワーキングプア)の生活よりも劣った、低いものでなければならないとする原則である。
 これは、劣悪な処遇によって,救済を受けることを自発的に躊躇させること,救済を受ける貧困者の数を制限し,救貧事業に要する費用を節約しようとする意図もあった。救貧法のへの批判  略、当日の講義にて解説。

<社会福祉士等国家試験出題実践:救貧法>
・改正救貧法(1834年)による救済を受ける者は,最下層の独立自活している労働者の生活水準よりも実質・外見ともに低いものでなければならないとされた。第18回社福
・イギリスの改正救貧法(1834年)の原則 - 中央集権的で効率的な救貧行政を目指し,行政水準の全国的な統一を原則とした。  第21回社会福祉士国家試験問題


*ワーキングプア
 働く低所得層である。不安定な就労を行う人々の貧困問題ともいえる。

*今日の貧困、生活困窮とは
 貧困とは、複合的な生活問題であると考えられる。それは、失業等の要因によって経済的困窮に陥り、その影響により、医療や教育、住宅等の社会サービスの利用が困難になり、健康悪化や教育格差、不安定居住の生活問題を生じ、虐待やアルコール依存症等の個人や家族の病理とも言える問題をも併発する傾向がある。逆に、個人の病理が契機となり、失業し経済的困窮を招くこともあるだろう。このような貧困を巡り、諸問題が重層化する傾向がみられる。 略、当日の講義にて解説。

<続く>


当ブログ筆者が報告を行います お知らせ
第46回全国社会福祉教育セミナー2016 会場 淑徳大学 「ソーシャルワーク教育の新たな発展をめざして」
分科会第4 『一般・短期養成施設や通信課程におけるソーシャルワーカー養成の現状と課題(仮)』2016年10月30日

コーディネーター: 空閑浩人(同志社大学)
発題者: 山本由紀(上智社会福祉専門学校)
     明星明美(日本福祉大学福祉経営学部 通信教育)
     関屋光泰 (日本福祉教育専門学校)
主催 日本社会福祉教育学校連盟 日本社会福祉士養成校協会 日本精神保健福祉士養成校協会


福祉施設職員のメンタルヘルスの支援 職員のストレスマネジメントと施設のリスクマネジメント 当ブログ筆者の論文 抜粋 リンク

貧困問題と相談援助 当ブログ筆者の講演 音声記録の一部を公開中


<保健医療サービス 練習問題>
問題1 1か月当たりの自己負担が一定額を超える部分は償還されるという高額療養費制度において、その金額は,被用者保険と国民健康保険とで異なっている。

問題2 高度先進医療や一定の医療について特定療養費制度があり,基礎的療養部分は保険給付以外の部分は本人負担とされている。

問題3 健康保険組合は,法定給付のほかに付加給付を実施することができる。

問題4 医療サービスについては,被保険者は医療機関からサービスそのものを受けるという現物給付が原則である。

問題5 医療機関に支払われる診療報酬の額は,厚生労働大臣によって定められている。

問題6 高額療養費制度の仕組みは,被用者保険(健康保険)でも国民健康保険でも同じである。

問題7 高度先進医療,特別の擦養室への入院,特殊な材料を使用した歯科治療等にかかった費用の,その一定割合は特定療養費として現物給付される。

問題8 医療保険の給付は,診療報酬の仕組みに基づいて給付することが義務づけられた法定給付と,これに上乗せして保険者が自らの裁量によって行う付加給付がある。

問題9 日本の医療保険の給付(療養の給付)は,原則として現金給付(償還払い)である。

問題10 現金給付とは、患者に対して医療サービスを直接行うのが基本である。



障害者に対する支援と障害者自立支援制度 練習問題 中級
<社会福祉士・精神保健福祉士共通科目受験対策講座web>

問題1 障害者運動及び民間活動に関する次の記述のうち,正しいものを2つ選びなさい

1 1970年代に入り,アメリカの自立生活(Independent Living)運動は,重度の身体障害児をもつ親の会の活動として出発し,発達保障という考え方を提唱した。
2 我が国における精神障害者の家族会の全国組織は,1940年代後半に設立されたが,精神障害者本人による全国組織はまだ設立されていない。
3 1950年代に,知的障害児の親の会として出発した全日本手をつなぐ育成会(当時は,全日本精神薄弱児育成会)は,現在では知的障害者の本人部会を設けている。
4 我が国における小規模作業所づくりは,1980年代から精神障害者の自主運営活動として始まったが,1990年代に入り,知的障害者や身体障害者の作業所づくりが始まった。
5 障害者インターナショナル(DPI)は,1981年の国際障害者年を契機に設立され,身体障害にとどまらず知的障害や精神障害等様々な種類の障害のある人が活動する場となっている。

問題2 国際生活機能分類(ICF)に関する次の記述のうち、誤っているものを一つ選びなさい

1 2001年の国際生活機能分類(ICF)において、生活機能は「心身機能・身体構造」,「活動」,「参加」から構成され,背景として環境因子,個人因子の各要因の、相互作用モデルが採用された。
2 国際生活機能分類(ICF)における「活動」とは、日常生活動作だけでなく様々な生活行為である。
3 国際生活機能分類(ICF)で介護者は、背景のうちの「個人因子」に含まれる。
4 国際生活機能分類(ICF)の環境因子には、他の人々の社会的な態度による環境の持つ影響力が含まれる。
5 国際生活機能分類(ICF)の活用で、生活機能や疾病等の共通理解が進むと期待されている。


当ブログ筆者執筆の新刊
精神保健福祉援助演習(専門)第2版
精神保健福祉士シリーズ 10
福祉臨床シリーズ編集委員会 編

ISBN978-4-335-61117-9
発行日 2016/02/22 弘文堂

第8章 地域における精神保健問題 依存症と生活困窮(pp.171-178)
<概要>
 簡易宿泊所街「寿町」の精神科診療所におけるアルコール依存症と薬物依存症患者の支援の実践から、回復を図るグループワークや相談援助の課題等を考察した。
 生活保護を受給し簡易宿泊所に居住するアルコール・薬物依存症患者の回復の鍵を握るものとして、レジリアンスを挙げた。具体的には失敗を繰り返しても援助者と繋がり続け、危機を回避するための協働や、訪問やグループワーク等による社会的孤立を防ぎ、全人的な支援の持続が有効であると論じた。

平成28年度 社会福祉士・精神保健福祉士全国統一模擬試験


<お知らせ>
 当ブログ筆者(社会福祉士養成学科 学科長 社会福祉士、精神保健福祉士)が、社会福祉士=「医療ソーシャルワーカー MSW」の仕事の実際を説明します。
 私自身、社会福祉士として医療機関に勤務し、相談援助やグループワークを約20年間、実践してきました。
 また毎年、当校の社会福祉士養成学科卒業生の20%程が、医療機関に、医療ソーシャルワーカーとして就職していきます。
 下記の9月4日オープンキャンパスで、筆者が事例も交えて、はじめての方にも分りやすく解説します。

 医療ソーシャルワーカーの仕事 オープンキャンパスミニプログラム
 9/4(日)13:30から16:00 日本福祉教育専門学校 本校舎 高田馬場駅から1分

 社会福祉士養成学科(1年) 社会福祉士養成科(夜間1年)〔トワイライトコース・ナイトコース〕
 

*解答と解説:発達保障の理論 糸賀一雄 療育実践 適応・順応訓練、
小規模作業所 共同作業所 無認可作業所,地域作業所 アクティビティ、
全日本育成会 インクルージョン 自己決定 家族支援、自立生活運動とは
 下記をクリック

*解答と解説:国際障害分類、ICF(国際生活機能分類)、
肢体不自由 脳性麻痺 中途障害、脊髄損傷 自律神経機能障害、
現実見当識訓練(Reality Orientation:RO) 教室ROとは 下記をクリック




問題1× 高額療養費制度の仕組みは被用者保険(健康保険)も国民健康保険でもまったく同じである。

問題2 ○ 高度先進医療,特別の擦養室への入院,大病院での紹介なしの初診,予約・時間外診療,特殊な材料を使用した歯科治療等にかかった費用について,その一定割合は特定療養費として現物給付されることになっている。特定療養費として給付されない残りの部分については自己負担となる。

問題3 ○ 医療保険の給付は,診療報酬の仕組みに基づいて給付することが義務づけられた法定給付と,これに上乗せして保険者が自らの裁量によって行う付加給付がある。

問題4 ○ 日本の医療保険の給付(療養の給付)は,原則として現物給付,つまり患者に対して医療サービスを直接行うのが基本である。この現物給付と反対の給付方武としては,現金給付(償還払い)がある。

問題5 ○ 診療報酬の額を定めた診療報酬点数表は,厚生労働大臣が中央社会保険医療協議会に諮問して,その意見をもとに定めることになっている。

問題6 ○

問題7 ○

問題8 ○

問題9 × 正しくは「原則として現物給付」

問題10 × 正しくは「現物給付とは」


問題1 答3・5

<解説>
*発達保障の理論  
 重度の知的障害者や重症心身障害児への療育実践のなかから,1960年代より糸賀一雄を中心に提唱されてきた理論で,いかなる重症児であっても普通児と同じ発達のみちを通ることを踏まえ,重症児をも発達の可能性と権利をもつ主体として捉えようとする考え方。従来の適応・順応訓練では,あらかじめ決められた一定の基準に到達することがめざされていたのに対し,この理論では,各人の個別性を尊重し,一人一人に応じた発達のあり方を読みとり引き出すための工夫が重視された。また,本人の発達要求に基づく教育を実際的に保障するために,すべての障害ある児童をも学校教育の対象とすべきだという主張ともつながり,1979年からの養護学校義務化による全員就学体制の確立にも貢献するとともに,70年代から全国的に広まっていった小規模作業所での実践にも取り入れられて,障害のある成人にとっての労働の意味を問い直すことにもつながっていった。

*小規模作業所
 共同作業所や無認可作業所,地域作業所などとも呼称されているもので,成人期障害者のための就労および活動(アクティビティ)を目的とした法定外の社会福祉施設である。1981年の厚生省(当時)調査によってその数が638カ所と確認されているが,その後も増加が続き,2002年度,都道府県・政令指定都市・中核市等による補助金交付対象数は5942カ所となっている。1カ所あたりの平均利用者数は約15人。

*全日本育成会
 1952年に知的障害児をもつ母親たちによって,全日本精神薄弱者育成会(別名・手をつなぐ育成会)として結成された。「精神薄弱者を立派な社会人に育成する」ことをめざし,「物言えぬわが子の代弁者」として精神薄弱者福祉法(現・知的障害者福祉法)の制定(1960年)や,「親亡き後」の入所施設建設などに大きな役割を果たした。しかし1981年の国際障害者年などを機に,「親は代弁者たりえない」という本人たちの声を受け止め,1995年には会の名称も「全日本育成会」へと変更した。これには上部組織である国際知的障害者育成会連盟(Inclusion International ; II)が,1994年に名称変更したことにも影響されている。すなわち,国際組織がインクルージョンの理念を前面にだし,①インクルージョン,②完全な市民権(full citizenship),③自己決定,④家族支援,という四つの政策方針を掲げたのを受け,全日本育成会としてもまさにソーシャル・インクルージョンの実現をめざし,活動方針を大きく転換させたのである。

*自立生活運動 independent living movement
 1970年代に世界各地で同時発生的に起こった,障害当事者による障害者の権利獲得運動である。一般的にアメリカのカリフォルニア大学バークレー校が運動発祥の地として知られているが,例えば日本やイギリス等においてもほぼ同時期に同様の動きが開始されており,この運動はアメリカ発というよりも,アメリカで最も早く理論的に整理され,また,自立生活センターという組織的活動が開始されたと理解すべきである。日本における自立生活運動は,1970年代の青い芝の会の運動や施設から地域での生活をめざした公的介護保障運動等を基盤として,80年代にアメリカの影響を受け,86年のヒューマンケア協会設立を皮切りに,各地で自立生活センターが活動を始め,91年に全国自立生活センター協議会が発足した。
 自立生活運動でいう自立とは,「人の助けを借りて15分かかって衣服を着,仕事に出かけられる人間は,自分で服を着るのに2時間かかるために家に居るほかない人間より自立しているといえる」というものである。このような自立観は,経済的自立や身辺的自立が最優先されるリハビリテーション・モデルを転換させた。すなわち,障害者の社会参加のために各種の社会的支援が必要であり,その支援は障害を体験的に最もよく理解している障害者自身が担うべきであるという自立生活モデルが提唱されたのである。

問題2 答 3
 3 誤り。ICFで介護者は、背景のうちの「環境因子」に含まれる。

<ポイント>
■国際障害分類

 WHO(世界保健機関)が提唱する国際的な障害分類。1980年に試案としてICIDHが提起され,92年に正式な国際分類となった。2001年,改訂版が承認され,ICF(国際生活機能分類)と改称された。
 ICIDHでは「機能障害→能力障害→社会的不利」という線形モデルが採用されていたが,ICFでは心身機能・身体構造,活動,参加,環境因子,個人因子の各要因の相互作用モデルが採用され,障害というマイナスの側面のみを記述するのではなく,健康一般を記述するものとなった。

*用語の定義
・健康との関連において
 心身機能(body functions)とは,身体系の生理的機能(心理的機能を含む)である。
 身体構造(body structures)とは,器官・肢体とその構成部分などの,身体の解剖学的部分である。
 機能障害(構造障害を含む)(impairments)とは,著しい変異や喪失などといった,心身機能または身体構造上の問題である。
 活動(activity)とは,課題や行為の個人による遂行のことである。
 参加(participation)とは,生活・人生場面(life situation)への関わりのことである。
 活動制限(activity limitations)とは,個人が活動を行うときに生じる難しさのことである。
 参加制約(participation restrictions)とは,個人が何らかの生活・人生場面に関わるときに経験する難しさのことである。
 環境因子(environmental factors)とは,人々が生活し,人生を送っている物的な環境や社会的環境,人々の社会的な態度による環境を構成する因子のことである。

・人の生活機能と障害は,健康状態(病気〈疾病〉,変調,傷害,ケガなど)と背景因子とのダイナミックな相互作用と考えられる。背景因子には個人因子と環境因子の2つがある。ICFは本分類の基本的構成要素である環境因子の包括的なリストを含んでいる。環境因子は生活機能と障害のあらゆる構成要素と相互に作用しあう。環境因子の基本的な構成概念とは,物的な環境や社会的環境,人々の社会的な態度による環境による,促進的あるいは阻害的な影響力である。

*脊髄損傷
 交通事故,高所からの転落,スポーツ事故などの外傷による脊椎の骨折や疾病により,脊髄に損傷を受けたために起こる障害である。頸髄での損傷では四肢麻痺,胸,腰,仙髄の損傷では下肢の対麻痺が生ずる。完全損傷の場合には,運動機能のみならず,損傷部位より下位の表在・深部感覚のすべてを脱失する。両下肢麻痺のために,移動に車いすを使用する場合が多い。また随伴する呼吸機能障害,感覚障害による褥瘡 (じょくそう) ,排尿・排便障害,自律神経機能障害などの症状に対する管理が,社会復帰において重要な鍵を握る。

*肢体不自由
 四肢または体幹のいずれかに障害のあるものの総称である。身体障害者福祉法では,上肢,下肢,脳原性障害(上肢機能,移動機能)に区分している。原因としては,①骨・関節系,②筋系,③末梢神経系,④中枢神経系などの疾患や外傷によることが多い。1996年の厚生省(当時)の身体障害者実態調査によると,肢体不自由が身体障害の56.3%と過半数を占めている。また,肢体不自由児は1991年の7万6200人から4万1400人へと減少したが,肢体不自由者は中途障害の増加,高齢化の増加によって増えている。肢体不自由児の原因疾患は脳性麻痺が多く,肢体不自由者の場合は,脳血管障害,ついで骨・関節疾患が多い。

*現実見当識訓練(Reality Orientation:RO)
 見当識障害を改善し,現実認識を高めることがねらいである。具体的には、名前や年齢,物の名前などの基本情報の反復学習を行う。
 そして、混乱や失敗に対しては,肯定的・受容的に対応する。また、教室ROでは,ゲームを取り入れるなど参加者の相互交流を図る。

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by yrx04167 | 2016-08-16 09:54 | Comments(0)