公的扶助論 講義の概要4 生活保護と扶養義務、自動車、対象、無差別平等、第2のセーフティネットとは ブログ筆者の担当講義

キーワード 生活保護法の基本原理、補足性の原理、扶養の範囲、兄弟姉妹、資産の範囲と処分、就労能力の活用と判断、旧生活保護法の欠格条項、勤労、生計の維持

公的扶助論 低所得者に対する支援と生活保護制度 第1日目 その4 ブログ筆者の担当講義
5.生活保護法の「四つの基本原理」
 生活保護法の1条から4条は、生活保護の「基本原理」といわれ,生活保護法の理念を整理している。
1.国の責任において最低生活保障と自立助長の二つの目的を達すること(1条),
2.無差別平等(2条),
3.最低生活(3条),
4.保護の補足性(4条)であり,生活保護法の基本的な性格づけがなされている。
・目的及び基本となる考え方は、生活保護法の第1条から第4条までに規定されている。
 これらは、「基本原理」と呼ばれるものであり、第5条において、「この法律の解釈及び運用は、すべてこの原理に基いてされなければならない」と規定されている。この法の根幹となるものである。

①国家責任による最低生活保障の原理(国家責任の原理)
 生活に困窮する国民の最低生活保障を国がその責任において行うことを規定した原理である。また、単に最低限度の生活を保障するだけでなく、保護を受ける者がその能力に応じ、自立して社会生活を送ることができるように自立助長を図ることも併せて規定している。
 生活保護法(この法律の目的)
第一条 この法律は、日本国憲法第二十五条に規定する理念に基き、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする。

◎保護の実施機関
 生活保護は「国家責任の原理」ではあるが、保護の実施は地方公共団体の長が行なっている。これらを「保護の実施機関」と呼ぶ。

②無差別平等の原理
 生活に困窮している国民であれば、誰でも生活保護を申請することができる。
 保護の請求権は、国民の全てに無差別平等にある。

 戦前の救護法、及び旧生活保護法においては、「勤労を怠るもの、素行不良な者」などについて救護や保護は行わないこととする欠格条項が設けられていた。
 旧生活保護法 「この法律による保護は、これをなさない。
 一 能力があるにもかかはらず、勤勞の意思のない者、勤勞を怠る者その他生計の維持に努めない者
 二 素行不良な者」
 
 しかし、現在の生活保護法は第2条において、「すべて国民は、この法律の定める要件を満たす限り、この法律による保護を、無差別平等に受けることができる」と規定し、生活困窮に陥った原因による差別を否定している。生活に困窮しているかどうかという経済的困窮の状態等に着目して保護が行われる。

*生活保護法の「すべての国民」について 。
 生活保護法1条にいう「国民」とは。

③健康で文化的な最低生活保障の原理(最低生活の原理)
 生活保護法は、日本国憲法第25条の生存権保障を具現するための制度である。その保障されるは、当然、憲法上の権利として保障されている生活を可能にする生活水準でなくてはならない。
(最低生活)
第三条 この法律により保障される最低限度の生活は、健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならない。

*最低生活とは、国民一般の生活水準、文化水準の変化に伴って変動する相対的なものとして考える必要がある。

④保護の補足性の原理
 第4条は、「①保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる。②民法に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする」と規定している。

*「資産の活用」とは 自動車、家屋、田畑の保有
 生活保護制度においては、資産の概念は幅が広く、土地や家屋だけではなく、生活用品なども含まれると理解されている。
 基本的には、資産を売却などして生活の維持に努めるとされている。
 しかし、最低生活維持のために活用されている、処分するよりも保有している方が生活維持及び自立助長に実効があると認められるものは、処分しなくてよい。
 このような基準によって判断される。具体的には地域住民との均衡から見て取り扱われる。
 田畑については、当該地域の農家の平均耕作面積までの保有を認める。
 生活用品については、当該地域の普及率が70%を超えるものについては保有を認める。
 自動車の保有について。

 つまり、保護を受けるためには、資産を最低生活の維持のために活用しなければならない。しかし、保有している方が生活維持等に実劾が上がるものは処分しなくてよい場合もある。

*「能力の活用」とは 就労の能力の判断
 稼働能力の活用について、単に本人が(働く)能力を持っているか否かのみで判断されるのではなく、実際に稼働能力を活用する就労の場を得ることができるか否か、その稼働能力を活用する意思があるか否かをみて総合的に判断される。

(就労の)能力も活用することが必要とされる。しかし、就労能力があり求職活動を行なっていても就労先が無い場合には、保護を受けることが出来る。

*扶養義務
 直系血族及び兄弟姉妹
*生活扶助義務と生活保持義務
 生活保護法4条2項では「民法に定める扶養義務者」。
民法 (扶養義務者)
第八百七十七条 直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。
2 家庭裁判所は、特別の事情があるときは、前項に規定する場合のほか、三親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる。
3 前項の規定による審判があった後事情に変更を生じたときは、家庭裁判所は、その審判を取り消すことができる。

*この原理は,生活保護の開始決定の前提として,自己の資産・能力等の活用(1項),民法上の扶養義務者の扶養や 他の社会保障制度の給付など(2項)が先行してなされる必要があり,生活保護法による援助はその不足分を補う限りにおいてなされるという趣旨である。これらに関する調査は資力調査(ミーンズ・テスト)を行なう。
 なお4条3項に但し書きとして急迫保護の規定がある。

<解説>
第一のセーフティネット

第二のセーフティネット 生活困窮者自立支援法  求職者支援制度

第三のセーフティネット

<以上、国立武蔵野学院 附属児童自立支援専門員養成所にて、ブログ筆者  が講義(第1日目) 続く>
 HPより引用「児童自立支援専門員養成所とは。非行などの問題を抱える子どもや、虐待などの理由により支援が必要な子どもたちと施設での生活を共にしながら、資格取得に向けて学ぶところです。
 国立武蔵野学院は、大正8年 (1919年) 3月に開設された児童自立支援施設です」
 児童自立支援専門員とは、児童自立支援施設において,生活指導,家庭環境調整,関係機関との連携等,ソーシャルワークによって、児童の自立を支援する専門職である。国立武蔵野学院に附属児童自立支援専門員養成所が設置されている。

当ブログ筆者の論文 リンク

関屋光泰(2010)「簡易宿泊所街・横浜寿町地域における民間支援活動-歴史的経緯の概要」『研究紀要』第18 巻第1 号 学校法人敬心学園日本福祉教育専門学校福祉文化研究所,39-48頁

(概要)

・横浜市中区の「寿町」簡易宿泊所地域の成立過程。現状。

・寿町支援の源流、無戸籍児童、義務教育未就学児の社会問題化。児童福祉の開始。

 子ども会活動、寿町セツルメント。

 保健活動、健診
 夜間銀行の設置
 隣保施設(セツルメントハウス)寿生活館(横浜市)
 ことぶき共同保育
 炊き出し、食の支援
 野宿者のパトロール、アウトリーチ活動
 医療支援
 アルコール依存症回復支援施設
 障害者福祉、就労支援
 外国人労働者支援
 ホームレス自立支援事業
 NPO等、多様な活動へ

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精神保健福祉援助演習(専門)第2版
精神保健福祉士シリーズ 10
福祉臨床シリーズ編集委員会 編

ISBN978-4-335-61117-9
発行日 2016/02/22 弘文堂

第8章 地域における精神保健問題(依存症と生活困窮)

当ブログバックナンバー
 相談、面接、生活保護受給者訪問調査
 貧困、生活困窮の子どもと家族
 アルコール依存症と生活困窮、精神科医療との連携の必要性

キーワード 生活保護不正受給問題、適正化政策、ワークフェア、バウチャー、貧困家庭一時扶助、私的扶養、ベーシックインカムとは。

キーワード 最低生活費、セーフティネットとスプリングボード、生活保護制度の在り方に関する専門委員会、垂直的再分配、水平的再分配、地域的再分配、社会連帯、ナショナルミニマム。

自己覚知、自己理解と他者理解、自己覚知とスーパービジョン、自己理解の方法とは


<当ブログ筆者が執筆 新刊2冊(2018年5月10日発行) 精神保健福祉士、社会福祉士国家試験解説>
 低所得者に対する支援と生活保護制度(公的扶助論)解説を担当。
一般社団法人日本ソーシャルワーク教育学校連盟=編集
ISBN 978-4-8058-5661-1
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一般社団法人日本ソーシャルワーク教育学校連盟=編集
ISBN 978-4-8058-5662-8
予価4,104円(税込)
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by yrx04167 | 2018-04-29 13:00 | Comments(0)