児童福祉法の改正、家庭養育優先原則【社会的養護・児童福祉】第4回前篇 筆者の講義
「社会的養護・児童福祉」第4回 前篇 筆者の講義
概要:児童福祉法の改正により、子どもたちの権利保護が強化され、専門的な支援体制が整備されることが期待される。
改正後は子どもたちが権利の主体として位置づけられるようになった等。「家庭養育優先原則」。
一時保護開始時の判断に関する司法審査の導入や、子ども家庭福祉の実務者の専門の向上を目指す取り組み等の改正点。
*児童福祉法の制定
・児童福祉法は1947年に、戦後の困窮する子どもの愛護・救済、すべての児童の健全育成を目的として制定された児童福祉に関する基本的・総合的立法(昭和22年法律164号)
【その背景】
・日本では、第二次世界大戦による本土の空襲や、出征先で戦死によって生じた子供が多かった。戦災孤児の総数は12万余りにのぼったとされる。
・戦災孤児とは、戦争の結果、保護者を失った子どもを指す。
当時の戦災孤児は、食糧難や社会的冷遇に苦しみ、駅や路上で貰いや靴磨きなどで生活した。栄養失調や病気で死亡、犯罪に手を染める子どもも。
戦災孤児の保護は、厚生省や自治体が「浮浪児」として収容施設に送る「狩込」などの措置をとった 。
*児童福祉法の2016年改正 概要
・「家庭養育優先原則」とは 講義にて解説
・児童の権利に関する条約の精神に則っている=児童福祉法の理念が明確
・改正前の「すべて国民は」が「全て児童は」に置き換わり、子どもが権利の主体として位置づけられた。
・改正後の児童福祉法第2条では、児童の意見が尊重され、最善の利益が考慮される。
・改正の全体像とは 講義にて解説
*以降の児童福祉法の改正点について
第1点目 児童相談所長や都道府県知事が児童に関する決定を行う際に、子どもの意見を聴取することが法制化された。
これは、子どもの権利に関する条約である「意見表明権」に基づいたものであり、児童の意見を尊重することが求められる。
第2点目 一時保護開始時の判断に関する司法審査の導入。
これにより、一時保護が適正に行われ、児童の権利に関する条約第9条や、親権者による育成責任の法改正に基づく法的手続きが確立される。
最後の改正点 子ども家庭福祉の実務者の専門性の向上を目指す。国の基準を満たした認定資格を導入することで、ソーシャルワークの専門性を身につけた人材を早期に輩出し、児童福祉の現場での専門的なサポートを行うことができるようになることが狙い。
以上の改正点により、児童福祉における児童の権利保護が強化され、専門的な支援体制が整備されることになる。
【児童福祉法 概要】
児童の福祉を促進するための法律で、児童福祉施設や事業などの制度や基準を定めている。
児童福祉法は、1947年に制定され、その後何度も改正されている。最近では、2021年6月に児童虐待防止や子育て支援の強化を目的とした改正が成立した。
児童福祉法は、児童の権利の擁護や健全な発達を保障することを目的としており、国や地方公共団体、関係機関や団体に対して責務や努力義務を課している。
*家庭と同様の環境における養育の推進
家庭養育優先原則の根拠となる条文が設けられた。
優先順位=家庭養育が適当でない場合
②児童は家庭と同様の環境で養育される
③良好な家庭的環境
「家庭における養育環境と同様の養育環境」は、養子縁組、里親家庭、小規模住居型児童養育事業を指す。
③は小規模グループケアや地域小規模児童養護施設など、施設でも家庭に近い環境で養育される
児童福祉法
第三条の二 国及び地方公共団体は、児童が家庭において心身ともに健やかに養育されるよう、児童の保護者を支援しなければならない。
ただし、児童及びその保護者の心身の状況、これらの者の置かれている環境その他の状況を勘案し、児童を家庭において養育することが困難であり又は適当でない場合にあつては児童が家庭における養育環境と同様の養育環境において継続的に養育されるよう、
児童を家庭及び当該養育環境において養育することが適当でない場合にあつては児童ができる限り良好な家庭的環境において養育されるよう、必要な措置を講じなければならない。
*児童育成の責任
新設された第2条第2項により、
保護者が根本的な責任を負うことが確認され、
その上で国及び地方公共団体が児童の保護者を支援し、児童が家庭において心身ともに健やかに養育されるようにするため、家庭養育の尊重と支援が法律で示されるようになった。
*児童の代替的養護に関する指針
児童福祉法改正において家庭養育が優先される理由は明記されていないが、児童の権利に関する条約の前文には家族が自然な環境であることが述べられており、児童の代替的養護に関する指針でも家庭養育優先原則が支持されている。
2022年の児童福祉法のさらなる改正案は、子育てに困難を抱える世帯が増えている現状に対応して可決、公布された。改正内容には、子どもの意見聴取等のしくみの整備が含まれる。
by yrx04167
| 2023-05-13 09:33
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